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【JBJJF】マスター選手権 マスター1黒帯ルースタ級優勝、旅人・吉岡崇人<01>「ノリです」

Yoshioka【写真】夜の東京が苦手??? 吉岡の独特な世界観と柔術観が語られる (C)TUBASA ITO

2月25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。マスター1黒帯ルースター級は、現在、米国や中国を拠点としている吉岡崇人が凱旋優勝を飾った。
Text by Tsubasa Ito

試合翌日、故郷の徳島へ帰省する直前の吉岡を都内某所のスターバックスコーヒーでキャッチした。すると、吉岡は『スターバックスって日本ではほとんど来ないですね』と話し始め、独特な人生観を語ってくれた。


──スタバには来ない?

「日本では、ですね。海外だとインターネットを拾いに入ることはあるんですけど。前に行ったドバイのスターバックスはすごい印象に残っていますね。ヨーロッパ選手権の帰りでしたね。ポルトガルのリスボンから関空まで直行便がないので、ドバイを経由したんです。空港を出てビーチを目指したんですけど、降りるところを間違えたらしく普通に砂漠なんですよ。もともと砂漠に街をつくっただけですから」

――砂漠もそうですが、高層ビルが建ち並ぶイメージもありました。

「どうだろう……。僕がバスを降りて歩いたのは砂漠でしたね。気温が40度以上あったと思うんですけど、汗をかきすぎたら寒気がしてくるんですよ。とにかく水が飲みたいと思っていた時に民家の外に水道があって、飲めるか飲めんかさえも分からないんですけど、人間ってそういう状況だと飲めてしまうんですよ」

――空港で水は買わなかったのですか。

「そんなものはとっくになくなっていました(笑)。何とか水道の水を飲んでしのいで、ちょっと歩いたら砂漠の中にポツンとスターバックスがあったんです。Wi-Fiを拾って地図を見て、飲み物を頼んで助かりました」

――九死に一生を得たわけですね。その後は無事にビーチへたどり着いたのですか。

「行けましたね。スタバからはすぐ近くでした」

――現在は中国や米国を生活の拠点にしている吉岡選手ですが、今回帰国したのは主にどういった理由からですか。

「事務的なことがメインですね。ビザの関係で手続きが必要なので。今は北京に家があるので、3月の中旬くらいには中国に戻ります」

――米国では南カリフォルニア、コスタメサのAOJに所属しています。

「戻れるなら早く米国に戻りたいんですけど、おそらく今年の5月から8月の間になると思います。今、スポーツ選手が取るアスリートビザを取ろうとしているんですよ」

――取得が大変そうですね。

「だいぶ掛かりました。準備を始めてから、もうそろそろ2年経つんじゃないですかね」

――ちょうど日本に帰国するタイミングで、今回の全日本マスターがあったと。

「そうですね。北京の道場の生徒たちも出ることになっていたので、それなら僕も出ようかなと」

――会場で吉岡選手に声援を送っていたのは、中国の選手だったのですね。

「要は彼らを育てる代わりにお金をもらっているんです。実際は僕が勝手に自分の練習をしているだけですけど(笑)。でも、それであいつらは強くなっていますからね。結局、やっていることは徳島の時と一緒なんですけどね」

――自分が強くなることが、結果的にまわりのレベルアップにもつながる?

「都合の良い捉え方ですけど、そう思います。あまり僕が向き合い過ぎたらダメなんですよ。もちろん教えますけど、ボロカスに言って、けちょんけちょんにしてやめる人はそれで良いんです。何でもそうですけど、辛いけどやろうという人が来たらいいなと」

――選手志向の人が集まっているのですね。

「そうですね。じゃないとやる意味がないですから」

――アカデミーの名称は?

「『天玉閣(てんぎょくかく)』です。アルファベットではTYGと表記するんですけど、くしくも『タカヒト・ヨシオカ・ジム』みたいになっています(笑)」

――偶然にも(笑)。中国ではマンションの提供や運転手つきの送迎など、VIP待遇を受けているそうですが、ジムのオーナーとの接点はどこからですか。

「僕がワールドマスターで優勝した後に、北京へセミナーに行ったんです。その時に参加してくれた人の中に出資者というか、ジムを出したいという人がいて、ありがたいことに僕の柔術や人生観に共感して、指導者として声を掛けてくれたんですよね。中国人にとっては米国人やブラジル人よりも、同じアジアの日本人に馴染みがあるんです。

それに、『日本製』って世界的にもすごく良いものというイメージがあるじゃないですか。それを使っているのが、中国の富裕層にはステータスらしいんですよ。人間で言えば、黒帯で世界王者の日本人を呼んでいるというのが。それで実際に生徒が集まってくれているので、嬉しいですよね」

――日本を出た理由としては、新しい刺激が欲しかったからですか。

「多分そうだと思います。日本に飽きたんです」

――あまり東京に来る機会もない?

「来ないですね。東京、苦手なんです。他人感があるというか……。いやもう全然違うじゃないですか。みんなオシャレだし、アウェイですよ。だから今回、会場で金古一朗さんが話しかけてくださった時は、泣きそうでした(笑)。僕のことを知ってくれているんやって」

――カリフォルニアは東京と違いますか。

「カリフォルニアって大都会じゃないんですよ。都会の場所もありますけど、車社会だし、僕みたいな人間には住みやすいですね。北京なんかは凄い都会ですけどね。徳島で育った僕にはLAは良いところですよ。だからって徳島に近いと言ったら『おいおい』って言われそうですけど、両方とも海がありますし」

――海外でコミュニケーションを取れる吉岡選手なのに、東京が苦手というのも意外ですね。

「海外だと外国語だからじゃないですか。僕はまだそこまでネイティブじゃなく、頭の中で一度、日本語を英語や中国語に訳してから話すので、言葉を選ぶことをしていると思うんですよ。だから外国では良い人でいられるんじゃないですか(笑)」

――ネイティブではないからこそ、良い塩梅になると。

「はっきり言いますけどね。僕ははっきり言わないのが嫌なんです。イエスかノーか。白か黒か。思ったことは思った時に、直接本人に言う。言ったら終わり。2度は言わない」

――そこは海外でも国内でも変わらないのですね。ところでマスター選手権はいつ以来のトーナメント出場だったのですか。

「去年のムンジアルの後に、大阪で2大会に出ました。そう考えると久しぶりですね」

――ムンジアルから逆算して、もしくはポイントを獲得するためなど、出場する試合を選ぶ理由はさまざまだと思いますが、吉岡選手の中での基準は?

「ノリです」

<この項、続く>

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