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【DEEP JEWELS51】49キロ契約で彩綺と再起戦、パク・シウ「MMAを始めた頃の気持ちを取り戻したい」

【写真】リモート画面が繋がった瞬間は疲れている様子を見せたパク・シウだが、インタビューが進むといつもの笑顔に(C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(日)に東京都港区のニューピアホールで行われるDEEP JEWELS51で、パク・シウ彩綺と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

パク・シウは昨年5月、万智を下してDEEPジュエルスのストロー級暫定王座を獲得。その後、正規王者に昇格して臨んだ今年9月の万智とのリマッチで判定負けを喫し、ベルトも手放した。そんな敗戦から2カ月後に臨む彩綺戦——インタビュー中、パク・シウは何度も「MMAを始めた頃の気持ちを取り戻す」と語った。その真意とは。


経験や年齢を重ねていくとグチャグチャな試合ではなく、綺麗な試合をしたいという考えになっていました

――試合を10日後に控えているパク・シウ選手です(※取材は11月13日に行われた)。すでに日本入りして最終調整中ですか。

「はい。日本に来たのは2週間前です。今までも日本で試合の準備をしていましたし、今回もずっとセコンドや練習相手もいる日本で調整したほうが良いと思って」

――今が一番疲労の溜まっている時期でしょうか。

「今回は久しぶりに49キロで試合をします。以前、49キロで試合をする時は普段の体重が普段の体重が54~55キロぐらいでした。でも52キロで試合をするために、普段の体重を上げようと頑張っていたんですよ。それと去年は怪我もあったから、体重が58キロぐらいになって。今回はそこから49キロに落とすので、少し大変です」

――52キロ、つまりストロー級の体をつくった状態から今回はアトム級に落とすのですね。

「はい。もともと私はフレーム的に52キロよりも49キロのほうが合っているから、いったん今回は49キロで試合をします」

――今回の試合が49キロ契約なのは、パク・シウ選手の希望だったのですか。

「そういうわけではないです。9月の試合が終わったあと、プロモーターさんには『52キロでも49キロでも大丈夫です』と伝えていて。それで49キロの試合のオファーが来ました」

――なるほど。その9月の試合=万智戦ですが、スプリット判定で敗れました。まず率直な感想から教えてください。

「……自分としては休養期間もあったし、いつもと同じ気持ちで戦っているつもりでいました。でも『なぜこんな試合内容になってしまったのか』と自分でも分からないんです」

――あれだけ万智選手のテイクダウンをディフェンスし、倒されてもすぐに立ち上がっていた。にも関わらずスタンドの展開で、いつもの試合より積極的ではなかったのか。見合っている場面が多かったし、手数も少なかったです。

「う~ん……。その部分が自分でも本当に分からないんです。コンディションも良かったし、準備もバッチリでした。でも良い試合になりませんでした。正直、試合が終わったあとは悔しいというより、自分の中に何もないような気持ちになっていました。試合をして、そんな気持ちになったのは初めてです。なぜそんな試合になってしまったのか、自分でも分からない部分が大きくて」

――その理由は今も分からないままですか。

「深く考えないようにはしていたけど、それでも理由は何となく分かってきました。

MMAを始めた頃や若い時期は、気持ちで試合をしていたんです。でも経験や年齢を重ねていくと『上手く試合をしたい』という考えになっていて。グチャグチャな試合ではなく、綺麗な試合をしたい――そういう考えになっていました」

――パク・シウ選手をはじめ、韓国のファイターは気持ちが強く、その気持ちを技術で表現することが強みだと思います。そんななかMMAを始めた頃の気持ちを失いつつあった自分に対して、ショックを受けたのではないですか。

「ショックはありました。試合が終わって、その理由が分かってから……」

――その理由に気づいた時、これから自分が同じようにファイターを続けていくことができるのだろうかと悩む選手もいます。

「……自分の場合は、MMAを始めた頃の気持ちを取り戻したいと思いました。上手く試合をするより、自分が持っている武器を出したい。

これまで自分はMMAを戦ってきて、満足したことは一度もありません。私は天才ではないけれど、練習量や持っている武器は他の選手より多いと思っています。もちろん試合で、それを100パーセント出すことは難しい。でも70パーセントぐらい出すことができれば、満足できるかもしれない。

自分が試合をする理由は――強くなりたいとか、色々あります。でも一番は、自分が満足できる試合をしたい。そんな試合は今までなかったから、満足できるまで試合を続けたいという気持ちが一番です」

どんなシーンでも自分の武器をしっかり出せる強さを見せたい。昔のパク・シウに戻って試合をします

――万智戦から今回の試合まで、2カ月という素パンは短いほうだと思います。そのなかで満足いく試合をするために、何か新しい取り組みはしてきましたか。

「新しいこと……たとえばMMAの選手はMMAの練習を大切にするじゃないですか。私は昔から走るのは速いし、スタミナもありました。でもMMAの練習ではメチャクチャ弱くて、『なぜこんなに早く疲れるんだろう? MMAで強くなるために、走ることは意味がないのかな』と考えたりしていたんです。

でも今回はMMAの練習よりも一つひとつのこと、走ったり筋トレをする時に1日の目標を立てる。その目標を一つずつクリアしていけば強くなるんじゃないかと思って、取り組んできました」

――昔の自分を取り戻すため、まさに初心に戻ったのですね。

「たぶん皆、そういう時期は来ますよね。それがいつ来るか分かっていれば楽なんですけど(笑)。あと新しいことといえば、最近は本を読みようになりました」

本のタイトルは英語で『YOU’VE NEVER STOPPED』。パク・シウは止まることなく戦い続ける(C)SHOJIRO KAMEIKE

――本を?

「もともと本を読むのは好きではなかったんです。でも最近、この本を読んでいます。この本を読むと、すごく納得できる部分があります。ファイターとしてはMMAを始めた頃に戻って、上手く試合できなくても良いから、自分を信じて戦いたいです」

――その気持ちは今の時点で取り戻すことはできていますか。

「今の気持ちは、メッチャ強いですね」

――今回対戦する彩綺選手も、非常に気持ちが強いファイターです。

「そうですよね。試合を視ると、そんな感じでした。経験値は自分のほうが高いけど、良い選手です。49キロで戦っている選手ですけど、フレームは自分より大きいかもしれないし、気持ちも強い。自分としては相性が良い選手じゃないでしょうか。

試合はやらないと分からないけど、良い試合になると思っています。ただ、私は打撃の選手だと思われていますけど、最近で一番成長したのはグラップリングです。自分でも『私は本当にストライカーなのかな?』と思うぐらいで(笑)」

――グラップリングの成長はあるとしても、ガードしている相手を蹴りで負傷させるほどのストライカーではあります。

「でも自分の場合は蹴りそのものが強いのではなく、タイミングや角度でディフェンスが弱くなるというか」

――確かに。

「パンチはメチャクチャ巧いというより、拳が固いんですよ。ボクシングの技術も上がりましたし」

――拳が固い、そして蹴りのタイミングが巧いパク・シウ選手だからこそ、彩綺選手との試合は打撃戦を望む声も多いかと思います。

「それなら私も打撃をやりますよ。そのなかでタイミングが合えばテイクダウンもするし、寝技で一本を取ります。私は相手がグラップラーだから打撃で戦う、打撃が強い選手との試合だからグラップリングで戦うというより、どんなシーンでも自分の武器をしっかり出せる強さを見せたいです。それがMMAだと思うので」

――今後は49キロと52キロ、どちらで戦いたいですか。

「戦える選手がいる階級で試合をしたいですね。今回の試合はまた自分の階級で試合をします。前回の試合はあまり良くなかったけど、今回は昔のパク・シウに戻って試合をします。皆さん、見守ってください!」

■DEEP JEWELS51視聴方法(予定)
11月23日(日)
午後5時00分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ

■DEEP JEWELS51 対戦カード

<49キロ契約/5分3R>
浜崎朱加(日本)
イ・イェジ(韓国)

<49キロ契約/5分3R>
パク・シウ(韓国)
彩綺(日本)

<ストロー級/5分3R>
重田ホノカ(日本)
ののか(日本)

<49キロ契約/5分2R>
竹林エル(日本)
サラ(日本)

<ストロー級/5分2R>
月井隼南(日本)
成本優良(日本)

<ストロー級/2分3R>
堀井かりん(日本)
岡美紀(日本)

<ミクロ級/5分2R>
大井すず(日本)
小雪(日本)

<アマチュア ストロー級/3分2R>
山吹マリン(日本)
松村美直(日本)

<アマチュア ストロー級/3分2R>
あきぴ(日本)
谷山心優(日本)

<アマチュア49キロ契約/3分2R>
横江明日香(日本)
五十嵐莉子(日本)

<アマチュア49キロ契約/3分2R>
せりな(日本)
和智美音(日本)

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