【Brave CF30】試合結果&Braveインド大会からインドMMAを考察。強くならない理由が見当たらない
【写真】 アガサの豪快なスラム。インドは五輪レスリングでも、力をつけ直してきている(C)BRAVE CF
23日(土・現地時間)、インド南部の街ハイデラバードのガチボリ・インドアスタジアムでBrave CF30が開催された。
メインではチーム・ラカイの非ONEファイター最強の男=スティーブン・ローマンがBrave CFバンタム級王座4度目の防衛戦でルイ・サノダキスを5R判定で下し、タイトル防衛に成功している。
メインこそフィリピン✖カナダという試合が組まれた同大会だが、前11試合中6試合中にインド人選手が出場し、国際戦が3試合組まれた。
Invicta FC還りのマンジット・コルカーは左目の周囲を大きくカットしTKO負け、恐らくはアンダードッグだった英国人選手マーチン・ハドソンを相手にババジート・チューダリーはパンチを被弾し、ダウンしたところでRNCを極められてしまった。
唯一、国際戦で勝利したカンタラジ・シャンカル・アガサはヨルダンの柔術家ヌラズ・アブザハを相手に豪快なテイクダウンや、腕十字をスラムで叩きつけるテイクダウン&パウンドで判定をモノにしている。今大会での国際戦の結果は1勝2敗だったインド勢──。
彼の地でMMAの歴史が始まったのは2012年に英国籍のインド人富豪ラジ・クンドラが興したSuper Fight Leagueによってだ。7年を経てなお、彼らの実力はアジアにおいてもインドネシアやマレーシアなどと肩を並べるレベルかもしれない。だからといって楽観視は決してできない。2012年には日本のMMA界は中国やフィリピンはその視野に入っておらず、韓国ですら「まだまだ」という空気があった。それが今や──という状況の下、インドの可能性を少し考えてみたい。インドにはご存知のようにカラリパヤットやクシュティという民族格闘技が存在する。
北インドで盛んなクシュティはインドの土着レスリングだ。マットは敷かず、土を耕し汗で土が体について乾くことで滑ることを抑える。また土を耕した試合場は、灼熱のインドにおいても体の熱を取る役割を果たしてくれる。
スタイル的は肩をつかせて勝つ、フリースタイル・レスリングだ。一気に背中をつかせるためにリフト系の豪快な投げがあり、またねちっこいグラウンド・テクニックも存在する。そんなインド版フォークスタイル・レスリングは男子だけのものだが、五輪スタイル・レスリングでいえばインドは東南アジア諸国より、ずっと良い結果を残しており特に女子の躍進が目立っている。
ギータ・フォーガットとバビータ・クマリ姉妹によってリードされたこの国の女子レスリング。ギータは2012年のロンドン五輪に出場後、世界選手権で吉田沙保里に準決勝で敗れたものの55キロ級で銅メダルを獲得している。その後、リオ五輪予選でギータを破ったサクシ・マリクは本番で銅メダルを手にし、ギータの妹ハビータもリオ大会に出場を果たしている。
両者の実姉リトゥ・フォーガットは11月16日のONE北京大会でMMAデビュー戦でTKO勝ちを収めているのは記憶に新しいところだ。この姉妹の物語はインドで大ヒットした映画「ダンガルきっと、つよくなる」でも見られたように男性社会に加え、階級社会が残るインドという国でクシュティを収めた父マハヴィル・シン・フォーガットが、さまざまな困難を乗り越え姉妹を育てたことで、大きな社会現象にもなっている。
その一方で男子のレスリングでいえば、世界中で競技化が行われていることもあり、世界選手権では2009年に銅メダルを獲得したのが、実に42年振りの快挙であった。とはいえ今年の9月に開催された世界選手権でインド男子は日本勢のメダル獲得がなかったフリースタイルにおいて57キロ級でクマル・ダヒヤ、61キロ級でラフル・アワレ、65キロ級でバジュラン・プニアが銅メダル、86キロ級でディーパク・プニアが銀メダルを首に掛けている。女子も53キロ級でギータ、ハビータ&リトゥの従妹ビネシュ・フォーガットが3位表彰台に乗るなど、今も結果を残している。
レスリング=MMAではない。ただし、前述したようにクシュティには豊富なグラウンドコントロール術がある。そしてブラジリアン柔術も緩やかに浸透しており、ノーギが盛んというのはクシュティの影響があることは大いに考えられる。
実際、アブザハに勝利したアガサはグラップリングの試合に出場しており、ヒールフックで勝利(※Brazilian Blog/2018年11月22日、橋本欽也氏によるASJJFバンガロール国際オープン・レポートより)したこともある。この日は自らがサブミッションで攻めるシーンはほとんどなかったが、腕十字や三角絞め、足関節といった類の攻めを防ぐとともにトップポジションを譲ることのないMMA流のグラップリングを駆使して戦っていた。
現在インドの人口は13億4000万、一人っ子政策を取りやめた中国の人口を2022年から2024年には抜くことが予想される。この南アジアの大国には、アジアで最も資本が投じられているプロスポーツ=クリケットのインディアン・プレミアリーグが存在し、SFLをスタートさせたクンドラは「クリケットを凌駕しなくても、インドで2番目に人気のあるスポーツになれば十分なマーケットが存在する。SFLのターゲットは18歳から35歳。この年代だけで5億以上の人口がインドにはあるのだから」と語っていた。
2020年後半にはカナダ系インド人五輪レスラー=アルジャン・ブラーや前出したリトゥ・フォーガットを擁しONEチャンピオンシップがインド進出を果たす可能性は非常に高い。インドのMMAが強くならない理由は、見当たらないと考え良いはずだ。
Brave CF30 | ||
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<Brave CFバンタム級選手権試合/5分5R> | ||
○スティーブン・ローマン(フィリピン) | 5R 判定 詳細はコチラ | ×ルイ・サノデキス(カナダ) |
<ミドル級/5分3R> | ||
○フィル・ホーズ(米国) | 1R3分45秒 RNC | ×ドミニク・ショーバー(オーストリア) |
<ウェルター級/5分3R> | ||
○マーチン・ハドソン(英国) | 1R1分39秒 RNC 詳細はコチラ | ×ババジート・チューダリー(インド) |
<バンタム級/5分3R> | ||
○カンタラジ・シャンカル・アガサ(インド) | 3R 判定 詳細はコチラ | ×ヌラズ・アブザハ(ヨルダン) |
<ンタム級/5分3R> | ||
○モハメッド・ファハッド(インド) | 1R1分09秒 TKO 詳細はコチラ | ×クシャウ・ブヤス(インド) |
<225ポンド契約/5分3R> | ||
○トッド・スタウト(トリニダードトバゴ) | 2R1分56秒 TKO | ×ウカシュ・パロビエツ(ポーランド) |
<54.7キロ契約/5分3R> | ||
○サミン・カマル・バイク(イタリア) | 2R5分00秒 TKO 詳細はコチラ | ×マンジット・コルカー(インド) |
<195ポンド契約/5分3R> | ||
○エンリコ・コルテーゼ(イタリア) | 3R 判定 | ×ジョリ・モンタニャック(フランス) |
<女子ストロー級/5分3R> | ||
○カロリーナ・ボイチ(ポーランド) | 3R 判定 | ×マリナ・ヒベイロ(ブラジル) |
<71キロ契約/5分3R> | ||
○クルジープ・シン(インド) | 1R1分23秒 TKO 詳細はコチラ | ×シャンガル・メヒラ(インド) |
<フライ級/5分3R> | ||
○サティア・ベフリア(インド) | 1R3分17秒 三角絞め 詳細はコチラ | ×パディン・マルソンドウンリアナ(インド) |