【ADCC2019】99キロ超級─03─最重量級、脅威の新世代決勝でカイナン・デュアルチがロドリゲスを下す
【写真】新世代対決はデュアルチに凱歌が挙がった。新世代の台頭を象徴づけるフレッシュな決勝となった(C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー22弾は最重量99キロ超級の決勝戦をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi
<99キロ超級決勝/20分1R+ExR 10分>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
Def. by 本戦 3-0
ニック・ロドリゲス(米国)
競技柔術界の超新星と、グラップリング界のニュースターによる決勝戦。両者ともこの最重量級では明らかに小柄な部類であるにもかかわらず、並み居るレジェンドたちに競り勝ってこの舞台に上がって来たことは特筆に値する。
序盤はスタンドでの比較的静かな──いなし合いが続いたこの新世代決戦、試合が動いたのは6分過ぎだった。デュアルチがほとんど自ら差し出すようにしてロドリゲスに右足を取らせると、ロドリゲスはすぐにバックに回る。ここでデュアルチは前転して下になり、ハーフガードを取ってみせた。以降しばらく、デュアルチは強力なニーシールドを使ってロドリゲスの侵攻を防ぐ展開が続いた。
11分過ぎ、ロドリゲスは重心を低くしてボディロックを取ることに成功。そのままデュアルチの足を横向きに重ねて畳んでいく。危ないと見たデュアルチが腰を上げて一瞬亀になると、ロドリゲスがすかさずそのバックを狙って飛びつく。
デュアルチが回転したところでフックを入れかて、あわや3点先取かと思われたが、デュアルチはエビの動きで腰をずらしてガードに戻した。この世界では新鋭のロドリゲスだが、決して単なるレスラーではなく、優れたパスガード&バックテイク力を持ったグラップラーであることを証明するシーンだ。
その後、デュアルチは得意のニーシールドから一瞬足を伸ばして距離を作ると、すかさずシットアップしてダブルレッグに移行する。逃れようとしたロドリゲスの背中についてみせるも、両者の体は場外に。
マット中央にて背後からボディロックを取ったところで試合が再開され、デュアルチは亀のロドリゲスにフックを入れようとする。ここで仰向けになったロドリゲスの上半身に密着したデュアルチは、4の字フックを完成し3点を先制したのだった。
その後はデュアルチがバックをキープしつつチョークを狙うなかで時間が過ぎる。終盤残りわずかのところでで、ロドリゲスはついに体をずらして正対し、離れることに成功したが、残りは試合タイムは僅か15秒だ。もう時間がないと誰もが思うなか、ロドリゲスは側転パス狙い。それを対応されると今度は両足担ぎに入り、矢継ぎ早に左右へのパスを仕掛けたロドリゲスは、さらに上から豪快にダイブしてデュアルチとマットの間に滑り込んでのバック狙いへ。それもロドリゲスが体をずらして逃げたところで、タイムアップを迎えた。
驚異の新鋭二人による決勝戦は、デュアルチに凱歌。この大会において必須といえるスタンドレスリングとバックテイク&キープの強さに加え、ブシェシャにさえ侵攻を許さなかったニーシールド&フレームの強固さは特筆に値する。そこから距離を作りテイクダウンにつなげる形でブシェシャを揺るがし、ロドリゲスから決定的なポイントを奪ってみせた。このシンプルな形でのボトムゲームとトップゲームの連携を、尋常ではないほどに強力な足腰と上半身の膂力が支えている。
一方、柔術歴約1年4カ月にしてADCC世界大会最重量級準優勝に輝いたロドリゲス。今年すでにノーギグラップリングにおいて黒帯たちを次々と倒し、旋風を巻き起こしていたこの青帯の上位進出自体は、決して大きな驚きではなかったかもしれない。が、レスリングベースを活かして決して下を譲らない──この大会においてとかく観客を退屈させがちな──戦法を用いつつも、ダイナミックな攻撃を仕掛け続ける姿勢をもって、あっという間に会場人気をさらってみせた点が出色だ。このロドリゲスが名伯楽ダナハーのもとでさらに攻撃のレパートリーを増やしたとき、どのような戦い方を見せてくれるのか、興味は尽きない。
なお3位決定戦は、準決勝におけるロドリゲス戦のレフェリー判定に不満を持ったサイボーグことホベルト・アブレウが棄権。自動的にブシェシャことマーカス・アウメイダが3位入賞となった。2013年の無差別級決勝を争った二人がともに準決勝で新鋭に敗れて3位決定戦に回った点でも、今年の最重量級は時代の移り変わりを感じさせるものとなった。
■ 99キロ超級リザルト
優勝 カイナン・デュアルチ(ブラジル)
準優勝 ニック・ロドリゲス(米国)
3位 マーカス・アウメイダ(ブラジル)