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【JBJJF】2018年JBJJFランク1位=井田悟「この素晴らしい競技を広めるため、人生を捧げたい」

Ida【写真】まさにThe Way of Life=ブラジリアン柔術と共にある人生だ(C) TAKAO MATSUI

日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)の2018年男子アダルト黒帯ランキング1位に輝いたのは、パラエストラTBの井田悟だった。

錚々たる面々の中で45歳の柔術家の1位獲得もまた柔術の競技特性を表しているといえるだろう。副賞は2019年の大会エントリー費免除となるため、さらに積極的な参戦が予想される。ランキング1位を獲得した井田に感想や今後の展望を聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。
Text by Takao Matsui


――JBJJFの2018年男子アダルト黒帯ランキング1位に輝きました。おめでとうございます。

「ありがとうございます」

――黒帯ランキング1位は狙っていたのでしょうか。

「最初は意識していなかったんですが、12月くらいに6位になってから狙うようになりました。橋本知之選手や細川顕選手など、トップ選手がたくさんいる中で1位になれたのは嬉しいですし、一方でプレッシャーもありますね」

――井田選手は、パラエストラで指導をされていますが、柔術を始めたキッカケは何だったのでしょうか。

「やはり最初は、UFCでホイス・グレイシーが活躍する姿を見てから興味を持つようになりました。柔道をやっていたので社会人になって何かをやってみたいと思い、雑誌に平直行先生の柔術の道場を見つけて、通うようになりました。かれこれ、20年前ですね。それから、しばらくしてパラエストラ葛西に通い始めました」

――立ち技は考えなかったのでしょうか。

「柔道時代から投げ技よりも寝技が得意だったんです。じっくり攻めることができますし、自分に合っているんでしょうね。でも実際に柔術を始めてみたら、下になると何もできずに辛い思いをしました。練習でも上達せずに、茶帯まで勝てない時期がありました。試合ではバックチョークを極められることが多かったんですが、不思議なことにやられるうちにだんだんとコツが分かってきたんです。今は、下からの方が得意になりましたね」

――そういうものなんですね。

「自分の場合は、たまたまでしょうが、やられ過ぎてバックをとる側の気持ちが分かってきたと言いますか、コツが分かるようになったんです。あとは昨年2月に仕事を辞めたことも大きかったように思います」

――柔術一本で生活しているんですか!? 以前は、どのような仕事をしていたのでしょうか。

「警備会社に勤めていました。生活を考えると辞めるのは不安でしたが、それ以上に不安だったのが、このまま年老いて自分の好きなことに制限がかかったまま過ぎて行ったら、後悔してしまうのではないかという思いでした。仕事に不満があったわけではなく、自分の好きなことをしたいと思ったんです」

――まるで、警察官を辞めてプロの道に進んだ関根“シュレック”秀樹選手のようですね。

「まさに関根さんを見て、影響を受けました。あそこまでの地位を捨ててまで柔術にすべてを捧げる生き様を見れば、誰でも心が動きますよ。年収は2分の1になりましたしオフの時間はなくなりましたが、後悔はまったくありません」

――関根選手が柔術家に与えた影響は、計り知れませんね。

「そのおかげで視野が広くなり、迷路から抜け出せた爽快感はありますね。下からの攻撃が上達したのは、そうしたことも背景にあります」

――今後の柔術家人生について目標のようなものはありますか。

「自分一人の力だけでは難しいとは思いますが、国内のすべてのスポーツジムに柔術クラスが設けられるように働きかけたいですね。柔術は高齢者、障碍(しょうがい)者、引きこもりなどの問題を抱える人たちの生きがいになれると信じています。指導者として、そういう方への支えになれるように努めたいと考えています」

――それは素晴らしいことですね。古くはオズワルド・ファダの時代からブラジルで行われていた柔術に通じますね。

「目の不自由な方でも、道着の掴み方や体の位置や体勢を少しずつ覚えていけば、技はかけられるようになります。自分はそういう指導もして行きたいです」

――選手としての目標は?

「45歳になるので、今年までアダルトで試合をしようと思っています。とくにアダルトに拘りはありませんが、スロースターターなので試合時間が10分あると持ち味が発揮しやすいこともあります。あとはワールドマスターに出場したいですね。今のところ全日本マスター、関東選手権で試合をする予定です」

――ランキング1位は出場費が免除なので、今年はたくさん試合に出られますね。

「できる限り、試合には出て行きたいと思っています。指導をしながらになりますが、楽しくて仕方がないですよ」

――最後に井田選手にとって柔術の面白さは、どういう部分にありますか。

「子供から年配、それこそどんなハンデを抱えている方でも、みんなが平等に楽しめるところではないでしょうか。ノルウェーでセミナーを開いた時も、みんな熱心に聞いてくれましたし、国境も関係ないと思いました。

健康にもいいし、初心者でも安心して取り組むことができるのも特徴の一つですね。この素晴らしい競技を広めるため、自分も人生を捧げて行きたいと思っています」

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