【写真】僅か11秒、組み技世界最強ゴードンが改めてその強さを見せつけた準決勝だった(C)SATOSHI NARITA

9月17日（土・現地時間）&18日（日・同）にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第18 回は最重量級＝99キロ超級からニック・ロッドことニック・ロドリゲスの初戦から準決勝まで、そしてゴードン・ライアンが頭抜けた強さを見せたもう1つのセミファイナルの模様をお伝えしたい。

＜+99キロ級準決勝／10分1R＞
ゴードン・ライアン（米国）
Def.0分11秒 by ヒールフック
ルーズベルト・ソウザ（ブラジル）

ハイサム・リダを下して勝ち上がってきたソウザと準決勝で対峙したゴードン・ライアンは、試合後すぐにソウザの右足を抱えて引き込む。右手と右足でソウザの体を浮かせると、同時に左足を差し込んで外掛けを創った。

ソウザは絡まれた右足を抜こうとするが、ゴードンは瞬時にそれについていき左足の締めを強めながら外ヒールへ。立ったままの体勢のソウザは、すぐさまタップ。わずか11 秒、見事な技術的洗練と極めの強さを見せつけてゴードンが決勝進出を果たした。

大本命ゴードンが予想通りの強さで決勝進出を果たした最重量級。もう一方のブラケットを勝ち上がったのは、元々はダナハー門下におけるゴードンの後輩であり、クレイグ・ジョーンズやニッキー・ライアンとともにBチームを結成したニック・ロドリゲスだ。

ロドリゲスは初戦、東海岸予選準優勝のダモン・ラモスと対戦。加点時間帯になるとすぐにラモスのバランスを崩してバックに付き、やがてマウントを2度奪い、さらにスタンドに戻ってからもテイクダウンを奪って8-0で快勝した。

二回戦の相手は、東海岸予選決勝でラモスを腕十字で下したジョン・ハンセンだ。

下攻めの得意なハンセンのバタブライに対して、ロドリゲスは低く入って十八番のボディロックを取ることに成功。そのまま腰を制して足を超えてパスを決めた。その後一度ハンセンに正対を許すも、素早い動きで背中に回ったロドリゲスは、シングルバックから強烈なチョークを決めて準決勝進出を決めた。

準決勝でロドリゲスが相対したのは──ゴードン・ライアンの対抗一番手と見られていたフィリッピ・ペナだ。

初戦は豪州のジョシュ・サンダース相手に足を絡めて崩してからのシットアップで上を取り、パスのプレッシャーからバックを奪う等ポジションを支配して8-0で勝利。

二回戦で米国の巨漢マックス・ジメネスと対戦したペナ。

終盤ジメネスが勢いよくニースライスを仕掛けてきたところに乗じてスクランブルからバックにつき、残り15秒ほどでチョークを極めて上がってきた。

ロドリゲスとペナの注目の準決勝は、予想通りペナのガードワークとロドリゲスのトップゲームの譲らぬ攻防が続く。加点時間帯に入ってから1分少々が経過したところで、シッティングのペナに対してロドリゲスが一瞬低く入ってボディロックを作ることに成功する。

ここからロドリゲスはハーフでペナに背中を付けさせると、素早くヘッドアンドアームに切り替えて胸を合わせてゆく。

危機を察したペナは右のバタブライフックを作るが、上半身を完全にコントロールしているロドリゲスはそのまま腰を切り、ペナの右足を超えてサイドに。暴れるペナだが、強烈な上半身のホールドは離れず。ロドリゲスがポジションを固定し、パスガードの3点を先制した。

ここからペナが動いて距離を作ることに成功すると、ロドリゲスは無理せず立ち上がる。その後はスタンドレスリングでペナを寄せ付けずに、試合終了に。

前回大会は、青帯ながら驚異的な身体能力を活かしたレスリング&スクランブルで決勝進出したロドリゲス。今回は必殺のボディロックからの仕掛けで、重量級世界最高峰のペナのガードを完全パスという偉業を達成してみせた。ここ数年の技術的進化を見せつける、まさに値千金の勝利だった。

こうしてロドリゲスは、元同門の先輩にして──当時から「いつか超えてみせる」と宣言していた──世界最強のグラップラー、ゴードン・ライアンとの決勝戦に駒を進めたのだった。なお、決勝進出を決めた直後に快進撃の秘訣を尋ねられたロドリゲスは「身体と技術の充実と、そして無感情であること」と答えている。

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