【ADCC2019】無差別級─07─ラクラン・ジャイルス、世界で一番の銅メダル獲得!!
【写真】77キロ級出場選手の3位はここまで進化したグラップリングにあって、奇跡のようなリザルトだ (C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー30回目は無差別級3位決定戦の模様をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi
<無差別級3位決定戦/10分1R+ExR5分>
ラクラン・ジャイルス(豪州)
Def. by 内ヒール
モハメッド・アリー(ブラジル)
またしても自分よりはるかに大きい柔術家との対戦となった足関節師ジャイルスは、試合開始と同時に座り込むと、そこからアリーの左足を両腕でつかんで引き寄せる。
当然ヒールフックを警戒しているアリーが立って左足を引き抜くと、今度はアリーの右足に自らの右足をデラヒーバで絡める。
ここからジャイルスは右足を旋回させ、外からアリーの右足に絡めて股間から出して50/50の絡みを作る。
アリーは素早くその右ヒザをマットに着いて、ジャイルスの右足を上から押さえつけて支点を作らせないようにするが、ジャイルスはかまわず右ワキでアリーのかかとをフックする。
危険を感じ両手をマットに着いて右足を引き抜こうと回転するアリー。が、ジャイルスはそのまま同時に回転しつつ、50/50のフックを入れながら内ヒールへ。
強烈に捻りあげると、アリーはすぐにタップ。僅か1分少々でジャイアントキリングを果たしたジャイルスを、場内は大歓声で讃えた。
かつては「極め方」に注目がいきがちで、「コントロール」のプロセスが未発達だった足関節の技術。そこに「コントロール(ポジション)→極め(サブミッション)」という柔術の基本プロセスを持ち込み、この上なく精巧に作り上げたのがダナハーの足関節システムだ。彼の弟子のトノンらが使う内ヒールは、まずインサイド・サンカクで相手のヒザをがっちり固定して支点を作り、その後不要な怪我をさせないようにゆっくりと捻りあげる形が多い。
対してこの無差別級で猛威を振るったジャイルスの50/50(アウトサイド・サンカク)からの内ヒールは、支点を固定することよりも、相手のかかとをがっちりとワキに抱えることを優先するもの。その後、かかとを強烈にひねり上げながら支点も固定して極めに来るので、相手は激痛の中タップすることとなる。
いってみればダナハー・システム以前の極め重視の足関節の方向を、改めて精巧に練り直したのがジャイルスのシステムということになる。当然、前者のダナハー・スタイルの足関節への対処とは別のやり方が必要となってくるはずだ。
デュアルチ、ガウジオ、アリーという超大物柔術家を3連破したジャイルスによって、世界はまたひとつ新しい極めのコンセプトとプロセスを知ることとなった。