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【AJJC2018】2年ぶりの全日本選手権出場、関根秀樹「自分は柔術家ですから、出場して当然です」

Sekine & Satoshi【写真】強さを維持するため、強くなるために欠かせないホベルト・サトシと (C) BJKEN

8月5日(日)、東京都大田区にある大田区総合体育館において「第19回全日本ブラジリアン柔術選手権」が開催される。

各階級で日本一を決める同選手権には、2年ぶりに関根“シュレック”秀樹が参戦。アダルト黒帯ウルトラヘビー級&オープンクラスにエントリーしている関根は、ケガを乗り越えて完全復活を目指す。
Text by Takao Matsui


――久しぶりに柔術家の関根選手を取材するように思います。プロに転向されてからONEの他にも、巌流島のイベントにも出られていましたね。

「5月にも大会が予定されていたようですが、延期になっちゃいましたね。道着を着用しての試合は、とても戦いやすかったので残念です。打撃を一発、二発打たれても、懐に入れば掴まえることができるので、気持ち的には楽な競技です」

――昨年のムンジアルでの出場が長引いてしまっていました。

「もともとヒザは悪かったんですが、ムンジアルで試合をして半月板を断裂しました。手術で小指2本分くらいの骨を除去しました。繋ぎ合わせると復帰までに1年くらいかかるらしいので、除去することを選択しました」

――リハビリは大変だったのではないですか。

「ムンジアルが終わって、6月の最終週くらいに手術をしまして、2カ月から3カ月間はリハビリに専念しました。それまでヒザを捻ることも含めて、体重を乗せることができませんでした。テーピングでヒザを固めたり、サポーターをつければ、何とか試合をすることができましたが、それまでは不安で仕方がなかったですね」

――では手術をして、不安は解消されたということですね。

「ムンジアルの前からヒザが悪いことを知っていたサトシからは、『立ち技ができないと重い階級では勝負にならない』と言われていました。立ち技ができなくても、ガードを磨くチャンスだと思うようにしていましたが、確かに上も下もできないと世界では通用しないことがよく分かりました。ちゃんと治そうと決意しました」

――手術後は、大会にも出場していましたね。

「リハビリが終わった後、9月から復帰しました。巌流島、ADCC、ONEとコンディションが悪い中でも、それなりに戦うことができました」

――そんな中で、今年は全日本選手権へ出場を決めた理由は何だったのでしょうか。

「出場を決めた理由ですか……、単純に日本で一番、権威のある大会だと思っているからです。実際、誰が日本一なのかを決める大会ですので、出ていなければそれを名乗ることはできません。自分は柔術家ですから、出場して当然です。前回は、ケガで出られなかったので」

――警察官を辞めてプロの格闘家となっても、出場費を払うアマチュアの大会に出場したいものなのですね。

「柔術は、自分の根幹を成すものです。MMAもやりたい競技ですが、やはり柔術が一番です。MMAは覚悟を決めて出るもので、柔術はライフワークですね。出場できるものならば、
できる限りいろいろな大会にエントリーしたいです。好きなことに出ない理由はないですから」

――プロになっても価値観は変わっていない?

「全日本選手権は、日本一を決める大会。アジア選手権はアジア一、ムンジアルは世界一を決める大会です。一つひとつチャレンジしていきたいです」

――優勝すれば、2年ぶりの王座返り咲きになります。

「2年前に優勝していますけど、その間にも新しい黒帯は生まれているわけで、レベルは毎年上がっていると思います。過去の記録は関係ないです」

――黒帯ウルトラヘビー級は、まだエントリーはありませんので、オープンクラスがメインになりますね。出場メンバーは、これまで対戦してきた強豪が揃っています。

「高本裕和さんもいますね。過去に勝ったことはありますが、ギリギリに勝てた印象があります。柔道ベースの選手だと思っていましたが、ずっと出場を続けていて、スイープのガードも堅いし、足関節も仕掛けてくるようになりました。

また中村勇太選手はガードが上手で、昨年の全日本選手権も惜しい所まで行きましたね。できれば細川顕選手やレアンドロ・クサノ選手にも出てほしかったです」

――名勝負男クサノ選手は気になりますか。

「強いですよね。怖さがあるし、楽しいです。いつ一本を取られるかというスリルがあるし、ヒザを壊されかけたことがあるので、また対戦してみたいですね」

――怖いけど、楽しい?

「楽しいですよ。短期的に考えれば、優勝できるかできないかは大きなことですが、長い人生で考えれば、強豪と対戦する経験は何よりも幸せなことです。20代の時は、楽な相手と戦いたいと思っていましたが、自分のようにエキストララウンドというかアディショナルタイムに入った選手は、強豪と対戦したいと思うものです。次の試合で終わる可能性が現実としてあるわけですから」

――では警察官を辞めたことは、後悔していないと。

「まったくしてないです。しみじみ考えてみても、あそこで辞めて良かったです。いつも言っていますが、一回しかない人生ですから、一番好きなことをやれるのならば、それをやることが何よりも幸せです。警察官の仕事は、大変でしたが誇りを持ってやっていました。

今でも警察官の仲間とご飯を食べにいくこともありますし、仕事も好きでした。でも、もっと好きなことが格闘技だったんです。試合も自由に出られるし、道場へ毎日、行けることは幸せですよ」

――道場の日々の過酷な練習が幸せですか。

「辛いこともありますが、楽しいですね。試合前のサトシの相手は、とくに大変ですよ。殺気立っていますし、本気で攻めてくるサトシの技を凌ぐのは楽しいです。連続で3、4本頼まれると、認められた感じがして嬉しいんですよね」

――サトシ選手の本気を受け止められるのは、関根選手くらいですよ。

「遠慮なく、ガンガン来ますね(苦笑)。大きな声をあげたり。いいスイープやパスを決めたいようで、7、8分凌ぐとドラゴンボールのスーパーサイヤ人のようになりますよ。ボンっという音が聞こえて、オーラが広がるような感じです」

――それは怖いです。

「でもサトシとスパーリングをしていると、自分の調子のバロメーターになります。昨年12月に、彼がブラジルへ帰国したことがあったんですけど、しばらく一緒に練習していないだけで、体力が落ちたことが分かりました。自分にとってサトシは大きな存在です」

――サトシ選手は、クインテットでも試合をしています。関根選手は興味ありますか。

「自分も毎回、会場に行っていますが、それは興味ありますね」

――チーム・ボンサイで出場したら、最強かもしれませんね。

「マルキーニョス先生、サトシ、クレベル・コイケ、自分、あと1名が加われば可能ですね。自分としてはマルキーニョス先生やサトシの強さをもっと広く認知されるようになれると嬉しいです。団体戦はやっていても面白いので、文化として根付ける可能性も含めて夢を与えてくれる大会になってほしいですね」

――競技としての難しさはありますか。

「いかに自分を殺せるかがポイントになるかなと思っています。興行として成り立つのかは分かりませんが、引き分けがポイントになってくるような印象を持ちました。ポイントゲッターが勝たないと優勝できないと思いましたので、そこが勝敗をわける鍵ですね」

――かなり詳細に見ていますね。最後に全日本選手権後の予定を教えてください。

「ONEの大会への出場を予定しています。ケガの関係で試合を延期してもらっていますので。あとは、アジア選手権ですね。ポイントを取って、ムンジアルへの出場を考えています。ヨーロピアンも出場したいのですが、ONEの予定次第で判断します」

――まだまだアディショナルタイムは、続きそうですね。活躍を楽しみにしています。

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