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【UFN90】打撃の中間距離から始まるドスアンジョス版無限ループ。アルバレスに勝機は……

Dos Anjos【写真】クリンチで削りたいアルバレスだが、この斜めに突き上げるチャンピオンのヒザは試合を終わらせる威力を持っている (C)MMAPLANET

今週末はUFCが史上初の3日連続でイベントを開催する。7日(木・現地時間)はUFC Fight Night 90「dos Anjos vs Alvarez」、8日(金・同)がTUF 23 Finalae、そして9日(土・同)はUFC200。記念すべき200回大会はネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるが、UFN90とTUF23フィナーレはMGMグランド・ガーデンアリーナが使用される、いずれにせよ、1万人以上のキャパ誇る会場で、毎日チケットを売るというUFCにとっても過去最大のチャレンジとなる。

そんなビッグウィークエンドのスタートを切るUFN90のメインは世界ライト級選手権試合=王者ハファエル・ドスアンジョスにエディ・アルバレスが挑む一戦だ。昨年3月にアンソニー・ペティスを破り、12月にはドナルド・セラーニを僅か66秒で破ったドスアンジョスにとって、これが3度目の防衛戦となる。

コナー・マクレガー戦を負傷欠場してしまったチャンピオンだが、その実力者としての評価は上がるばかり。グレイシーバッハ系ゴルド・コヘイアの下で、仕留める柔術を学び──その後MMAで使う術を身に着けると、米国移住とともにレスリングを強化。同時にゴルドの関係でシンガポールのイヴォルブMMAにも所属するようになり、徹底してムエタイの習得に励んだ。

MMAの一つのパーツであるムエタイの精度を最大限に高め、カリフォルニアではKINGS MMAの名将ハファエル・コルデイロの指導によってミックストマーシャルアーツに落とし込む。ドスアンジョスの最大の長所は、中間距離から接近戦にかけて圧倒的なプレッシャーを対戦相手に与えることができる点に尽きる。MMAの打撃といえばレンジの外で間合いをマネージメントする部分が大いに注目されてきたが、ドスアンジョスは相手の攻撃が当たるかもしれない距離で、自分の戦いを全うし付け入る隙を与えない。

そのサウスポーの構えから左ストレート、左ボディ、そして左ミドルで対戦相手をケージ際に追い込み、左の拳を正中線に置いて矢継ぎ早に攻撃を続ける。打撃の防御で頭がいっぱいになった相手にダブルレッグ。ここでスクランブルに持ち込んで削ることもできる一方で、ゴルド譲りの正統派MMA対応型ブラジリアン柔術の技術を駆使し、非常に柔らかいポスチャーから打撃、そしてポジションを取り進めることも可能だ。

テイクダウンを察知された場合も、スコタイ王朝時代から兵士の白兵戦の術として磨かれたムエタイ900年の真価が発揮され、首相撲からエルボー、さらにはヒザを突き刺し、離れて打撃、もしくは再度のテイクダウン狙いと幾重にも攻撃の幅が広げることができる。これぞドスアンジョス版無限ループ。スタンドの打撃戦に戻っても構わない、全局面プレッシャー型MMA──それが今のドスアンジョスの強さだ。

そんな穴のない、強すぎる王者に対し、アルバレスは如何に戦うのか。日本のファンにはバチバチ殴り合う印象の強い彼だが、今は決してそんなことはない。逆にいえば、かつてDREAMのリングで見せたような戦いを仕掛けるなら、ファン以上にドスアンジョスが喜ぶことになるだろう。

試合を終わらせるパンチは持っている。そこまでのプロセスがアルバレスにとっての勝負だ(C)MMAPLANET

試合を終わらせるパンチは持っている。そこまでのプロセスがアルバレスにとっての勝負だ(C)MMAPLANET

アルバレスにとって大切になってくるのは、如何にドスアンジョスの左の攻撃を見極め、右クロスを入れることができるか。左ボディという武器もあるが、ローで前足を蹴られることを前提に考えると、自ら距離を詰めるような攻撃は簡単に仕掛けることはできないと予想される。

よってドスアンジョスの動きに合わせて、そこを見切ってのカウンターでパンチ、もしくはテイクダウンを狙うこと。ローを蹴らせないためにやや遠くの距離をとることを考慮すると、その位置でチャンピオンの脅威となるパンチの圧力を与えることができるか。正直、艱難なことではないのでカウンターが不可欠となってくる。

中間距離の殴り合いは強いが、そこに頼ったファイトは博打になる。その博打に持ち込むまで、ドスアンジョスと渡りあえるか否か。多大なリスクを承知で、組みついてクリンチ。ケージ際でドスアンジョスを押し込むことができ、かつ自らは体力を疲弊しないで戦うことから、アルバレスのチャンレジは始まる。


■ UFN90対戦カード

<ライト級/5分5R>
[王者] ハファエル・ドスアンジョス(ブラジル)
[挑戦者] エディ・アルバレス(米国/2位)

<ヘビー級/5分3R>
ロイ・ネルソン(米国/10位)
デリック・ルイス(米国/12位)

<ウェルター級/5分3R>
アラン・ジョバーン(米国)
ベラ・マハメッド(米国)

<ライト級/5分3R>
ジョセフ・ダフィー(アイルランド)
ミッチ・クラーク(カナダ)

<ウェルター級/5分3R>
マイク・パイル(米国)
アルベウト・ミナ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジョン・マクデッシ(カナダ)
メディ・バグダッド(フランス)

<バンタム級/5分3R>
アンソニー・バーチャック(米国)
ジレノ・ロペス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
ラッセル・ドーン(米国)
ペドロ・ムニョス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
フィリッピ・アランテス(ブラジル)
ジェロッド・サンダース(米国)

<ライト級/5分3R>
ジルベウト・ドゥリーニョ(ブラジル)
ルカス・サエウスキ(ポーランド)

<バンタム級/5分3R>
マルコ・ベルトラン(メキシコ)
ヘジナウド・ヴィエラ(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ヴィセント・ルケ(ブラジル)
アルヴァロ・エレラ(メキシコ)

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