【ONE78】松嶋こよみと対戦、マラット・ガフロフ「ダゲスタンの人間は精神力を鍛える必要はない」
22日(土・現地時間)にインドネシアはジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンターで開催されるONE78「Conquest of Heroes」で、松嶋こよみと対戦するマット・ガフロフをインタビュー。
前ONEフェザー級王者はサークルケージで7勝1敗という戦績を残し、うち6試合でRNCにより一本勝ちを収めている。
通算戦績16勝1敗、幾多の猛者を送り出しているダゲスタン出身のガフロフの知られざるMMA以前を尋ねると──彼の強さの秘密を垣間見ることができた。
──松嶋こよみ選手との対戦が近づいてきました。今の体調は如何ですか。
「いつも通り、100パーセントのメンタルとフィジカルで仕上がっている。もう準備はできているよ」
──松嶋選手と対戦するオファーを受けた時、彼のことを知っていましたか。
「1カ月ぐらい前にオファーがあったけど、マツシマのことは知らなかった。そこから映像を探してみたんだが、かなり昔の試合しか見つからなかった。分かったことは、彼はオールラウンダーだということ。ただし、私に勝つことはできない。まぁまぁレスリングができて、パンチには力があったけど、十分ではないよ。
私がこれまで勝ってきた相手は、松嶋が勝ってきた相手とは実力が違う。何よりも私の方がレスリングで上だし、パワーも上だ。グラウンドでもそうだし、打撃はまぁまぁ互角と言ったところだろう」
──マラットの強さは一部の日本のファンや関係者には知れ渡っています。だからこそ昨年の8月にマーチン・ヌグエンにKO負けをし、タイトルを失った時は非常に驚きました。
「あの時は……言い訳になってしまうけど、準備が十分ではなかった。ラマダーン(断食月)の影響があって、しっかりと仕上げることができなかったんだ」
ユーサップ・サーデュラエフ(ガフロフのコーチでマネージャー) あの時は私もウォーミングアップでマラットと組み合った時、その圧力の無さに驚かされた。だから、試合でもテイクダウンをしてから抑え込むことができなかった。もう一度、マラットがマーチンと戦うことがあれば、ぶっ殺してしまうだろう」
──8月と9月では全く違うのですね。
サーデュラエフ ラマダンの期間は毎年少しずつ早くなっているんだ。それでも、ラマダンによって体は弱くなってしまう。
「ただし、今回の試合は大丈夫だ。しっかりと準備してきた」
──まだ日本のファンはマラットのことを、ほとんど知らないと言っても過言でありません。今日はマラットの格闘技歴について尋ねさせてください。
「全く構わないよ」
──マラットのベースはどの格闘技なのですか。
「私が最初に格闘技を始めたのは19歳の時の散打だった」
──19歳、意外と遅かったのですね。それ以前には何かスポーツをやっていたのですか。
「散打を始めるまで、スポーツも格闘技も何もしたことはなかった。ただし、喧嘩に明け暮れていたけどね」
──喧嘩に……。
「それがダゲスタンの文化なんだ。道を歩いていて、誰かこっちを見ているヤツがいれば、それでストリートファイトになる条件は揃っている。向こうは最初からやる気で、こっちのことを見ているのだから。10代の男にとってストリートファイトをすることはダゲスタンの伝統といっても過言でないよ」
──そのなかで散打を始めたのは?
「家に一番近いマーシャルアーツ・スクールが散打だったからだよ」
──あれだけグラップリングが強いマラットなので、意外な感じがします。散打からMMAに転向したのでしょうか。
「散打を始めた次の年……2005年に柔術を始め、柔術とグラップリングが私の最大の武器になったんだ。そして、4年後の2010年からMMAを戦うようになった」
──2005年にダゲスタンでブラジリアン柔術を習うことができたのですね。
「いや私が習ったのはトラディショナル・ジャパニーズ柔術だよ」
──えっ?
「私はトラディショナル柔術の黒帯なんだ」
──それは護身術のようなモノなのですか。
「投げ技と寝技が認められていたけど、寝技はそれほどなかった。柔道と柔術がまざった形で、その時にネワザ柔術という大会があって出場するようになったんだよ」
──ネワザ柔術ですか?
「大会名だよ。レッグロックを始め、数々のサブミッションが許された試合だったけど、サイドやバックマウンドというポジショニングの概念はなかった」
──世界には色々な大会があるモノなのですね……。
「ただ私のトラディショナル柔術のコーチは、その手のコンペティションに選手が出るのを嫌っていたので、私は道場を離れることにしたんだ。とにかく戦いたかったから、ユーサップ達と練習し始め、ブラジリアン柔術やグラップリング、そしてMMAを戦うようになった。
MMAだけでなく散打、サンボ、ハンド・トゥ・ハンド・ファイト、自分が思うよう色々な試合に出た」
──ハンド・トゥ・ハンド・ファイトとはコンバットサンボのようなルールなのでしょうか。
「いや、ロシア軍で取り入れられているスタイルで、試合の時は道着を着て、シンガード、胸当て、そしてヘッドギアも装着する」
──かなり安全面が意識されているのですね。
「ルール的にはサッカーボールキックも認められているし、急所蹴りもOK。そして頭突きも反則じゃなかったけどな(笑)」
──……。
「そしてボクシンググローブをつけて、ケージのなかで戦うんだ。あれはスポーツというよりも、殺し合いのような雰囲気だったな」
──そんな戦いに出ていると、精神力も鍛えられますね。
「ダゲスタンの人間は元々、力も強いし気持ちも強いから精神力を鍛える必要はない」
──なるほど……。そういうなかでRNCという必殺技が身についたと。
サーデュラエフ マラットと練習している人間として言わせてもらうと、それはMMAの試合のなかでバックを取ることが一番安全だからであって、マラットはRNC以外のどのような技も非常に完成度が高い。それだけは言わせてくれ。
「とにかく、土曜日には日本人をフィニッシュする。それが家族へのプレゼントだ」
──う~ん、了解しました。今日は試合の2日前という状況でインタビューを受けてくれてありがとうございました。
「一つ、話したいことがあるのだが構わないか?」
──ハイ、もちろんです。
「私はシンヤ・アオキとのグラップリングゲームに敗れた。彼の戦いに付き合ってしまった結果だ。テイクダウンを奪えなくて、リスクの高い攻撃を仕掛けてしまった。その結果、バックを許しRNCから逃げることができなかった。だからこそ、MAMでアオキと戦いたい」
──そもそも階級が違いますが。
「タイトルマッチなら77キロで戦う。ノンタイトルなら、キャッチウェイトだ。タイトルが掛かっていない試合なら、青木が体重を少し減らして、私は少し増やしキャッチウェイトで戦うべきだろう」
──必ずインタビューで書き記すようにします。それでは最後に日本のファンに一言お願いします。
「私はDREAMのような以前の日本のMMAファンの試合を見ている時の反応が好きなんだ。ただし、土曜日はそんな日本のファンが応援するファイターに勝つことになる」
■ONE78対戦カード
<ONE世界ストロー級選手権試合(※56.7キロ)/5分5R>
[王者]内藤のび太(日本)
[挑戦者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ステファー・ラハルディアン(インドネシア)
パン・シュエウェン(中国)
<キックボクシング・フライ級/3分3R>
セルジオ・ヴィールセン(オランダ)
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
若松佑弥(日本)
ダニー・キンガド(フィリピン)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
松嶋こよみ(日本)
マラット・ガフロフ(ロシア)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ザイード・フセイン・アサラネリエフ(トルコ)
ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
カイラット・アクメトフ(カザフスタン)
マ・ハオビン(中国)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
プリシーラ・ガオール(インドネシア)
ジョマリー・トーレス(フィリピン)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ヴィクトリオ・センドゥク(インドネシア)
スノト(インドネシア)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
アドリアン・マテイス(インドネシア)
アンジェロ・ビモアジ(インドネシア)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
リスキー・ウマール(インドネシア)
エギー・ロステン(インドネシア)