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【ONE】イヴォルブ代表チャトリ・シットヨートン<02> 「米国は3億、アジアは45億」

Evolve MMA【写真】大統領官邸とシンガポール最大のショッピング街が共存する一等地、オーチャードにオープンしたばかりのイヴォルブ・オーチャートセントラル (C)MMAPLANET

チャトリ・シットヨートン──。アジア最大のプロMMA集団、そしてアジア最大のメガジム網を拡充させようとするイヴォルブ代表インタビュー後編。

語弊を恐れずに書き記すなら、日本の格闘技界には存在しなかったビジネス論と資金を用い、アジアというマーケットを手中に収めようというチャトリの壮大な将来の展望とは。
<チャトリ・シットヨートン インタビューPart.01はコチラから>

※なお現在、発売中のFight&Life49号ではシンガポールMMA界の実情に迫ったシンガポール格闘技紀行が掲載中です。

──ONEの旗揚げから3年8カ月、MMAや柔術、ムエタイはこの国でどれだけ普及したと考えていますか。

「他のアカデミーのことは分からない。でも、イヴォルブはとても成功しているし、成長もしている。毎年、倍々で成長しているよ。7年前、シンガポールに来た時、誰もMMAもBJJも知らなった。今はONEもあって、誰もが知っている。まだ、絶対的にメインストリームにあるとは言い難い。でも、ゆっくりでも確実に近づいている。7年前は20人に1人しかMMAを知らなかった。今では5人から10人は知っている。これを20人にするのが、私の仕事なんだ」

──そのためにも相当な投資を行ってきたと思います。

「既に金銭的にも回収の時期に入っている。正確な額はいえないけど、数百万ドルを投入してきた。でも、何かをやるときは100パーセントの努力をする。それが私のやり方だ。5年間で数千人のジム生を誇るようになり、ONEだけでなくUFC世界王者も誕生した。15人の世界チャンピオン経験者がコーチをしている。こんなに速く成功を収めたジムはないとヘンゾ・グレイシーも言ってくれたよ。タイにはイヴォルブのコーチになりたいという人間のウェイティング・リストが存在するぐらいさ(笑)」

──ジムが数千人というのは?

「数千人だよ(笑)。千や2千人でないということ」

──一般の生徒への指導、プロチーム、その2つがないことには成功を収めないと言われていましたが、その一般の生徒からプロになる選手は育っていますか。

「ベネディクト・アン、アミール・カンらがそうだ。将来、世界チャンピオンになってほしい」

──正直なところ、今もシンガポールの人々が格闘技はおろか、それほどスポーツ競技に人生を掛けるというイメージを持ちえないのです。

「凄く慎重に育てているよ。5年後が楽しみでならない。シンヤ・アオキ、ハファエル・ドスアンジョス、ベン・アスクレンと練習しているんだ。他のジムのことは分からないけど、イヴォルブは成長し続けているから、ファイターもどんどん育つだろう」

──イヴォルブとONEの成功で、この国にMMAが定着しつつあります。それはビジネスとしてコンペティターが生まれる可能性があることを意味しています。

「大歓迎だ。それがスポーツの成長を意味する。もっとMMAのジム、MMAイベント、MMAの練習生が増えてほしい。そうなることで、MMAはメインストリームに躍り出ることが可能になる。今、シンガポールにはONEとREBEL FC、アマも2団体ほどしかそんざいしない。柔術トーナメントは年に4回か5回開かれている程度だ。

ただシンガポールは小さな島だけど、5百50万という人口を抱えている。だから市場はあるんだ。UFCが一度は進出してきたようにね。

ムエタイは……、私としてはルンピニー王者をイヴォルブから誕生させたい。それはイヴォルブ・タイランドがオープンしてからになるだろう。やりたいことはたくさんあるけど、一歩ずつしか進めないんだ(笑)」

──その一歩が他よりずっと大きいと思います(笑)。

「そんなことはないよ。6年前の計画では、2015年には10のアカデミーがあるはずだった。でも、ポモ・モール、ヘッドクォーター、オーチャード、そしてオンラインのイヴォルブ・ユニバーシティ、僅か4つだ。今年中にもう一つ、オープンさせる予定だけどね。海外でも既に場所は決めている。今はまだ明らかにできないけど。

こう見えて、かなり慎重なんだよ。実際、ジムをオープンさせるだけなら、明日にも25のジムを開くことはできる。でも、イヴォルブとしてのクォリティが絶対条件。イヴォルブをマクドナルドにしたくない。最高の練習環境を提供できなければ、ジムは開かない。実際、フランチャイズのオファーはいくらでも届いているよ。米国、英国、イタリア、エジプトからもあった(笑)。クレイジーだ(笑)。アジア中からも声が掛かるけど、全てを断っている。

私はただ単にビジネスマンではない。自分もマーシャルアーチストだ。フェイクなコーチや、フェイクなファイター、フェイクな練習生は必要ない。ただ、ビジネスマンがジムを開くと、指導者や指導内容など二の次のところがある。絶対にイヴォルブはそうはさせない。スタッフも高い質を求めている。それが私のやり方なんだ」

──今、現役の選手が引退後、コーチをしてジムを持つという形になっていくのでしょうか。

【写真】ONE世界ストロー級王者デェダムロンはタイ人、ライト級チャンピオンの青木、イヴォルブはタイ人、ブラジル人、日本、英国、米国のみならず、フィリピン、シンガポールの多国籍チームだ(C)MMAPLANET

【写真】ONE世界ストロー級王者デェダムロンはタイ人、ライト級チャンピオンの青木、イヴォルブはタイ人、ブラジル人、日本、英国、米国のみならず、フィリピン、シンガポールの多国籍チームだ(C)MMAPLANET

「シンヤはきっと40歳まで戦うだろう。そのまえに日本にイヴォルブはできているはずだ」

──トレーニングに明け暮れたファイターたちがジムをやっていくとなると、経営学を学ぶ必要はありませんか。

「だから私がいる。私から学べばよい。彼らが代表になったとしても、ジムのオーナーは私だ。私はハーバード大学で経営学修士を習得している。イヴォルブは私がオーナーだ。私にはビジネス・パートナーは必要ない。それでも10年後にはアジアの主要都市にイヴォルブは進出を果たしているだろう」

──シンガポールやフィリピンのようにMMAが成長している国はともかく、日本の現状をどのように捉えていますか。

「マーシャルアーツの伝統も、質の高いイベントも選手も存在する。しかし、ヤクザとの関係が明るみに出た以上、なかなかメインストリームに戻って来られない。これはスポーツに限らず、どんな産業にも当てはまることだ。凄く難しいことだよ。それは君の方が知っているだろう?」

──確かにその通りです。

「UFCがMMAのトップだ。尊敬している。ただ、米国のトップなんだ。米国の人口は3億人、アジアは45億人が住んでいる。普及には時間が必要だけどね。マーシャルアーツの伝統があるアジアだと、10億人がMMAの中継を見てもおかしくない。簡単なことじゃないけど、そうなると私は信じている。如何に拡大していくか。PRIDEですら、日本でしかTV中継がなかった。ONEは既に1億人が視聴できる状況下にある。

UFCとONEは違う。北米ではファイトが見たい。アジアではマーシャルアーツが求められているんだ。この違いをしっかりと理解して、これからもMMAをアジア全般に普及していくよ」

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