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【Bu et Sports de combat】 武術空手と武道空手。西山空手の伝承者アビを訪ねる─02─<型と原理・原則>

abi & Iwasaki【写真】30分から40分という対談の約束は、75分という時間に達した。それだけ両者が盛んに意見を交換し、互いに高め合っているように感じられた対談だった(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、通じている部分が確実に存在している。そして、如何に武術の叡智をMMAに落とし込むのか。AACCでMMAファイターが習う剛毅會空手──武術空手とは何なのか。さらにいえば、空手なのは何のか──を剛毅會空手・岩﨑達也宗師に尋ねる、この企画。

岩﨑が6月初旬にカリフォルニア州ロサンゼルスを訪問し、武術の原理・原則と戦略と戦術の競技──このパズルを埋める作業として、2つの空手道場を現地で訪ねた。現在発売中のFight & Life誌において総論的なレポートが掲載される。MMAPLANETでは、アビ・ロカー空手、マチダ空手でそれぞれアビ・ロカー、シンゾー・マチダとの対話を紹介し、Fight & Lifeで述べられた総論に辿り着くまでのプロセスを紹介したい。

アビ・ロカー師範に武道空手を追及した師・西山英峻先生の空手、その原理・原則と型、組手の関係について尋ねると、そこには驚くほど多くの共通点が見られた。

その共通点はさらにシンクロしていく。

<岩﨑達也×アビ・ロカー対談Part.01はコチラから>


──西山先生も、その部分の理解を高める指導するのに苦労をなさったのですか。

ロカー 西山先生は亡くなる直前まで、戦いの中で使える型を創っている最中だったのです。その途中で亡くなりました。

岩﨑 そうだったのですね……。私も西山先生がお亡くなりになられてから、どのような空手を指導されていたのかを興味を持たせていただくようになり、月刊空手道の西山先生の特集号を東京の古本屋で見つけて、熟読させてもらいました。

ロカー あぁ、あの雑誌のことは覚えています(微笑)。そうですね、私も西山先生に空手を習い始めた頃、型が組手に活かせるということは理解できていなかったです。

岩﨑 極真では極真というスポーツの組手の練習が中心なのですが、私がいた道場は極真の型を大切にしているところで、また中国の意拳の修練方法である站樁(たんとう)、それを澤井健一さんという方が、アレンジした太気拳における立禅といった内側の力を養う稽古に力をいれていたんです。

私自身、何のためにやっているのかという想いはあったのですが、抵抗なく稽古はしていました。そこに何か未知なるモノが隠されているんだろうなという気持ちで。なので、組手だけやっていくと、それはキックボクシングになってしまうという風には思っていました。

──試合……トーナメント前も型や立禅の稽古を行っていたのですか。

岩﨑 ウチは一つの鍛錬として、続けていたんです──大会前も。フィジカル・トレーニングを2時間ほどやり、その合間にインターナル・トレーニングというべき体の内側を鍛える稽古をしていました。そして最後に組手をやるという形でした。ただ、それは極真でも城南支部だけだったはずです。

ある時、なぜか站樁の感覚と組手が繋がって来て──それが心地よいモノに感じたんです。そして1999年に極真を引退して、MMAでヴァンダレイ・シウバと戦った時は站樁とスパーリングしかしていませんでした。組手と站樁がシンクロナイズしていたんです。

ロカー 組手の稽古だけだと、フィジカルだけの世界になってしまいます。それだと、空手の能力を最大限に導きだすことはできないです。そして年齢とともに衰えていきます。肉体の衰えを補える要素が、型の稽古にあることを西山先生から学びました。

色々な道場から出稽古にきて、たくさんの空手家と組手を行ないました。型の稽古によって知った空手の原理・原則を用いることで、肉体的要素だけで対峙しないで済むと分かったんです。

岩﨑 西山先生というアビ先生を導いてくださる師匠から居られたことは、本当に素晴らしいですね。私は站樁も自己流だったので、シウバに敗れた後に中国に行って向こうで専門的に習いたいと思うようになっていました。

その後、日本で型が使える先生と出会うことができて、そこで『これだったんだ』と。これなら、ルールに関係なく戦えると思えるようになり、専念するようになったんです。

ロカー 筋肉を鍛えているのではなく、神経系統というのか、体のなかで合図を打ち、それに反応する。それが型の稽古というものですよね。

岩﨑 アビ先生はまさにそういう体つきをされていますよね(笑)。先ほどから見ていても、骨しか動いていない。

Abi sennsei──アビ先生は相手の攻撃を予測しているかのような避け方、そして攻撃に移ると相手が反応できないような間合いとタイミングで攻めることができるそうですね。

ロカー 西山先生の教えは、相手になれということでした。相手の呼吸、目を見て、それを相手として見るのではなくて、自分が相手になる。そうすることで相手が分かると。そして、いつも言っていていたのが空手は哲学じゃない、実践だと。

岩﨑 つまり行動することが武道で、観念ではないということですね。

ロカー 原理・原則が分かっている人でも、強いプレッシャーや緊張感に襲われた時に空手を使えなくなることがあります。なので組手をやり、自分が実際に動くという部分で問題点を洗い出す必要があります。そして、型に戻って正す。西山先生の教えは、その繰り返しでした。

岩﨑 極真でもMMAでも、競技だと勝つことが目的となってしまいます。本来、組手は型を知ったことをチェックする場なんですよね。組手は検証手段で、目的ではないのです。しかし、コンペティションが目的となると、型の原則・原理を学ぶことから乖離してしまう。でも、競技会に出ている若い選手は勝ちに徹すれば良いです。原理・原則を追及させるのではなく、原理・原則に基づいた動きができるように指導するのが、私の役割だと考えています。

だから、指導者が空手のプリンシプルを勉強していないと。MMAでも極真でも、柔術でも原理・原則は変わりません。私は柔術の技術は分かりませんが、柔術に通じるプリンシプルは学んでいます。これは一生モノだと考えています。ヴァンダレイ・シウバにリベンジをする、勝つという目的の型、空手だったのが、原理・原則を学んでいると人に活かすための空手に変わったんです。それが私の稽古となっています。

ロカー 素晴らしい考え方です。西山先生は自分が持っているナチュラルな肉体だけで戦うことを良しとしませんでした。そうやって目の前の相手を叩き潰すことができても、それは何のためにもならない。そこに何の意味があるのかと。西山先生に教わり、相手に勝つことが目的、ゴールでないと分かるようになりました。原理・原則を使い、互いに向上できる。それが空手なのです。

<この項、続く>

■岩﨑達也
1969年6月20日、東京都出身。極真空手90年、95年全日本重量級チャンピオン、世界大会三度出場。2002年国立競技場Dynamite!!でヴァンダレイ・シウバと対戦。現在、剛毅会空手道主宰、武術空手の指導、MMA選手の育成に励む。

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