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【Pancrase311】いよいよ王座獲りへ、藤野恵実─01─「私だけ集大成にする必要もない」

Emi Fujino【写真】女子MMAを続けることで、藤野はどんどん男前になってきた(C)MMAPLANET

12月8日(日)に東京都江東区の新木場スタジオコーストで開催されるPancrase311 。同大会のメインで暫定ストロー級クィーン・オブ・パンクラシスト王座決定戦で藤野恵実がチャン・ヒョンジと対戦する。

9月29日に行われた同王座決定トーナメント準決勝でエジナ・トラキナスを破り、今回の試合に歩を進めた藤野。日本の女子MMA界のBBAブーム牽引する藤野に──まず、この試合に対する想いを尋ねた。


──王座獲りが近づいてきました。

「相手がどんなもんなのか、微妙な感じに思われることもあるでしょうが、とにかくベルトを獲るためにやってきました」

──まさにそこは感じられる部分で。もちろん、それは藤野選手には何のコントロールもできないことだし、格闘技に100パーセントはない。それでも勝利が絶対の試合かと思われます。

「相手に対して特別な想いを持つことは、この試合に限らず私はもうないんです。それは女子MMAがそういうモノで。対戦相手を選んだこともないですし。

それでも一度……同じ日本人選手で全然キャリアのない選手と試合のオファーがあった時に文句を言ったこともありました。『なんで、そんな相手と試合をしないといけないの』って。でも、それからRoad FCで戦うようになっても、女子は層が薄くてデビュー戦の子と試合をしましたしね。そもそも私と戦績が合う選手なんて、もういないじゃないですか」

──その通りですね。

「そこはもう試合数で合わすことはできないですし、強さという部分では戦績が少なくても結果を残していたり、何かを持っている相手を欲しますが、それはもう私にはどうにもできない。今は与えてくれる対戦相手と戦い、自分がやってきたことをどう出すのか。そこが全てだと思っています。だから、今回も相手は関係ないです。

なにより、ここでタイトル挑戦の機会があることに対して有難いという気持ちが一番です。去年の8月にヴィヴィ(ヴィヴィアニ・アロージョ)に負けて……あれが最後のチャンスだと思っていたので、実際にあの後はどうしようと感じになっていたわけですし。それはUFCに行きたいという気持ちは今でもありますけど、もう厳しいというのは見えています。

ずっとUFCで戦いたいという気持ちとベルトを獲りたいという気持ちがあってMMAを続けてきて……ベルトを獲れる夢が叶えられるチャンスが存在するのであれば、そこに邁進したい。今はその気持ちだけです」

──BBAブームもあり『ここまでやってきた』、『集大成』という空気があるかと思います。頑張ってきた……あるいは、頑張っているという評価は……ファイターとしての評価をそれこそ下げていると考えています。誰だってMMAファイターでなく、この時間に生きている人の多くが頑張っているのだから。

「それって引退ムードですよね(笑)。それをいえばやっている年数は私より短いですけど、同年代で黒部(三奈)さん、学年で一つ下の浜ちゃん(浜崎朱加)がいて。V(山口芽生)、富松(恵美)とか……アラフォーの私ら、誰も弱くない……。

ケガはいくらでもあって、痛み止めは欠かせないようになっているし、痛くて動いているのが当たり前ですけどね(笑)。そういうなかでやっていて、私だけ集大成にする必要もないし。ただ、これからのことは考えられないです。ベルトを獲る、今はそこしか考えていないので」

──集大成ではなくても、やってきたことを全てぶつけることには変わりないですしね。

「ハイ。私がMMAを始めた時はSmack Girlとかテレビで取り上げられたり、女子が少し流行っていたんですよね。私は駆け出しのペーペーだったけど、当時の女子選手はそういう感じだった。でも、多くの男の選手からは、選手として認められていなかったじゃないですか」

──そうですね。女子だから注目を集める選手には、私自身も興味はなかったです。女子を武器にする選手は特に。それこそ先ほどの頑張る論になると、もっと頑張っている男子にはスポットが当たらず、女子だからと専門誌もページを割くのは絶対的に違うと考えていました。

「そういう時代から自分が力をつけてきたときにはもう女子格闘技なんて、いつもガラッガラのなかで戦うようになっていて」

──その時代を懸命に戦った選手が、女子MMA選手に向けられた目を変えたのではないでしょうか。

「確かにレベルも低く、お遊びのような選手もいた時代から、ようやく普通に認められるような時代になりました。それでもパンクラスで女子の私が2度もメインで戦わせてもらうって、やっぱり当時は全く考えられないことだし。男子もいる大会で女子がメインですからね」

<この項、続く

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