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【DEEP89】DEEP初参戦、昇侍戦へ向け──水垣偉弥─01─「『十分やったな』となりたくなかった」

Takeya Mizugaki【写真】2人目のお子さんの父親、リア充ぶりを発揮する場所での撮影となった(C)MMAPLANET

12日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP IMPACT 89。デビュー15年目を迎えた水垣偉弥が、初出場を果たし昇侍と対戦する。

UFC後期からACBに掛けて、白星に恵まれないばかりかKO負けも続いた水垣は、ACB3戦目ピエトロ・メンガに勝利し、戦中国で大会を開くRebel FCと契約を果たした。

その後、度重なる大会の延期に水垣は契約解除を申し入れ、今回のDEEP初出場となった。先輩や同世代、ともに日本のMMAをリードしてきた同胞が結果を残せなくなった今、どのような想いで水垣はDEEPに出場し、今後のMMAファイター人生を全うしようとしているのかを尋ねた。


──初のDEEPでの試合が迫ってきました。調整の方は順調に進みましたか。

「1年振りの試合なので、正直なところ何が順調で、何が順調でないか自分でも分かっていない部分があります(笑)。でも、やりたいことはできたと思います」

──先ほど、待ち合わせの場所でこちらから手を挙げて、水垣選手も私の方を見ているのに、全く気付いてもらえなかった時は、かなり進んだのかと思いました(苦笑)。

「いやいやいや、進んでいないです(笑)。1年間休めたことをプラス思考で考えていますし、そこは」

──2011年の5月にゴン格でNIPPON CHALLENGEという企画を組み、フライ級がマモル選手、フェザー級は日沖発選手、ライト級の青木真也選手、ミドル級の岡見勇信選手、そしてバンタム級では水垣選手として、各階級の当時の日本のトップ選手に集まっていただき、特写を行ったことがあったじゃないですか。

「あぁ、ありましたね。確か修斗のTDCホール大会のステージ裏で写真を撮って」

──ハイ、個人的にはその号の表紙が柔道家の木村政彦氏だったので怒り心頭になって(笑)。

「アハハハハ。ありました、ありました。『日本を代表する選手が集まっても、小説が上なんか』って怒っていましたね(笑)」

──アハハハ。今でも起こっています。あれから8年、年齢も開きはあったのですが、年少組だった日沖選手、水垣選手、そして青木選手……青木選手はまた一つ波を起こしていますが、皆が揃って厳しい現実に直面してきました。

「う~ん、確かにそうですよね。まぁ、僕も毎回ダウンしていますし……ね。でも8年も前ですか……、あの撮影は。ただ今でも、僕は割と元気なんですけどね。歯車が合っていないだけで」

──キックボクサーと言えなかったり、練習用具を入れる鞄にお皿と煎餅が入っていた時からも、随分と経ちました。

「いや、あのときは本当に練習で疲れてしまっていて、キックボクサーってところで噛んでしまっただけですよ(笑)。お皿と煎餅は練習に行く前に小腹が空いたので、何か入れていこうと思って置いてあったものを鞄にいれてしまっただけで(笑)。もうそれもかなり昔の話ですし」

──いやぁ、その話を聞いたときには20年も前になりますがサステインの坂本一弘代表がリオデオジャネイロの空港の荷物検査で、手荷物から手羽先の骨が出てきて尋問を受けている時と同じぐらいビビりましたよ(笑)。

「アハハハ。坂本さんがなぜ、そうなったのか知らないですが、お皿と煎餅は天然でダメージではないですから(笑)」

──黒豹の名誉のためにも、直前にコパカバーナの有名なチキンの炭焼きのレストランに行っていて、たまたま口の開いているバッグに骨が落ちたということを伝えさせてもらいます(笑)。ただ、水垣選手に関してはずっとセコンドに就かれている安田(ケン)さんも、常にダメージに関して気にされていますしね。

「それを言うなら安田さんも心配ですよ。普段の会話とか、ラグビーの後輩の人と安田さんの会話は、お互いが噛み過ぎて傍で聞いていると、何を喋っているのか分からなくて」

──アハハハハ。

「なんか『シュッシュ、シュッシュ』言っているんですよ(笑)。ラグビーって怖いなって。でも高島さんもカメラのこと眼鏡、眼鏡って言いますし。しかもカメラと眼鏡を目の前において、『眼鏡がない』って鞄のなかを探していたりしていたじゃないですか(笑)。カメラと眼鏡どっちを探しているんだろうって──、どっちにしても心配だなぁって思うこともありましたよ」

──いやぁ……もう世の中がそうなっているということにしいて、このあたりで話を軌道修正します(笑)。今回、プロデビューから14年が過ぎ、初めてDEEPで戦います。DEEPを選んだ理由を改めて教えてください。

「早く試合がしたかった──そこにつきます。Rebel FCでなかなか試合が組まれなくて……8月に大会がある予定が、それから2週間区切りで延期、延期という風な連絡が繰り返された挙句11月ぐらいに今年はない、来年の1月だと。

だから、そこでしっかりと体を休めました。だらだらと試合を頭に入れて練習しているのではなく、もう一旦忘れて、体も精神も一度落ち着かせました。そこから1月もなくて3月開催だと聞かされたときに、『もうここでは試合はない』と決断して、契約を解除してもらう方向で動いてもらったんです。

で、4月にフリーランスになれ、DEEPが5月に試合を組んでくれるということになりました。すぐに試合がしたかったので佐伯代表には感謝しています。ここで試合がなかったら『もう、イィかな』って思ってしまっていた恐れもあるので」

──それは現役生活から退くという判断ですか。

「そういう気持ちになるのが怖かったです。あまりにも試合間隔が空いてしまうと、ただ1年間空いて試合をするプレッシャーも今は感じています」

──それでもDEEPというのは意外でした。

「僕もCAGE FORCEで戦っている頃までは、もう一度デビューした修斗に戻るということを考えていましたが、今はもうそういう気持ちはなくなりました。全然状況も変わりましたし、恩返しとか考えている余裕もないです。ただ、自分の好きなことをやって終わりたい。そういう気持ちなので、日本で修斗、パンクラス、DEEP、どこで戦うのかということにはこだわりはなかったです」

──そして対戦相手は昇侍選手です。

「同い年で、パンクラスでチャンピオンになっている選手だし、相性も良いかと」

──相性が良い?

「僕はストライカーだけど決して打たれ強くはない。打たれ弱いのは昔からなんです。だから打たれる場所ですね。以前は打たれても大丈夫な場所で受けていたのが、効かされる場所を打たれるようになりました。

それもドミニク・クルーズだとか、ルスタン・カリモフという組みを織り交ぜるファイターに見えないところで殴られてしまって。逆にストライカーの方が見えやすいし、反応しやすいはずです。

実際、脳神経外科で見てもらった時も脳は正常で、戦いを続けることで目のトレーニングとかをして反応を高めてきました」

──MMAが始まって25年が過ぎ、米国でもMMAで戦ってきた選手のCTE、慢性外傷性脳症という症状がより深刻に取り上げられるようになりつつあります。

「そこはKO負けが続くと、日本でも権威の病院で検査を受けてきましたし。打たれ弱くなっても、休むとそれは回復します。ただし、受けたダメージがどうなるのか。そこも以前は脳細胞が減ると回復しないという学説だったのが、今は自然治癒するという風に変わってきましたしね」

──いずれにせよ、普通の人生だと殴られて気を失うという経験はしないわけですしね。

「だからこそ、そこは気を付けているつもりだし、脳に異常が出てまでやり続けることはないです。同時に将来的にということも考えて診察を受けてきました」

──頭を殴る、そこを軽視できないということですよね。

「ハイ。そして、練習では実際の部分は分からない。そこは自分の感覚なので、動きと同じで試合が始まらないと分からない部分は残っています。

ただ、今までと全く同じことの繰り返しになりますが、だからこそ昇侍選手の打撃をクリアしないといけないです。上に挑戦したいという気持ちでMMAを続けているので、これからグラップラーになるわけにはいかないですし……。昇侍選手の打撃に負けないこと、そこがありきで選択肢を増やす。それが僕のMMAなので、そういう意味でも昇侍選手は良い相手だと思っています」

<この項、続く

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