【Shooto2024#08】修斗世界戦へ。岡見勇信「ファイターは自分が一番大切。そんな自分に限界を感じる」
【写真】年を重ねると覚悟とは、決めるものでなく備わっているモノになる。それを岡見から感じた(C)MMAPLANET
本日30日(土)東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2024#08のメインで岡見勇信が、キム・ジェヨンと修斗世界ミドル級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima
43歳になった本当の意味でのJ-MMA界のレジェンドが、昨年12月に集大成といっても過言でない激闘の末に下したキム・ジェヨンとタイトルを掛けて再び対峙する。
何もやり残すことがないだけ戦い続けてきた岡見には、守るべき家族や育てるべき若い選手たちが存在している。自らの現役生活を自己満足と断言すると同時に、自己中心にならざるを得ない現役生活をいつまで続けるのかを自問自答する。
それでもケージに戻る岡見は、今回の試合に向けて「楽をする」という境地に至ったという。いつ終わってもおかしくないファイター人生、そしてやり遂げてきたことの大きさ。岡見だからこそ行き着いた境地を胸に刻み込んで、MMAPLANETの読者の皆さんには今夜の試合を迎えてほしい。
楽をする方向でやってきました
──元気なように振舞っていただいていますが、やはり疲労感は伝わってきます。
「ぶっちゃけると年齢的にケガだとか、回復力は一つレベルが違う崖が来ています(笑)。そこは感じているんですけど、今回は今までのファイトキャンプとはちょっと感覚が違うんですよ。言葉にするのは難しいんですけど。
ただ自分を追い込むというモノから、こんなこというのはアレですけどチョット楽をする方向でやってきました」
──楽をする……。楽しむではなく、「楽をする」ですか。
「楽しむんじゃない。これは前回の試合を経験できたからだと思います。もっと楽をしようと」
──昨年12月のキム・ジェヨン戦はキャリアの集大成というか、ある意味勝敗以上に岡見選手が最後にしないといけない。そんな戦いができたかと思います。あの時点で、これからのキャリアはどのように考えていたのですか。
「う~ん、『ここで終えても良い』という気持ちはありました。同時に『ここで終えて、本当に良いのだろうか』とも。で、待とうと思いました。どういうオファーが来るのか。オファーもないのか。ちょっと待とうと。ある意味、前回の試合で自分が目指してきた……あの試合に関しては、やらないといけないことが達成できました。
UFCやONE、WSOFでチャンピオンを目指してやってきて、なかなか叶わず。で、修斗に出た。修斗に出た意味は、オンラ・ンサンとの試合で自分の不甲斐なさを痛感して、それを払拭するため。それだけが目標でした。それは内容的には色々ありますが、達成できました」
──正直、ここ数年は相手のアタックでダメージでない倒れ方をしていたように見えました。心折れダウンだと。それって、でももう症状であって。岡見選手に限らず、乗り越えることを求めることは間違っていると最近では思うようになっていたんです。それがキム・ジェヨン戦ではサイドバックやバックからパンチを受けて、折れなかった岡見選手がいた。
「ハイ」
──もう、これで終わりで構わへんやん。有終の美だと勝手ながら思っていました。
「確かに、もう想い残すことはなかったです。本当に終わっても良いんですけどね。でも、何だろうなぁ……。格闘技は難しいですよ。まぁ今回の試合に関しては、妻は反対しました」
──それはそうかと……。ようやく終わったと奥様も思われたでしょうし。
「自己満って言われています(苦笑)。まぁ、そうなんですけど……坂本(一弘)さんから、前回の試合からさほど時間が経っていない時に『修斗のベルトを賭けて戦って欲しい』と熱く伝えてもらったことがあって。そこは素直に凄く嬉しかったです。年末あたりにその話を頂いて、そこはずっと気持ちのなかにありました。
だけどファイターを続けている限り、普段の生活から自分中心になる。それが辛くなってきているんです。EX FIGHTの選手たち、GENで練習しているチームメイト、家族、息子がいてもファイターでいる限り、自分が一番大切になります。そう思っている自分に限界を感じてきています」
──そんな自分に疲れた?
「疲れる。疲れてくるのとは、また違うんですよ。でも、しんどい。試合をして、得らえるモノは何なのかってなるじゃないですか。分かりやすく言えば金銭面。それに家族にも、試合をしてどれだけ還元できるのか。LDHにどれだけ還元できるモノがあるのか。
単純にファイターを続けていれば良いということではなくなってきています。それはンサンとの試合が終わってから、感じてきたことです。自己満をどこまで続けるのかって。息子も10歳になって色々と分かってはいると思うのですが、『横になっているのも、パパの仕事なんだよ』とか言ってね(苦笑)。一般の方々は子供が学校に行く頃には、先に仕事に出ている。でも、僕はずっと寝ている。そんな特殊な生活をしてきて……でも、もう自分中心ではいられなくなってきています。
それは下の選手たちにも同じ気持ちで。もっと、色々とやってあげたい自分もいる。でもファイターである限り、そこまで労力を割けない……」
焦らない。無理にいかない。勝負しない
──それでも戦うと決めたのは、いつ頃ですか。
「9月には正式なオファーが来て、そこからは自分中心に戻るという決意をしてやってきました」
──GENの選手たちから、試合が決めると岡見さんは変わった。昔のような岡見さんに戻ったという言葉を聞きました。
「ハイ。そこの感覚が違うから、良い感じできています。それは楽をしようというのが、上手く行っているからなんです」
──そこには理解が及ばないです。楽をして、そのスイッチに入れるというのは……。
「それが今回はできているんですよ。楽をするために、練習仲間に嫌なことをする。もう焦らない。無理にいかない。勝負しない。このポイント3つをスパーリングでも、忘れずにやっています。
前までの僕の感覚だと、体が持たない。厳しいメニューは課しています。過去5年で最高の強度だと言えます。だからこそ、楽をする。楽の仕方が上手くいっているから、継続してできている。今日が追い込みの最終練習でしたが、良いモノになったと改めて思います」
──押忍。ところでタイトル戦だとしても、相手が前回勝ったキム・ジェヨンになったことについてはどのように思いましたか。
「キム・ジェヨンが相手になるとは全く思っていなかったです。岩﨑(大河)君だと思っていました。それこそが唯一、自分も修斗も盛り上がる相手だったので。ベテランだからこそ、若い選手と戦いたいと思ってきて。岩﨑君一択でした。ただ、まあ彼にも色々とプランがあるだろうし……それでもキム・ジェヨンだと聞いた時は『えぇ? うわぁ、来たよぉ』とはなりましたね(笑)」
──ハハハハハ。
「また、やんのって(笑)。向うからするとベルトが懸かったリベンジ戦、最高に燃える試合ですよ。僕は……『えぇ……』みたいな。でも、だからこ今回の境地になることができたと思います。5Rで、あの試合はできない。あれはできないですよ。逆にあれを5Rやると勝てないです」
──アレで戦わないで、どう戦うと岡見選手に勝機があるのでしょうか。
「それは試合を見てください!!」
試合をしてダメなら、それまで。そこはハッキリさせますから
──ハイ。現実的に戦力を分析する以前に、キム・ジェヨンはタイトル戦はやりたいが3Rにしてほしいと交渉していたという話を聞きました。つまりは彼も5Rは、あの戦い方ができない。
「どういう戦い方で来るのか。基本的にキム・ジェヨンがやることは変わらないと思います。前に出てきて打撃、グラップリングを要所で仕掛けてくる。彼の気持ちが折れることはないでしょう」
──そこに対して焦らないということは理解できますが、無理にいかない。勝負しない。この2つはファイトする上で、一歩間違えると消極的になる要因とはならないでしょうか。
「攻撃してないようで、している──みたいな。そういう感覚です。前は完全に距離を外して、相手の攻撃を受けずに自分の攻撃だけしてポイントを取るという戦いをしていました。でも、それじゃダメだと切り替えて」
──前に出る。戦う。その命題こそ、岡見勇信のMMAの歴史といっても過言でないと思います。その実、どっしり構えている時の強さが発揮されるのか。
「試合ですからね。勝つために戦います。そして、攻めないと勝てないです。以前に戻るわけではなくてダメージを与える、しっかりとポイントを取る。そこは変わらないです。ただ焦らない、無理から戦わない。その絶妙なバランスをいかに創れるのか。それが勝負になります」
──その後に関しては……。
「絶対に聞かれるとは思いました。でも、そこは考えていないです。結果は出ますから。試合をしてダメなら、それまで。そこはハッキリさせますから。自己満をずっと続けているわけにはいかない。それは間違いないです」
■視聴方法(予定)
11月30日(日)
午後6時00分~ ABEMA格闘チャンネル
■Shooto2024#08
<修斗世界ミドル級王座決定戦/5分5R>
岡見勇信(日本)
キム・ジェヨン(韓国)
<修斗環太平洋ライト級王座決定戦/5分3R>
エフェヴィガ雄志(日本)
マックス・ザ・ボディ(カメルーン)
<2024年フライ級新人王決定T準決勝/5分2R>
中池武寛(日本)
シモン・スズキ(日本)
<バンタム級/5分3R>
平川智也(日本)
杉野光星(日本)
<フライ級インフィニティリーグ/5分2R>
須藤晃大(日本)
亮我(日本)
<フェザー級/5分2R>
たてお(日本)
島村裕(日本)