【ONE73】ンサンとの世界戦から11日後の長谷川賢─02─「今回の試合で僕が犯した一番の失敗は……」
【写真】色々と思うところがあった模様。判定だと勝てないという言葉に流されたという部分は印象深い。判定だと勝てないからフィニッシュが必要って、それでフィニッシュできるなら楽なことはない (C)MMAPLANET
6月29日、ミャンマーでオンラ・ンサンの持つONE世界ミドル級王座に挑み、5RにKO負けを喫した長谷川賢インタビュー後編。
負けても「良かった」と言われた試合で、長谷川は何を掴んだのか。こんなところで終われない男の言葉を頭に刻み込んでほしい。
<長谷川賢インタビューPart.01はコチラから>
──ONEは選手もそうですが、我々メディアの担当するPR班もシンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、中国と色々な国籍の人が働いていて、フレンドリーな雰囲気があります。
「そもそも対戦相手のオンラ・ンサンもナイスガイで、僕のことを尊敬してくれて……あんなに殴り合いになるとは思っていなかったです(苦笑)。でも、負けてダメだったところが浮き彫りになったので、これはまた強くなるにためにチャンスをもらったと思うようにしています」
──殴り負けましたが、心が折れたわけではなかったです。
「殴り勝とうと思ったわけではなく、それが勝利への近道に思えた。2Rから殴り合いにいき……でも、1Rの方がきっちりとできていましたね」
──2Rが転機だったと。そういえば3Rにテイクダウンを奪ったとき、このまま勝てるかもと期待したのですが、抑えることができなかったです。
「お互い汗が凄くてスリッピーで。僕もバックを取られたけど、これは逃げることができるとすぐに思いました。汗をかきすぎて、バックから四の字フックで固められない限り逃げられるなって。びしょびしょすぎて、感覚的には濡れているって感じでした。僕の寝技だと抑え込むより、スクランブル合戦になるだけだと」
──ンサンも組みが入ると動きが一気に落ちたとので、あそこをつけばというのは見ていて感じました。
「戦っているときは、それも分かっていなかったです。インターバル中もセコンドから『組みましょう』って言ってもらえていたのに、暑さのせいか上の空でボォっと聞いてしまって……。とにかく、倒そうと思っていました」
──ンサンを見て思ったのは、やはりハリー・ホーフトの存在でした。100パーセントのコーチ業で選手も全幅の信頼を置いている。
「ンサンだけがというのではなく、あのハードノックスにしてもATTにしても、北米のジムにはコーチたちの莫大な経験の蓄積がある。そこで練習をしているという違いは感じていました。
僕らにない知識と経験がある。僕は自分の経験と知識でやっているのが、向こうは複数のコーチの経験と知識があり、さらに何人ものファイターが並行して試合をすることでまた蓄積できる。全く経験値が違ってきます。それが分かっただけでも……僕が知らないことを知っている人たちは日本にいます。だから……これからです」
──あくまでも目指すところは変わらないですか。
「また少し遠くなってしまいましたが、その目標は変わらない。ほんと、今回の試合で僕が犯した一番の失敗は──倒さないと勝てないと思い込んでしまっていたことです。判定だったら100パーセント勝てないと……。誰が何を言ったというわけではないですが、皆が言葉の節々に判定だったら厳しいんじゃないかという感じがあって」
──私はONEに関してはおかしい判定があったときもありますが、でも完全に勝っていた選手が判定負けをしたなんてことはなかったと思っています。判定が覆った試合にしても、どちらが勝ってもそういうものだという試合でした。
「そこを思い込んでしまっていましたね。あの試合で判定までいっても、僕が負けていておかしくはない。だから判定になったら負けるなんてことで、自分の戦いに影響がでたのは一番の敗因ですね。
試合前って、思った以上にナイーブになるんだって知りました(笑)。ひょっとしたら……に影響を受けて。普段から削ったうえでのフィニッシュという練習をしていたのに、何が何でもフィニッシュなんて風になってしまうと……自分の試合にはなっていなかったということだと思います。
あの人のああいう技術があったらなぁと思っても、自分が積み上げてきたモノを試合で出すことが大切なわけで。そういう意味で、心……精神面も凄く重要だと思いました。今回、負けたけどまた強くなれる、そう感じられるのは心の大切さを知ったからですね。逆に心の強さを搾りだすことができなかったことは悔いが残ります」
──とにかくこの敗北を生かして、次ですね。その次ですが、どれぐらいで再起戦を考えていますか。
「治れば……打撃は少し休みますが、練習は来週にも再開しようかと思います。打撃と組み、そしてどうコーディネイトしていくのか」
──階級もミドル級が適正なのか、ウェルター級なのか。相手の大きさが変わってくるので。
「ミドル級自体、あまり選手もいませんしね……。そこも含めて考えないといけないです。ただ、この5週間は充実していましたし、試合中もドキドキして面白かった。だからこそ、もう一つ出したかった。負けて内容が良かったと言ってもらえるのは……それはそれで嬉しいのですが、やはり違う」
──勝負ごとは勝たないといけないです。
「ハイ。勝って、試合が良かったといわれたかったです。だから、もっと冷静になりたいです。それができていれば……殴っても殴られないし、組めた。柔道の投げも首相撲だってできたはず。こうやって振り返ると、自分の持っているモノを出さずに負けた試合です。
それに加えて蹴りがあることでパンチももっと当たるだろうし、もっと組めたはず。ムエタイもやっていきたいですね」
──5万ドルのボーナスを上手く活用してください(笑)。
「何年分も殴られたわけですし(苦笑)。ボーナスをもらえたことは嬉しいですが、5万ドルで騒ぎ過ぎです。UFCだったら何人いるだって、そんなところで満足はしていないです」