【Special】月刊、青木真也のこの一番:6月─その弐─ジョン・チャンソン✖ヘナト・モイカノ
【写真】ジョン・チャンソンだから可能になる戦いと青木は言い切った (C)Zuffa LLC/Getty Images
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ5月の一番、第2弾は22日に開催されたUFN154からジョン・チャンソン✖ヘナト・モイカノの一戦を語らおう。
──6月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「ジョン・チャンソンとヘナト・モイカノです。ジョン・チャンソンは凄い、もう。決して打たれ強くないと思うんです。加えてディフェンスに優れているわけでもなく、それでも打ち勝っちゃう。綺麗な打撃でないのに、打ち当てることができる。そこはねぇって思っちゃいますよね」
──レンジを上手くコントロールができる日本人選手でも、欧米人と戦うと圧力の前に上手くいかないことも往々にあります。
「そうなんですよ。対して、ジョン・チャンソンは綺麗でなく結局は振りにいっているわけじゃないですか。そこの強さ……強く打てる強さ、拳が最後は返っているという強さがあります」
──それでもジョン・チャンソンのフィジカルは、まだ日本人に近いと考えるのが妥当です。
「ハイ、アジア人ですからね。結局、韓国人選手はクレイジーに打ち合う。そのなかでたまたま生き残った。才能があった人がジョン・チャンソンであると考えるしかないです。で、そうやって考えられるなら、実は日本人も凄く打ち合いに適している人がパーセンテージとしては少なくても存在しているのかもしれない。
それは才能、強いということ。だからジョン・チャンソンは強いんだと思います。そういう選手が、韓国にはいますよね」
──だからといって、全ての選手にガンガン打ち合うことを求めることはできないですよね。
「ガンガン打ち合いをさせると、相対的にレベルは上がらないです。学校教育のように10人全員の成績を上げるという考えでなくて、10人いて1人ができるようになれば良いというやりかたですよね」
──そうすることでジョン・チャンソンのような選手が現れるかもしれない。かもしれないやり方は非生産的です。
「ハイ。逆をいえば、現れないかもしれないので。それはもう、答は出ています」
──というと?
「他の韓国人選手が国内や違う大会で同じようなスタイルで勝ち残っても、UFCでアレができているわけじゃない。そういうお国柄のMMAをしてきて、笑っちゃうのは他の韓国人選手はできていないということ。つまりジョン・チャンソンだから、アレができる。そこに尽きます」