【ONE97】ジェイムス・ナカシマ戦へ、背水の陣──岡見勇信─01─「自分を信用できなくなった」
【写真】今回、その心情をよくも素直に話してくれたと思う。岡見勇信のこういうところが、プロフェッショナリズムだと感心させられた (C)MMAPLANET
8月2日(金・現地時間)、フィリピン・マニラのMOAアリーナで開催されるONE97「Dawn of Heroes」で、岡見勇信がジェイムス・ナカシマと対戦する。
日本人として最もUFCで成功した岡見が、2度目のオクタゴン・チャレンジを終え、ONEにその戦場を移した。ワールドクラスの強さをサークルケイジで見せてくれることを誰も願った。しかし、5月のキャムラン・アバソフ戦では2R1分10秒TKO負けを喫した。
敗北以上に周囲も困惑したのが、リング上での岡見の動きであったことは否定しようがない。世界のユーシン・オカミはこのままで終わってしまうのか……。
崖っぷちの岡見勇信をAbema TVのドキュメンタリー・プログラムTHE WONDERが追った。MMAPLANETでは同番組内でアバソフ戦、ジェイムス・ナカシマ戦に特化したインタビューをすると──若き日、そしてUFCやWSOF時代の岡見と二人三脚で世界を闊歩した磯野元氏と再び練習をしていることが明らかになった。
──まず、ユーシン・オカミ……どうしたのですか。
「ハッハッハッハッハ。ハイ、いやぁ、ねぇ……話せば長くなりますよ、色々と考えると。UFCの最後の試合(2018年12月2日、アレクセイ・クンチェンコ戦)も前回のジャカルタの試合(5月3日、キャムラン・アバソフ戦)も含め、自分が『これが正しい』、『これが自分にとってベストだ』と思う動きを新しくチャレンジしてきて、でも試合で結果が出ない。動きが出ない。
練習では良かったです。練習では凄く良かった。自分がチャレンジしたことは凄く納得しています。でも結果は出ない、内容も良くなかった。全然かみ合わない。歯車が合わない。それが年齢なのか、どうか。色々考えます。ベストだと思っているのに結果が出ない」
──練習でできた動きは、試合で出せているのでしょうか。
「まぁ……そこは難しいです。ただ、試合は練習で積み上げたモノがでる場所だと思っています。積み上げきれていない……という結論に達しました」
──自分がやっていたことが出せなくて負けた、という試合はたくさんあります。と同時に出せても負ける試合もある。岡見選手はどこまで、積んできたことが試合に出ているのでしょうか。
「う~ん……だからね、出し切れる考えでなかった。自分を出し切れるスタイルではなかった。ファイトキャンプにおける過程は満足しているけど、お披露目する場所が試合であり、それが全然出ない。出し切れるスタイルではなかったんです」
──もちろん試合は相手があってのモノです。相対的な強さを争う場ですが、互いにベストを尽くして戦おうとします。キャムラン戦でいえば、得意の小外刈りでテイクダウンをした。そこからが動きがなかったように見えました。なぜ、そうなるのかと分からなかったです。
「結論は出ています。だけど正直もう……インタビューをしてもらってこういうことを言うのは何だけど、ああだこうだと言っても結局は試合が全てだから。あんま本当は言いたくないんですよね」
──最近、そのセリフが多いです。
「本当に(笑)。自分の思っている考えとか、たくさんあるんですよ。たくさんあるんです。あのことがあったから、今はこうしている……とか。アレがあったから、こうしているとか、今はあるんです。自分が成長できているとか。色々と自分のなかで思っているんですけど……結局、試合が全てだから。
負けている、2連敗しているから本当に言いたくないんですよ、こんなこと!! 言いたくないんだけど、これはインタビューですし、プロとして話します。だから、本当に悔しいですよね。やっぱり話したくても説得力がないですよ、今の僕には……本当に。
自分を信用できなくなった。自分が正解だと思っていることが……今まで正解が多かったことが、もう正解じゃなくなっているということが凄く出てきた。この前の試合が終わった時に、自分が全く信用できなくなりました。正直……。それはありましたね」
──私などもやっていることは岡見選手と違いますが、良い時のイメージを残し現実が見られていないことがあります。俺はもっとできると思って。
「それは思わないとできないですよ。自分の実力を出し切ることができれば勝てる。それは今でも自信を持っています。ただ、それを出し切れる動きであったりとか、自分のマインドをどのようにして戦うのかが大きなモノなので。今、それが次の試合に向けてできていると思いながらも、やっぱり不安なんですよ(笑)。
これで合っているのかっていう……。2回失敗してきているから、凄く不安感はあります」
──前回の敗北を経て、その路線を続けて改善しているのか、それとも違う方法論を採っているのか、どちらでしょうか。
「考え方はガラリと変えました。原点に戻るというか、慧舟會スタイルを取り入れて磯野さんとまた一緒にやるようになって、再タッグをお願いしました」
──おお、磯野(元。頂柔術代表。※元慧舟會東京本部所属)さんと!!
「磯野さんは自分の良さを知っているし、色々と話しながら改めて昔の練習をもう一度やっています。最先端のMMAという部分を意識し過ぎていた部分があるので、昔に戻って自分の良さは何だったのかとか色々と考えながら、練習のやり方はかなり変えました。これが正解なのかどうかは……信じているけど、本当に不安。不安ではあります」
──岡見選手が再び磯野さんと練習している。これは鳥肌モノです。
「やっぱり磯野さんとやってきたから、今の自分があります。自分の良さ、自分のこれまでの戦いを一番知ってくれているという意味で、まず磯野さんと話したかったです。自分は一体どうすれば良いのか分からなくなり、『どう戦っていけば良いのか分からないです、磯野さん!!』というところから相談して。
そこから自分が独り立ちしてやっていかないといけないっていうのはあったのですが、ここまで来たら何が何でも勝ちたいし。僕の結果に磯野さんも悔しいと思っていてくれたと話してくれて、チームメイトとも勿論話し合いますが、18歳の時から……ペェペェの頃から自分を知っている先輩の磯野さんと話し合うこととはまたちょっと違います」
<この項、続く>