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【POUNDOUT03】激闘王、約4年振りのMMAへ――石橋佳大「スイッチが入るか、効いちゃって終わるのか」

【写真】MMAから離れて雰囲気も優しくなった感のある石橋——だが、試合でスイッチが入ればどうなるか(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(土)、千葉氏中央区のTKPガーデンシティホール千葉で開催されるPOUNDOUT03で、石橋佳大が岡田達磨と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2022年7月、石橋は修斗のケージで小林聖人を相手に引退エキシビションを行い、約13年に及ぶMMAファイター生活に一度はピリオドを打った。修斗では「激闘王」と呼ばれるほど毎試合、大激闘を展開し、2016年には安藤達也と岡田遼を下して環太平洋バンタム級王座を獲得している。

以降、ここ数年はグラップリングマッチには出場していた石橋だが、今回POUNDOUTでMMAに復帰することに。なぜ石橋は再びMMAを戦うことを決意したのか――そこにはプロモーター高谷裕之氏や仲間との絆とともに、ファイターとして忘れられない気持ちがあった。


高谷さんから『POUNDOUTに出てほしい』と言われた時、自分もそういう大会を盛り上げることができたら――と思いました

――公式戦としては2022年3月、石井逸人戦以来のMMAを戦う石橋選手です。

「数年振りのインタビューで緊張しますね(笑)」

――打撃ありの試合は約4年振りとなります。まずMMA復帰の理由をお聞きする前に、なぜ4年前に引退を決意したのか。その理由から教えてください。

「あの頃には、もうバンタム級の体重をつくるのが相当しんどくなっていました。最後のほうは水抜きで8キロぐらい落としていて。最後の石井戦は1Rが終わった時点で体が動かなくなっていて……これ以上バンタム級で良いコンディションをつくるのは無理だと思いました。

だからといってフェザー級に上げて、ベルトに向けてまたイチから並び直すほど自分の体は――試合で散々打たれてきたじゃないですか。だから自分が打たれ弱くなっていることも実感していましたし(苦笑)」

――激闘王のニックネームどおり、まさに激闘の連続でした。それだけダメージも蓄積されていたのでしょうか。

「練習の段階で打たれ弱くなっていることは感じていました。マススパーで少し当たっただけでも効くようになっていて」

――……。

「もともと『石井戦で勝てば次はタイトルマッチ』という話を、うっすら聞いていました。そうでなくても自分としては勝ったらベルト挑戦をアピールして、本当はそのタイトルマッチを最後に引退するつもりだったんです。でも負けてしまったので……」

――なるほど。MMA引退後もグラップリングの試合に出場していたのは、打撃がない試合であれば続けていきたいという気持ちだったのでしょうか。石橋選手は柔術がベースでもありましたし。

「はい。ジムで指導は続けていましたし、グラップリングでも何でも試合の目標がないと、自分の生活がだらしなくなってしまうので(笑)。何かしら目標は持ち続けていきたいと思って、グラップリングの試合には出場していました」

――そんななか昨年8月にGrachan福岡大会で、野瀬翔平選手とグラップリングマッチで戦っています(野瀬が1R、腕十字で勝利)。その頃から石橋選手がMMAに復帰するという話も伝わってきていました。

「フェザー級で復帰するためのコンディション調整も含めて、あの試合からフェザー級に上げました。実は去年のPOUNDOUT02で、MMAのお話を頂いていたんです。どうしてもスケジュールが合わずに出られなかったけど、そのあたりでMMA復帰は考えていましたね」

――そうだったのですね。特に高谷裕之さんが石橋選手のMMA復帰を希望していると聞きました。

「アハハハ。自分は高谷さんのファイトファームでトレーナーとしてお世話になっているし、ファイトファームの選手と練習することもあります。だからPOUNDOUTって自分から見れば、一種の身内のお祭りのようにも感じられていて。高谷さんから『POUNDOUTに出てほしい』と言われた時、自分もそういう大会を盛り上げることができたら――と思いました」

自分はいかに疲れず相手を制圧するかという練習になっていました。でも……

――とはいえダメージの面で不安はありませんか。4年前はダメージの蓄積を感じたことが、引退を決意する要因の一つでもあって。

「不安はあります。引退してから打撃ありのガチスパーは一切やっていないので。自分が今どれだけダメージが抜けているか、逆に打たれ弱くなっているかどうかは分からないところですね」

――打たれ弱くなったと感じられる要因に、減量の問題もあったのではないでしょうか。たとえ試合内容が激闘にならなくても、それだけ減量していれば、骨や内臓はもちろん脳にも影響が及ぶはずです。

「そうですよね……。昔は水抜きで落とす量も少なくて、試合当日は水抜きで落とした分プラス何キロか戻っていたんですよ。でも最後のほうは水抜きで落とした分も戻らず、全身筋肉痛みたいな状態で試合をしていました」

――MMAから離れ、減量することも少なくなった。しかしジムで体は動かし続けている。試合のための練習と、指導するなかで体を動かすことも大きく違うかと思います。

「それは違ってきますね。現役の頃は、とにかく自分を追い込む練習をしていました。自分が疲れる練習です。でも引退してから若手や後輩の相手をする時に――みんな若くて動き続けるから、自分はいかに疲れず相手を制圧するかという練習になっていました」

――MMAを一度引退したあと、指導していくなかで新たに気づいたことはありますか。

「自分は前に出続けるタイプだったので、引くことを覚えました。今は『絶対に激闘はするな』と指導しています(笑)」

――!!

「昔だったら、どんどん前に行けと言っていたと思います。そういうゲームメイクの部分は考え方が変わりましたね。

僕が参考にしているのは、ファイトファームで指導している田村彰敏さんなんですよ。昔はよく田村さんとガチスパーをやっていましたけど、今の今の田村さんはドリル、打ち込みを丁寧に何度もやっていて。選手としても、指導者としてもすごく参考になっています」

――すると自身の練習スケジュールや練習内容も大きく変わってきたのではないですか。

「基本は自分が所属しているZEEKジムで、スパーリングとかミット打ちをやっています。それと週2~3回ぐらいファイトファームのプロ練に参加させてもらって、そこで自分を追い込んでいくという感じですね。

復帰すると決めてからはMMAスパーの比率も多くしてきました。でも一番変わったのは……野瀬選手とのグラップリングマッチまで、先ほど言ったような疲れない練習をしていたんですよ。あの試合は、もちろん実力差で負けたのはそうだけど、自分も疲れない試合をしてしまった面がありました」

――というと?

「組んでみると野瀬選手の圧力は強かったです。と同時に――1R残り10秒で極められたんですけど、自分は1R残り1分になったあたりから『『2Rになったら自分から行こう』と考えていて。そういう考え方の差は大きいと思いました。

試合が終わったあと、元津田沼道場で今はピットブルジムを主宰している小林聖人さんからも言われたんです。『そういうところから考え方を変えて、疲れる練習をしなきゃダメだよ』って。本格的に練習内容が変わったのは、そこからです」

激闘になるかもしれないし、静かな試合になるかもしれない。ただ、自分が勝つパターンであれば、静かな試合にならない

――確かに以前MMAを戦っていた時の石橋選手であれば、『2Rから行こう』という考えはなかったと思います。続いて11月にはGrachan北海道大会で、ハワード颯真選手を下しました。

「試合自体は相手のほうが階級も下だったこともあって、早めに一本を取ることはできました。ただ野瀬戦とハワード戦は練習の時から考え方も違っていて。とにかく自分から動いていく。自分から試合をつくっていくことを意識して練習していました。内容的に、自分の中で勝利以上のものはあったと思っています。やっとMMAを戦うための下地が固まったかな、という気持ちで」

――以前と比較して自身の動きについては?

「練習の中で動きは良くなっています。でも一度引退する前と比べて、昔できたけど今できないことが増えてはいますよね。それも年齢で仕方ないし、その中で自分がどう動くかを考える良い機会になっています。

この期間でもMMAというもの自体が大きくレベルアップしているし、以前と比べて判定基準も大きく変わっているじゃないですか。その中で自分がどういう試合をするのか、というのは今でもイメージできていなくて。それはもう試合が始まってから、考えながらやろうかなと思っているぐらいです」

――そのような状態でも、もう一度MMAを戦う最大の理由は何ですか。

「……自分の中に『もう一度MMAをやりたいな』という漠然とした気持ちがありました。高谷さんの興行を盛り上げたいし、それと今は自分のジムにも『MMAファイターを目指したい』という10代の子たちがいるんですよ。彼らに試合に向けた取り組みとか、どれだけの覚悟でケージに向かうのかという面を見せたい。

そういう理由は、いろいろあります。でも結局は、まだ体がギリギリ動くうちに人前で試合を見せたい、という気持ちが大きいのかなって思います。自己満足、承認欲求みたいなものですよ(笑)」

――アハハハ。一度あの舞台を経験すると忘れられないものなのでしょうね。

「そう思います。ずっと続けているファイターの人たちって、こういう気持ちなのかもしれないって分かりました」

――そのMMA復帰戦の相手、岡田選手の印象を教えてください。

「レスリングは少し巧いのかなって思います。でもこういう言い方をしたら申し訳ないけど――国内の平均的な選手かな、と思っています。なにせ4年間マトモな打撃をもらっていないので、もし一発もらった時に自分がどうなるか次第ですよね。そこでスイッチが入るのか、効いちゃって終わるのか――それ次第ですね。あとは2Rしかないので、自分から展開をつくっていきます」

――周囲からは激闘を期待されるのではないですか。

「はい(笑)。でも僕は修斗時代から、激闘をやりたくて激闘になっていたわけではないので(笑)。激闘になるかもしれないし、静かな試合になるかもしれない。ただ、自分が勝つパターンであれば、静かな試合にならないのでは、と。相手が前に出て来てくれたら僕も前に出やすいので、ガチャガチャした試合になったら僕に分があるかなって思います」

――ちなみに勝利した時、あの言葉は出るのでしょうか。

「アハハハ! ポジションゼロ、ですか。やっぱり言ったほうが良いですよね。

今の人たちが知っているかどうか分からないけど、4年前までずっと僕の試合を観に来てくれていた人たちが今回も来てくれるんです。なかにはVIP席を買ってくれた昔のファンもいて――『また石橋選手のMMAを観ることができるのは幸せです』と言ってくださる人もいました。そうして今も応援してくれている人たちのために、しっかり勝って『ポジションゼロ!』と言いたいですね」

■POUNDOUT03対戦カード

<フライ級/5分3R>
山内渉(日本)
ダニエル・アグレイ(米国)

<バンタム級/5分3R>
榎本明(日本)
徳弘拓馬(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
斎藤翼(日本)
大搗汰晟(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
石橋佳大(日本)
岡田達磨(日本)

<キックボクシング60キロ契約/3分3R>
笠原淳矢(日本)
白谷フィッシュ征也(日本)

<ストロー級/5分2R+ExR>
樋口幹太(日本)
佐野光輝(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
椎名渉(日本)
河合亮(日本)

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