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【JBJJF】全日本マスター、二冠。関根シュレック秀樹 「互いが互いを思いやる、マスターの良さ」

Hideki Sekine【写真】5月には打撃系の試合出場も視野に入れているという。そして6月にはムンジアルがカリフォルニアで開催される (C)TUBASA ITO

25&26日の2日間にわたり、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたJBJJF主催第11回全日本マスター柔術選手権。同大会では負傷をおして出場した関根“シュレック”秀樹が、マスター3黒帯ウルトラヘビー級とオープンを制した。
Text by Takao Matsui

職業格闘家・関根に大会を振り返ってもらいつつ、今後について尋ねた。


――マスター3黒帯ウルトラヘビー級とオープンの二冠達成、おめでとうございます。まず驚いたのは、成績もそうですが、髪とヒゲを伸ばした風貌でした(笑)。

「ああ、髪の毛とヒゲね。今まで警察の仕事をやってきて20年間、ずっと剃ってきました。でも警察の仕事を辞めたので、自然と伸びただけですよ」

――警察官は、髪の毛の長さが決まっていると伺っています。

「そうですね。男性は坊主か、坊主に近いスポーツ刈り。女性もパーマや茶髪は禁止されています。どうしても伸ばしたい人は、本部長の許可が必要になります。あとは一般人に見せるための潜入捜査とか、特別な場合は例外として認められることもあります」

――ドラマのイメージとは、全然、違う世界なんですね。髪とヒゲを伸ばした周りの反応はいかがでしょうか。

「『似合うね』とかは言われましたけど……、大会の翌日に退職者の送別会がありましたので、髪もヒゲも剃ってしまいました」

――そうだったのですね。勝手ながら昨年12月2日、ONEのブランドン・ベラ戦で1RにTKO負けをしったことで、何か心境の変化かあったのかと邪推してしまいました。

「違いますよ(笑)。それにあの試合は、日本人のヘビー級でタイトルマッチを組んでいただいたので、感謝の気持ちしかありません」

――敗戦のショックが大きいのではないかと心配していました。

「試合に負けたので悔しい気持ちはありましたが、正直に言うと奇跡が起こらない限り、勝つことは難しいと思っていました。UFCに出ていた選手でONE世界ヘビー級王者。準備期間を含めても、かなり厳しい試合だと認識していましたので」

――警察を辞めて、すぐの試合でしたね。

「少しでも舐めてくれれば自分にも勝機があると期待したんですけど、向かい合った時に緊張感が伝わってきて、覚悟を決めました。ハイキック、ヒザ蹴りをもらって鼻骨と眼窩底を骨折して勝負は決まりました」

――はい。

「それでも、チャンスをもらえたことに感謝しているんです。プロになれば、こういうこともありますから」

Ultra Heavy Final――なるほど。ではマスター選手権を振り返っていただきたいのですが、まずウルトラヘビー級はアルミル・ロジェリオ・ドス・サントス選手との決勝でした。いきなり引き込んだのは作戦だったのですか。

「大会の週の月曜日、MMAの練習で右足首を捻挫してしまったんです。歩けるかどうかの状態だったんで、棄権も考えました。でも、サントス選手が自分の階級にエントリーしていたんで、彼が岐阜から出てきて旅費とエントリー料が無駄になったら申し訳ないと思い、強行出場を決めました」

――ええっ!? では対戦相手のことを考えて出場したのですか。

「彼はオープンにもエントリーしていなかったので、自分が出ないと試合がなくなってしまいます。わざわざ自分とやってくれるわけですからね。試合後、すぐに表彰式に呼ばれたので話したら、仕事があったようです。そんな忙しい中で来てくれて、試合が成立してよかったと思いました」

――漢・関根の本領発揮ですね。

「彼のおかげで楽しい思いができたんで、自分の方こそ感謝しています」

――サントス選手にはカラーチョークで勝ちましたが、オープンでは初戦の原晃選手にポイントを奪われました。ケガの影響は試合中にありましたか。

「オープンは欠場しようと思っていたんです」

――そこでまた、強行出場したのは?

「いえウルトラヘビー級は自己流でテーピングをしたので、痛みが緩和できなかったんです。でも会場でプロの方にお願いして巻き直してもらったら、痛みが緩和できました。それで、出られるなと思ったんです」

――改めて原戦の印象を教えてください。

「一度、スパーリングをしたことがありました。関西のアイドル的な存在で、練習では送り迎えをしてくれる素晴らしい方なんです。彼はラッソーガードが得意で、ハラッソーガートと呼ばれるほどの名人なんですよね。それで一度、食らってみたいと思っていました。そうしたら、2回もスイープされちゃいました(苦笑)」

――最後はキムラからの突っ込み絞めで一本勝ちでした。

「まあ、あの展開は自分の得意なパターンなので」

――二回戦は、ヒザ十字で一本勝ちでした。

「ハーフガードで足が抜けない状態だったんです。ちょうどケガをしている足だったので、無理やり引き抜くと自分が痛い。引き抜くと見せかけてのヒザ十字でした」

――準決勝の高本裕和選手との試合は簡単ではなかったです。

「その前の週の関東オープンでも彼とは戦っていたんですけど、万全の状態でもテイクダウンが難しいことは分かっていました。引き込んだ時に、飛び越えてパスされることを警戒していたのでじっくり攻めました。それは狙っていないことが分かったので引き込んだらサイドを取られそうになって、強引に力技でパスしました」

――高本選手は大外刈りを狙っていましたが、逆に返しましたね。

「負傷していた足側に仕掛けられていたら、ポイントを取られていたと思います」

Open final――決勝戦は、伊藤洋邦選手。関根選手は、彼が決勝まで勝ち上がるまでに声援を送っていました。

「はい。伊藤選手とは、同じ浜松出身なんです。彼は自分の2つ下なんですけど、中学の時に柔道の出稽古で一緒になったことがありました。柔道のエリートで、寝技でボコボコにされたんです」

――関根選手が、寝技でボコボコに!?

「強かったですね。引き込まれて抑え込みに入られて。柔術では彼の方が帯が上がっていったので、これまで対戦することはなかったんですけど、今年の年始に伊藤選手の下で稽古をさせてもらったこともありました。『浜松同士で決勝を戦いましょう』と試合前に約束していたんです」

――それが実現したわけですね。最後のフィニッシュは?

「肩固めのような形ですね。相手の腕に体重を乗せて頸動脈を絞める形です。でも、戦えて楽しかったです」

――見事に二階級を制したわけですが、関根選手はマスター選手権にはどのような印象を持っていますか。

「昨年末のマスターオープンもそうでしたが、アダルトの殺伐とした雰囲気とは違いますね。『10年前に戦ったことがあるけど覚えている?』という会話が、そこらへんから聞こえてくるんです。なんでしょうね、この後味の良さは。互いが互いを思いやるというか。勝っても負けても笑顔で」

――そこには同じ空気感を共有できる喜びや邂逅といった側面があるのでしょうね。

「大会が終わった後も、アカデミーの垣根を越えて仲間や戦友と打ち上げをして盛り上がりました。これもマスターの良さですね」

――1000名規模の大きな大会でしたから、試合をする全国組織の同窓会のような雰囲気があったように思えました。

「ボンサイからも出て見たいという声がありましたので、次回が楽しみです」

――では最後に今後の予定を教えてください。

「柔術は、近々の予定では3月5日のADCCアジア&オセアニアチャンピオンシップ、3月19日のグランドインパクト・サウスJAPAN、4月2日の柔術新聞杯に出場します。ジャパニーズ・ナショナルとワールドプロは出場を検討中です。あとは5月に打撃系の大会にも出場するつもりで調整しています」

――打撃の大会ですか。

「具体的には発表できませんが、挑戦したいと思っています」

――しかし、お忙しいですね。

「これが専業ですからね。ヒゲを剃る時間もありません(笑)」

■第11回全日本マスター柔術選手権 主なリザルト

【マスター3黒帯ウルトラヘビー級】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 アルミル・ロジェリオ・ドス・サントス(OGAWA JIU-JITSU)

【マスター3黒帯オープンクラス】
優勝 関根“シュレック”秀樹(ブルテリアボンサイ)
準優勝 伊藤洋邦(JAWS JIU-JITSU ACADEMY)
3位 高本裕和(ポゴナ・クラブジム)
3位 岩見充浩(Shuhari 柔術)

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