【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その壱─ベンソン・ヘンダーソン×ロジャー・フエルタ
【写真】フエルタがベンヘンに対し、“頑張り”を見せた(C)BELLATOR
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一番。最初の試合は4月6日、Bellator196からベンソン・ヘンダーソン×ロジャー・フエルタの一戦を語らおう。
──4月の青木真也が選ぶ、この一番。まず1試合目はどの試合になるでしょうか。
「ベンヘンとロジャー・フエルタの試合ですね。フエルタはもう10年以上も前にスポーツイラストレーテッド誌の表紙になったり、凄い人気があったけどケニー・フロリアンとグレイ・メイナードに負けてUFCと揉めて辞めた。
そしてベラトールに移籍したら、最初はヒジ十字固めで勝ったけどパット・カーランとエディ・アルバレスに負ける。そこからONEでチョロッとやって。ドバイでPhoenix FCに出たと思ったら、今回はベラトールに復帰した」
──ベラトールとは単発契約だと聞いています。
「ハイ。レジェンド枠の試合だったと思うのですが、ベンヘンとフエルタの立ち姿が画になっている。凄く良かったです。あのメキシコ国旗と同じ3色の衣装でケージに出てくるのも華がありました。あれでビジネスが成り立つのも良いことだし。
試合的にはベンヘンが強い。一段上で強かった。で、最初に左のパンチ、左の蹴りを効かせると『もう間違いがない』という確信があったのでしょうね、派手に勝とうというが見えるようになりました」
──その結果……。
「フエルタが頑張った。あれ、ONEの時のフエルタだとすぐに寝たと思うんです。やっぱり欧米人って、欧米では頑張るというのはあると思いませんか?」
──絶対にあると思います。大会自体はハンガリーでしたが、パラマウント・ネットワークの中継で米国で視聴される試合、フエルタは諦めずにしんどい戦いを実行していました。
「そうですよねっ!! やっぱり自分を知っている人が見る試合は意地見えて、寝ない。アリエル・セクストンとの試合なんて投げていたし。フィリピン人とかタイ人がボクシングで日本に来るまでじゃないですけど、勝てないと投げるのがONEのフエルタでしたから。
そんな淡泊な感じだと緊張感がなくなるのですが、今回の試合はソレがなかったです。気合が違うというのは感じました。この1試合で、また仕事が回ってきますよね」
──ということになるのでしょうね。
「自分の名前を維持する。そういう試合ですね。もう、米国のファンがフエルタのことをどれだけ知っているのかは分からないですけど、健在ぶりをアピールする気合を見せていました」
──UFCが一番の舞台というのは変わりませんが、ヒエラルキーとしてUFCがトップでない環境に身を置いて、そこからまた北米に戻る。それも業界の広がりと捉えることができるのではないでしょうか。
「MMAの市場が2つ、3つと多様性を見せて来たということですね。UFCやベラトールという米国リーグの試合、ACBやKSWの独自勢、ONEとかROAD FCもUFCとは違う世界観を持っていますよね。
そのリーグによって、存在するメインイベンターが強くなっている。独自のファイターの養成方法も出てきています」
──その別リーグのONEに青木選手は属しています。
「ONEは違う世界になろうとしていますよね。サッカーに対するフットサルのような。ACBの世界やKSWの世界もそう。ただし、UFCは全てをカバーできる強さを持っています」
──そんなフエルタの意地をギロチンで斬って落としたベンヘンについては?
「ベンヘンは楽しそうですね」
──それでもトップ戦線で戦い続けようという意地も感じられます。
「それは皆そうですよ。そこも含めて、楽しそうです。Polarisでグラップリングまでやってしまうわけですからね」
──UFC後も上がった感がなく、バリバリの第一線にいる印象を残しています。楽しむという点、第一線への拘りという点で青木選手自身に通じる部分があるということでしょうか。
「あぁ、僕と近い文脈ですよね。もちろん、彼のやっていることの方が上だとわきまえていますが。僕自身も戦うこと、毎日練習して作っていくことが楽しいから。そういう似た匂いがします。フエルタも大きな意味でいえば同じ。何だかんだといって、MMAを辞めていない。辞めないということが、イコール好きだというわけでは決してないとは思いますが、フエルタもベンヘンも、僕もMMAが好きなんですよね」