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【ADCC2019】2019年度、グラップリング世界一座はブシェシャを破ったゴードン・ライアンに

Ryan【写真】攻めばかりでなく、守りの強さも必要であることを改めて感じることができたADCC2019。これぞ無防備な攻撃の試合でない、高度な組み技の祭典といえよう (C)SATOSHI NARITA

9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。

2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー第31回=最終回は無差別級決勝戦の模様をお伝えしたい。
Text by Isamu Horiuchi


Ryan 01<無差別級決勝/20分1R・延長10分>
ゴードン・ライアン(米国)
Def. by 本戦 0-0 延長 0-0 マイナスポイント 0-1
マーカス・アウメイダ(ブラジル)

現在のノーギグラップリング世界最強を決める無差別級決勝戦は、ブシェシャ✖ライアン──世界が待ち望む頂上決戦となった。

Ryan 02体勢を低くしたライアンはブシェシャの右足を取ってのテイクダウンを狙うが、ブシェシャががぶる。するとライアンはしばらく片ヒザをついた後、シッティングガードに。ブシェシャは低くパスを狙うが、ライアンは両腕でブシェシャの肩を遠ざけてその侵攻を許さない。

Ryan 03やがてシッティングに戻してバタフライフックを作ったライアンは、ブシェシャの左腕を自らの右肩にかけて伸ばしての腕固めに。逃れようとしたブシェシャの上体が浮いたところで、左足で跳ね上げてのスイープ一閃。大歓声が湧き上がるなかブシェシャの巨体を綺麗に返してみせた。そのままライアンはマウントを狙うが、ブシェシャは素早く前転してハーフで正対した。

ライアンは上からブシェシャの巨体を折り曲げるようにしてプレッシャーをかけるが、ブシェシャは軽快なガードワークで対処。逆にXガードからのスイープでライアンのバランスを崩すと、そのままテイクダウン狙いへ。これをライアンが振りほどき、両者はスタンドに戻った。

しばらくスタンドレスリングの攻防が続いた後、ライアンが再びシングルレッグに。がぶられてシッティングに入ろうとするライアンに対し、ブシェシャは前方に飛び込んでバックを取りにいく。ここでライアンが体をずらしてハーフガードを取った。

その後は主にシッティングガードから仕掛けようとするライアンと、それを防いで上から足をさばき、また上半身を制しにかかるブシェシャによる攻防が続く。お互い譲らないまま、本戦の20分が終了した。

両者スタンド状態から始まった延長戦。姿勢を下げたライアンに対し、上背に勝るブシェシャががぶりを仕掛けると、ライアンはあまり抵抗せずに両ヒザを付く。しばらく経過したところでライアンは座り込む。ブシェシャもすかさずバックを取ろうとするも、ライアンも対応してハーフガードに。場内のブシェシャサポーターたちから「マイナス1」チャントが起こるが、これは今大会でパウロ・ミヤオが多用した動きと同様、「まず亀のポジションを確立してから、ガードに引き込む」と解釈され、引き込みのマイナスポイントは付かない。

Ryan 05シッティングを取ったライアンは、下から腕をたぐり、また頭を下げさせる等の仕掛けを試みるが、ブシェシャは正座して姿勢を正して防ぐ。ライアンはブシェシャの右腕を対角線に流す場面も作ったが、自ら姿勢を戻した。特に大きな動きがないまま時間が進むと、残り6分のところでブシェシャに消極性のマイナスポイントが宣告された。

後がなくなったブシェシャは、その後もしばらくはライアンのシッティングに正座して対処。が、残り3分半のところで立ち上がると、左右に動いてのパスのプレッシャーをかける。さらに低く体重を浴びせにかかるブシェシャだったが、ライアンは左足のニーシールドでその侵攻を防ぎバタブライを作った。

Ryan 06ならばと立ち上がったブシェシャは素早くニースライドを狙うが、すかさずライアンも横向きになって左でニーシールドを張って防ぐ。するとブシェシャはその左足を取ってヒールフック狙いへ。が、足関節で名高いライアンは笑って受け流す。こ諦めたブシェシャも体勢を戻して苦笑いすると、世界最高峰の組み技師の競演に場内がどっと湧く。

Ryan 07ライアンがクローズドガードを取り、試合時間は残り1分半に。ブシェシャはライアンの右足に体重をかけてつぶしにかかるサンパウロパス。ライアンは四の字フックを組んで防御する。残り40秒、立ち上がったブシェシャは再び倒れこんでのヒール狙いへ。ライアンが落ち着いてポイントをずらすと、立ち上がって再びブシェシャがニースライスを狙う。ここもライアンのニーシールドに阻まれて時間切れに。

Ryan 08ヒザの負傷で出場も定かでなかった24歳のライアンが、ADCC2019二冠王に。足関節技とバックチョークで一本勝ちを量産し、師ダナハーが作り上げたサブミッション・システムの優越性を改めて証明することとなった。

同時に特筆すべきは、そのガードゲームの強固さだ。決勝戦ではブシェシャの雪崩の如きパスガードの侵攻をニーシールドで防ぎ、上半身を固めに来ても早めに前腕を張って許さなかったばかりか、逆にバタフライガードからの各種の仕掛けでブシェシャを守勢に回らせ、前半にはスイープで綺麗にその巨体を舞わせていた。

ごく基本的な柔術ムーブの精度においても卓越しているライアンは、現在のノーギグラップリング世界最強の地位にいるといって良いだろう。

■無差別級リザルト

優勝 ゴードン・ライアン(米国)
準優勝 マーカス・アウメイダ(ブラジル)
3位 ラクラン・ジャイルス(豪州)

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