【ONE82】カデスタムとウェルター級王座決定戦を戦う未知強タイラー・マグワイア「MMAしか経験ない」
【写真】果たしてカデスタム戦では、どのような一面を見せるのであろうか (C)MMAPLANET
17日(土・現地時間)にインドネシアはジャカルタのイストラ・ゲロラ・ブン・カルノで開催されるONE82「Warrior’s Dream」でゼバスチャン・カデスタムとONE世界ウェルター級王座決定戦を戦うタイラー・マグワイア。
7月のONE初出場まで全く無名だったマグワイアだが、サッポを圧倒し、デビュー以来10連勝でONE世界ウェルター級の狙う位置に躍り出た。
サッポ戦の印象から、レスリングの猛者と思いきや──ベースとなる格闘技経験がない、生粋のMMAファイターだというマグワイアに試合直前、初インタビューを試みた。
──いよいよ明日(※取材は16日に行われた)、ONE世界ウェルター級王座決定戦を戦います。今の調子はいかがですか。
「とても良いよ。ゼバスチャンが如何にハードワークをしてきたかは、僕でも分かる。そういう選手とワールドタイトルを賭けて戦えることは光栄だよ。2人ともこの試合に向けて必死に練習してきたから、ファンの前で自分が何者であるかを証明したいと思う」
──実はマグワイア選手のことはONEに出場するまで知りませんでした。そしてサッポ戦を見て、こんな選手がいたのかと非常に驚かされました。そしてあのサッポをテイクダウンし続けたことで、D-1オールアメリカン・レスラーだと勝手に思い込んでいました。
「アハハハ。僕は純粋なレスリングをやったことはないんだ。成長期にテコンドーをやり、茶帯のストライプル2本にはなっているけど、それがベースにあるわけじゃ決してない。サッカーをやっていた時間の方がずっと長いからね。大学でもサッカーをやり、卒業後も何かを続けたかった。競技者でいたかったんだ。
当時はガールフレンドだったワイフのいとこがMMAファイターだったから、アイオワの小さなガレージのようなジムでMMAを始めたんだ。3カ月後にアマチュアの試合に出て勝ってね、この一瞬のためにあれだけのことを費やすことが大好きになった。
だから僕はレスリングをやったこともないし、打撃の練習をしたこともない。ただMMAしか経験がないんだ」
──そこまでピュアMMAファイターというのは、非常にまれですね。そこも驚きですた。
「ボクシングの経験もないしね(笑)。テイクダウンをほめてくれたけど、頭を近づけてレスリングの試合をしても僕は勝てない。ボクシングやムエタイをやっても、僕は勝てないだろう。そして、道着を着て、柔術の練習をしてもパンチから身を守ることはできない。
でもMMAは全ての要素が詰まっている。だから僕はテイクダウンできるし、相手を殴ることができる。サブミッションを極めることができるんだ」
──ではマグワイア選手がテイクダウンの選手だと思っていると大間違いということですね。
「そうだね(笑)。サッポとの試合でもスピニングバックキックも見せているし、僕はコンプリートなミックストマーシャルアーチストだよ。常にハンブルでいたいし、コーチの指導は当たり前として周囲の人の意見に耳を傾け、いつもMMAを勉強してきた。成功するために必要なことをやってきたという自負はあるよ。
そのおかげで、無敗でONEの世界王座を賭けて戦うことができるようになったと思っている」
──では、その世界戦ですがカデスタムを相手にアドバンテージはどこだと考えていますか。
「皆、グラップラー✖ストライカーの試合だと思っているだろうね。確かに僕は寝技に自信があるし、彼の打撃は脅威だ。でも、僕はテイクダウンの勝負に来ているわけじゃない。そのために打撃が存在する。打撃がテイクダウンを助け、テイクダウンが打撃に役立つ。それが徒手格闘技ってもんだ。
ゼバスチャンも僕も立ち技、寝技、レスリング、どの場面でもギリギリの戦いをすることになるに違いない。アギラン・タニとゼバスチャンの試合で、彼は素晴らしいテイクダウンディフェンスを見せた。そして僕はサッポをテイクダウンしている。とても良い試合になるだろう」
──北米MMAでキャリアをスタートさせ、ONEで戦う。何か違いを感じることはありますか。
「僕がONEで戦うきっかけになったのは、ハワイのユナイテッドMMAでリー一家と練習したからなんだ。ハワイのミリタリーで働いている傍ら、彼のジムを尋ねた。そこでONEチャンピオンシップのこと知った。いや、名前は知っていたけど、どういう場所なのかを知ることになったんだ。
リー一家は本当に素晴らしい、アンジェラもクリスチャンも凄く謙虚で人間味がある。人として素晴らしいし、そんな彼らが戦っている場所で自分も試合がしてみたいと思ったんだ。もちろん北米のMMAでも成功を収めたいという気持ちもあったよ。
でも北米のMMAで伸し上がるには、しゃべりが上手くないといけない。それも相手をこき下ろすような、トラッシュトークが必要だ。僕は対戦相手を尊敬していることを知ってもらったうえで戦いたい。無駄口を叩かず、ケージに入って結果で自分を示したいんだ。
僕にトラッシュトークは無理だ。明日の世界戦も、ゼバスチャンという素晴らしい選手、チーム達と正々堂々と戦い白黒をハッキリさせたくて戦う。そのために彼と口論をする必要がないことが、ONEの良さだと思っている。それがトゥルー・マーシャルアーチストの戦いだろう? そういう場所で戦うことを誇りに思っているよ。
もし僕が北米のメジャー・プロモーションで試合をしていたら、タイトル挑戦まで3年は掛かっていただろう。いや、ひょっとしたらそのチャンスすら巡ってこないかもしれない。僕はトラッシュトークができないから」
──ペットボトルを投げることもない?(笑)
「本当に(笑)。そういう必要がない場所、それがONEなんだ。僕の価値観とONEの価値観は合致していると思う」
──UFCは最高の戦いが行われています。ただし、そこにたどり着くまでのやり取りは子供には見るなと、言いたくなるものであることも確かです。
「そうなんだ。僕には3歳の娘がいるけど、彼女がデメトリウス・ジョンソンと撮った写真が家には飾られている。その写真を見ると、幸せな気持ちになれるんだ。DJのような最高のマーシャルアーチストをUFCはぞんざいに扱った。そういうことなんだよ。僕は娘には素晴らしい人間の背中を追いかけてほしいんだ」
──なるほどぉ。マグワイア選手の人となりが伝わってきます。
「本当のマーシャルアーチストとして、強くなりたんだ。それと僕はUSエアフォースで補給・調達という職を持っている。世界では米国空軍の悪いイメージが広められている……。TVでは悪意に満ちたニュースが流れているけど、僕らはいたって普通の人間で必死に生きていることを伝えたい。そんな想いももってMMAで戦っている。
誰も戦争をしたいとは考えていない。ただし僕らに選択権はなく、下された命令に従い生き抜いている。戦争は悪だけど、そこで命を賭けて戦っているソルジャーは悪い人間ではないんだ。それが分かってほしい」
──国のトップの意思と個人の想いは同じではありません。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
「ONEチャンピオンシップの試合を見るために時間を割いてくれることに感謝している。皆のために必死に戦い、ONEが最高の団体になる様を見てほしい。サポートありがとう」
■ONE82対戦カード
<ONE世界ウェルター級(※83.9キロ)王座決定戦/5分5R>
ゼバスチャン・カデスタム(スウェーデン)
タイラー・マグワイア(米国)
<キックボクシング78キロ契約/3分3R>
ニキー・ホルツケン(オランダ)
コズモ・アレッシャンドリ(ブラジル)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
プリシーラ・ガオール(インドネシア)
アンジェリー・サバナル(フィリピン)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
鈴木隼人(日本)
ポンシリ・ミートサティート(タイ)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ルーシラー・プーケットトップチーム(タイ)
ソク・ティー(カンボジア)
<72キロ契約/5分3R>
アンソニー・アンゲレン(オランダ)
ジミー・ヤーボ(フィリピン)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
エリープトゥア・シレガール(インドネシア)
ムハマド・イムラン(パキスタン)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジャオ・ジーカン(中国)
キム・デフォン(韓国)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
ユージーン・トケーロ(フィリピン)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
アドリアン・マテイス(インドネシア)
アジス・カリム(インドネシア)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シェ・チャオ(中国)
ブルーノ・プッチ(ブラジル)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
プトゥリ・パドミ(インドネシア)
ドゥイ・レトノ・ウーラン(インドネシア)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ヒシャム・サムスディン(マレーシア)
シエ・ビン(中国)