【JBJJF】賞金トーナメント=ガナビー杯出場、山中健也「渡航費を稼ぐために」、「1人優勝でも良い」
【写真】タイトルより賞金──と断言するバウンティーハンター山中(C) KENYA YAMANAKA
27日(日)、東京都墨田区にある墨田区総合体育館で株式会社ガナビーが主催し、日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)が協力する「ガナビー杯柔術国際オープントーナメント」が開催される。
従来のIBJJFの階級とは違い、75キロを境とした2階級で争われる同大会は、黒帯男子は30万円の優勝賞金が懸けられた国内屈指の賞金トーナメントだ。そんななかアダルト黒帯男子75キロ未満級にエントリーしたクラブバーバリアン所属の山中健也も、優勝賞金を狙う有力選手の1人。
世羅智茂、大塚博明、石牟禮仁ら強豪がエントリーする同階級の中で、頂点を目指している。「賞金が欲しいから出場を決めました」と発言する彼には、ある計画が隠されていた。
Text by Takao Matsui
――山中選手は、クラブバーバリアンでインストラクターを務めています。今回は、パーソナルのことも含めてお聞きしたいと思います。
「いやー、こうしてMMAPLANTに取材を受けていただくのは光栄です。今年の目標が、1月にして早くも叶った感じですよ」
――ええっ、そうなんですか⁉ そう言っていただけると、こちらこそ光栄です。よろしくお願いいたします(笑)。柔術の指導をされていること以外は、何かお仕事はしているのでしょうか。
「ええ、今は夜に工場で働いています。夜中1時から朝9時までで月20日間の勤務ですね」
――夜勤の仕事ですか。柔術の練習や指導に影響しそうですね。
「まったくないとは言えませんが、あまり影響はないですね。練習や指導が終わってから仕事に行って、終わったら朝に練習して寝るサイクルですから。慣れてしまえば、なんてことないです」
――なるほど。昼夜が逆転しているだけで、それほどまでには影響がないと。
「いまの仕事は割り切って、金を貯めるために働いているだけなんで」
――いま流行りの“マネー”ですか(笑)!!
「そうそう、マネーです(笑)。米国への旅費と滞在費を貯めているんです。実は一昨年、100万円くらい貯めて2ヵ月半ほど米国に滞在したんです」
――ほう、米国ですか。それは柔術関係の出稽古で渡米ですか。
「ハイ。ルーカス・レプリ先生のジムでお世話になりました。昔からルーカス先生のことが大好きで、よく映像を見て勉強をしていたんです。それで実際に練習をしてみたくなりまして、ノースカロライナ州シャーロッテへ行くことを決断しました」
――2ヵ月半も海外で生活することは簡単ではなかったと思いますが、住居などの環境はどうやって手配したのでしょうか。
「向こうに知り合いがいないので、自分でどうにかするしかなかったんですけど、ルーカス先生のジムに練習したいとメールを送った時に快諾の返事が届き、ついでに住む所があるかどうか聞いてみたら、たまたまジム生が『部屋が空いているから良いよ』と言ってくれたんです。シェアハウスだったので、2人のジム生との共同生活が始まりました」
――それはラッキーですね。生活で困ったことはありませんでしたか。
「言葉は、Google翻訳を使って何とか乗り切りました(笑)。練習中は、身振り手振りで何とかなりましたし、とくに困ったことはなかったですね。ただ、カフェでコーヒーを頼んだんですが、何回、言っても理解してもらえなかったです。発音が悪いんですかね(笑)」
――もしかして“コーヒー”と言いましたか。
「はい、コーヒーです。ダメですか?」
――ダメだと思います。コーヒーと発音して、コーク(コーラ)が届いたという笑い話もありますので。
「そうだったんですね。では次回は気を付けます(笑)」
――それはともかく、ルーカス・レプリの指導はどうでしたか。
「やっぱり、分かりやすかったですね。実際に肌を合わせてみると、その強さも実感できました。レベルの高い選手がたくさんいましたので、ボコボコにされました(苦笑)。抑え込みが強くて、なかなか逃がしてもらえませんでしたし。ケガもあって練習は厳しかったですが、毎日がとても楽しくて充実していましたね。自分のレベルがどんどん上がっている感触もありました」
――具体的にどのような部分が上達されていったのでしょうか。
「パスガードの技術ですね」
──やはり、そこはレプリ流だと!!
「あとはシッティングガードやそこからのバリエーションも増えたと思います。思い切って行って良かったです。会いたい人に会って、行きたい所へ行くことが、こんなに素晴らしいとは思いませんでした」
――ところで山中選手はMMAの試合もしていました。
「もともと自分は中学で柔道をやっていて、高1の時にMMAをやるためにクラブバーバリアンへ入門し、そこで柔術に出会いました。DEEPを中心にMMAの試合を経験しましたが、柔術の方が自分に向いていることが分かりました。
小学生の頃からHERO’Sという格闘技イベントを見て、そこで試合をしている所英男選手が大好きでスピニングチョークの真似ごとをよくしていましたね。寝技をやっている時が楽しく、最終的に柔術を選びました」
――それで今は、柔術中心の生活になっているのですね。先ほどお金を貯めていると話していましたし、『次回は』という言葉もありました。またレプリの所へ行く予定でしょうか。
「はい、そのために稼いでいます。ガナビーカップも、賞金が出るじゃないですか。渡航費を稼ぐために、エントリーを決めました」
――そこもマネーなんですね(笑)。しかしながら、現時点(1月10日)で、エントリーしているのは世羅智茂選手、大塚博明選手、石牟禮仁選手と強豪が揃っています。
「まあ、出てくるだろうと思っていました。これまで対戦経験はありませんが、強い選手と戦うのは好きなので、とても楽しみですよ。世羅選手はノーギでも結果を出されていますし、極めが速い印象があります。大塚選手はワームガードや50/50を使ってきたり、とても粘り強いですよね。石牟禮選手はハーフガードが上手いので、パスできるかどうか試してみたいです」
――マネーを稼ぐには、出てきてほしくない選手ばかりなのでは?
「確かに(爆)。最悪、優勝賞金が半分になる1人優勝でも良いかなと思っていました。でも、自分はあまりタイトルとか興味ないんですよ。対外的には肩書きがあった方が分かりやすいかもしれませんが、どこまで強くなれるのか、レベルアップできるのかが重要で」
――強さの定義は人それぞれですが、タイトル先行ではない考え方を持っている柔術家は、たくさんいるように思います。
「自分は人付き合いが苦手で、クラブバーバリアンに入門してから福本吉記代表を『ボス』と呼べるまでに2年かかりました(笑)」
──アハハハ。
「でも柔術と関わるようになってから、苦手な人付き合いが少しずつ克服できてきたと思います。
単身で米国へ行ったのも、もちろん柔術があったからです。自分を成長させてくれる柔術は、とても大きな存在で、すべてと言っても過言でありません。ジム生のみなさんが柔術を通して楽しそうに取り組んでいる姿を見て、幸せな気持ちになります。ボスや両親、仲間に感謝しながらこれからもチャレンジを続けていきたいと思います」