この星の格闘技を追いかける

【ONE】チャトリ・シットヨートンに訊く─01─「なぜ、あのような発言をしてしまうの?」

【写真】会見でのチャトリが、彼の全てではない。と同時に、会見がファンにとっては全て (C)MMAPLANET

9日(火)、東京都港区のスパイラルにて行われた武尊のONEとの契約会見。同席上でチャトリ・シットヨートンが発した言葉が、日本のファンの怒りを買い、あるいは同調する者がでるなど大きなトピックとなった。

日本でビジネスを成功させるなら、わざわざ何度も強調する必要がない言葉が訊かれたのも事実。なぜ、あのような発言をしてしまうのか。同会見直後にチャトリにインタビューを試み、現状のONEにおける日本人選手に対する想いと共に数々の暴言ととられかねない発言の真意を尋ねた。


――チャトリさん、熱のこもった武尊選手との会見でした。が、魔裟斗選手と那須川天心選手は世界に出なかった。国内だけで戦っていた。ロッタンは負けてない。数々のまた物議を醸す発言が聞かれました。

「でも本当のことだよ」

──正直な想いを話している。それもチャトリさんらしいです。ただ、会見のなかで「日本では失敗続きだった」という話や、「お母さまから『いつになったら日本でのビジネスが上手く行くの?』と尋ねられる」ということも言われていました。そこが分かっているのであれば、あの発言を繰り返す必要はあるのでしょうか。

「あぁ……、そうなんだよ。私もマイ・チームも分かっているんだ。日本の習慣というのは、本当に思っていることを口にしない……。それは私も承知しているんだ。特にネガティブな意見を持っている時はね」

──それは日本語と英語のメカニズムの違いかと思うことがあります。私も英語の時の方が、よりハッキリと自分の意見を後腐れなく口にすることができる。

「私も自分の発言は、凄くきついことは分かっている。キビシスギタネ。分かっているんだ……そこは自分でも。自覚している。と同時に私の言葉に怒りを感じる人々、特に若い世代が反発するのは構わない。そういう闘争本能は必要だから」

──う~ん、仮にチャトリさんがメディアなら凄く尊敬できますよね。そこまで堂々と意見できるなら。ただし、ファンやサポーターが必要なプロモーターとしてはどうなのかと。

「うん。分かるよ、言っていることは。分かっているんだ(苦笑)」

──ところで武尊選手が会見のなかで「ONEとの契約は6月24日にISKAの世界タイトルを取ったあとで自分の口から発表したかった」という発言も聞かれました。先に報道があったと武尊選手は言っていましたが、まぁチャトリさんがSNSで発表したことが発端であったことは明らかです。

会見中、武尊がカメラマンの方を見ようと──とチャトリを促すシーンが微笑ましかった

「それは……コミュニケーションに問題があったんだ。

米国大会を始め、同時に色々なことを進めないといけない状況で……。武尊との契約は少し前だったから、色々と忙殺されているなかで、うっかりSNSで書いてしまった。『そうだ。武尊に触れること、忘れていた』って。結果、マーケティングチームからもの凄い叱責を受けてね(苦笑)」

──アハハハハ、社長なのに部下に怒られたと。

「そうだよ。『チャトリ、何をやっているんですか。あなたには計画性がないのですか』ってね。『チャトリ、ブレキングニュース・ヲ・ヤッタ!! ナンテコト』とめちゃくちゃ怒られたんだ。私はオカシイ・シャチョウなんだ」

──もちろん計画はあるでしょうし、ABEMAにもABEMAのアイデアがあったはずです。武尊選手が言ったようにパリでの試合後という風に。と同時にあくまでも私見ですが、ONEとしては米国大会直前でより世界中が注目しているときに発表したのだと思っていました。結果、グローバル的にあの大会を楽しみにしていたファンは武尊選手の存在を知ったという見方もできます。

「そういう見方もできるね。いや、本当に米国のファンの盛り上がり方はクレイジーで。ビックリ・シマシタ。会場であんなに凄いエネルギーを感じたことはなかった。モノスゴイ。あれだけ米国のファンがONEのアスリートのことを認識していることに、ショックを受けたほどだ」

──その要因は何だと考えていますか。MMA、ムエタイ、キックボクシング、サブミッショングラップリングという4つのルールがあると色々な試合を見られる一方で、興味のない試合が目の前で行われることがあるのも事実でしょうし。

「彼らは全ての試合を楽しんでいたよ。きっとマーシャルアーツのオリンピックゲームのように捉えていたんじゃないかな。五輪ではボクシング、陸上競技、水泳、キョウミ・ガ・ナクテモ、ベスト・オブ・ザ・ベストが見たい。最高のアスリートの勝負、物語、ドラマを皆は求めている。その点において、ONEは米国のファンにとってスペシャルだった。

アジア・カラ・アメリカ・ヘ。本物のマーシャルアーツが、アジアから米国に上陸した。ソウイウ・キモチ・ダッタト・オモイマス」

──第一弾のインパクトは大きく。その後、徐々に興味が薄れる。初物は強いという見方もあります。今後、継続的に米国でイベントを開催するうえで何が必要だと思っていますか。

「そうだね……正直、次に何をやるのか。それはまだ私の中に明確なイメージは出来上がっていないんだ。それはコロラド州デンバーより、規模の大きな都市でイベントを開いた時に見えてくるものじゃないかと思っている。米国はとにかく経済規模が違う。米国のGDPは、世界のGDPの25パーセントを占めている。

まだ色々なことが待っているはずだ。きっと米国のファンはUFC、Bellator、PFLとONEは別モノだと感じてくれたと思う。アジアから本物のマーシャルアーツがやってきた。その価値観が違う。だから2023年には米国大会は増えることになるから、とても楽しみにしているんだ」

──チャトリさんがショックを受けたほど米国のファンに受け入れられたONE FN10でしたが、日本のMMAメディアとしてはこの重要なイベントに日本人ファイターの名前が見られなかったことを言及しないといけないです。現状チャトリさんはONEの日本人選手に関して、どのような想いでいるのでしょうか。

「過去5年、ONEは日本で成功を収めていない。2019年3月のONE Centuryの視聴者数はとても多かった。ただし、コロナパンデミックであの勢いを持続できなくなった。と同時に日本人選手の敗北が続いた。過去5年、日本人選手の勝率はどれだけだろうか。もう日本人チャンピオンがいなくなって、どれだけ経つのか。そして、その勝率の低さはMMAだけでなくキックやムエタイ、グラップリングでも同様なんだ。

その原因の一つには、ONEで戦う以前に自国だけで戦ってきた選手ばかりということがあるだろう。キック、ムエタイ、MMA、グラップリング、全てにおいて国際的な舞台を経験することでレベルが上がる。日本のベストでなく、世界のベストを目指さないとその域に達することは難しい。ここは大きな問題で。だからこそ、私は武尊がONEとサインしたこと、そして国際的な舞台で戦うことによって、日本の選手たちをインスパイアしてくれると期待しているんだ」

<この項、続く

PR
PR

関連記事

Movie