【ONE76】シャノン・ウィラチャイと対戦する青木真也─02─「自分の価値は絶対に下がらない」
【写真】点でなく線という考えは、振り返るのではなくこの先に関して言えるのが青木だ (C)MMAPLANET
27日(金・現地時間)、フィリピンはマニラのMOAアリーナで開催されるONE76「Reign of Kings」でシャノン・ウィラチャイと対戦する青木真也インタビュー後編。
Ameba TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が、青木を追ったなかで、MMAPLANETでは青木にウィラチャイ戦、そしてONEがリングを導入したこと、さらにボクシングの世界王者の登場をMMAファイターとして想うところはないかを訊いた。
<青木真也インタビューPart.01はコチラから>
──青木選手の作品というのはケージの中だけを指しているわけではない?
「トータルしてプロモーションもそうだし、全てをひっくるめてですよね」
──良い作品を創るため、ウィラチャイとはどのような試合をする必要があると思っていますか。
「始まってから終わるまで、終わってからも点じゃなくて線にする自信はあるし、格闘代理戦争も含めて全部巻き込んで人に見てもらえるものにしたいなと思っています。
試合だけで切り取っていないからこその魅力だと思うので。多くの選手は試合だけを見てやっている。僕はそこだけを見てやっているわけじゃないから、そこに価値や魅力がついてくると思っているので」
──5月はアンジェラ&クリスチャン・リーがイベントを引っ張りました。今回はフィリピンでケビン・ベリンゴンがマーチン・ヌグエンとメインで暫定バンタム級王座を賭けて戦います。青木真也の現在のポジションをどのようにとらえていますか。
「それは本当に何とも思っていない、本気で。与えられた仕事だから。自分がセンターにずっといられるわけじゃない。こういう役回りは絶対に回ってくる。要はずっと4番を打っていられるわけじゃなくて、7番や8番を打つときも当然ある。その時に与えられた仕事を一生懸命にやるだけです」
──それでもONEのメイン級のイベントへの出場は続いています。
「マラット・ガフロフとのグラップリングはインドネシアのジャカルタでした。主要マッチメイクでない大会でも、試合をすることは十分に楽しかったですし、そこはそこで完結している。5月の試合でも達成感はありましたから、そこも違った物差しで見ています。いつか老いていくことも分かっているし、その覚悟もできています」
──プロモーションの看板を背負って、大会に注目が集めるという役割を担ってきた時期がありました。ONEのなかで、中心になる活躍を見せる。あるいは多くなった日本人選手の中で、青木真也は違うんだというのを見せたいという気持ちは?
「日本人選手に対しては、申し訳ないぐらい越えられない壁があると思っています。格闘技だけしか知らないヤツに負けるわけにはいかない(笑)。それぐらいの差はあると思っているし、今ある程度注目されることがあって一生懸命プロモーションしてもらっていることは凄く幸せで、やりがいのある仕事です」
──試合に直結する部分ですが、今回の試合はケージで行われるのですか。
「ハイ、ケージです」
──ONEではリングでのMMAも始まりましたが、リングかケージが気になるということないですか。
「どっちでも良いと思っています。ドーピングのことでもそうだけど、プロレス的というか猪木的なんです。何でも良い」
──どちらでも良くても、戦い方は変わってきますよね。
「変わってきますね、多少は。極論、強い方が勝ちますから。それすらひっくり返す強さがあれば良いわけで。僕でいえばギブアップを取れば良い」
──強さを争う場としてケージもリングも違いはない?
「あっとしても仕方がないこと。そんな目先の……勝った負けたを気にしてやってこなかったですね。優位に働く、不利に働くということはあっても、路上で試合をしろといわれてもやりますからね。それがファイターであり、レスラー、ナックモエという仕事だと思います。
リングかケージか……そんなこと言っているのはアマチュアでしょ。僕から言わせると(笑)。そんな小さなことを気にしているのはアマチュア。ただし、リングで試合をしたら『ケージだったら』という「たられば」は付いて回ります。勝った方も負けた方もつく。「たられば」はリングだったらもあるけど、リングはマイノリティだからケージだったら──は付いて回る。
だったらがつくのって、お互いにとって良いと思うんだよな。だってお互いに落ちないから。両者リングアウトみたいな。もう1回、そこに創造が生まれる。グレーゾーンだから。その意味で、一つの逃げになるから白黒つける世界で、「たられば」がつくのは良いかもしれないですね。
和田君が負けたことで、フルに落ちることはない。負けたけどケージだったら──といえるように」
──WBC世界スーパーフェザー級王者シーサケット・ソー・ルンヴィサイが10月のバンコク大会でメインを張ることに関しては?
「ONEがボクシングのプロモーションになるのは、商売のことだけ考えると凄いこと。日本だったら村田諒太を出すということですし。ボクシング・ビジネスに介入するのはアッパレだと思います。
ただ僕がやっているMMAとは全く違う領域の話なので、経済ニュースを読むのに近い感じですね」
──MMAのビジネス的価値は、スーパーシリーズも含めONEのなかで落ちたという捉え方もできます。
「勝てないですね。タイでムエタイとボクシングの関係性がどうなっているのか分からないので、そのあたりのことは見てみたいと思います。
実際キック自体の受けは良いわけだし、今の7-3の比率が半々になっていくこともあるかもしれない。もっとキックの比率が上がることもありえます」
──MMAファイターとして危機感はありますか。
「う~ん、大前提として物凄く多くの人に自分の試合を見てもらおうと俺は思っていない。凄く愛のある一定層のお客さんがいれば良いと思っているので。自分がメインストリームに歩くというイメージは持ってないから、そこでの勝ち負けは気にしないです。
何より僕はカルチャーとしてのムエタイが好きなので。薄暗いタイのスタジアムの魅力に憑りつかれているから、さいたまでやっているキックだったり、RISEには惹かれない。それは寝技も同じでブラジル人のカルチャーだったりするから惹かれている部分は凄く大きい。
今は皆が揃ってストライキングのMMAで、グラップリングのMMAはほぼONEにおいてもない。だからこそ、自分の価値は絶対に下がらない。
自信はありますよ。だから未来の自分の輪郭を示せるような試合にしたいと思います。一生懸命、ケガのないようにやりたいです!!」