【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その参─川名雄生×ジン・テホ「引き出しの多さ」
【写真】やりづらい、簡単でないジン・テホをドミネイトし続けた川名(C)SUSTAIN / SUSUMU NAGAO
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ3月の一戦=その参は3月25日、プロ修斗公式戦から川名雄生×ジン・テホ戦を語らおう。。
──3月の青木真也が選ぶ、この一番。最後の試合――そして青木アワードの対象となる選手は?
「川名雄生のジン・テホとの一戦ですね。実はジン・テホが強かったです。体躯に恵まれているし、あれだけリーチがあると川名さんからすれば、戦い辛かったはず。頭を下げてスイングするパンチは、あそこまで距離感が違うと、なかなか当てることも難しい。
懐も深いし、踏み込んで一発を当てるという流れを狙っていたでしょうけど、なかなか当てることはできない。
川名さんはABとの試合なんかでは彼はテイクダウンを切りまくって、そのディフェンシブな強さが出ていた。その前は鈴木慎吾に殴り合って勝っていた。そういう部分で、能動的な動きで試合をドミネイトできる力はあるのかなって思っていたんです。実は」
――それが、恐らくはスクランブルも強かったであろう、長身の韓国人選手をテイクダウンして、コントロールし続けたと。
「いざ蓋を開けてみると、しっかりとテイクダウンして、ドミネイトできていた試合でした。川名さんの引き出しの多さを見せた試合だったと思います」
――テイクダウンも大内刈り、小外刈りと多彩でした。
「そこから抑え続けて、バックも取りかけた。しっかりと稽古をしているからこその試合内容でしたね」
――この試合も格闘技界においてすら、それほど評価の俎上に載ることもない。
「そこですよね。今回のような韓国のイベントで名を成しているわけではない韓国人選手に勝っても、あまり評価されることではないじゃないですか?」
――ハイ、その通りですね。加えて事前のプッシュも難しいですし。
「階級は違いますけど、キム・スーチョルやチョ・ナムジンだと評価の対象になりますけど、急に呼んだ選手ではそうはならない」
――ただし、4勝3敗でもロシアのMFPで勝利している韓国人選手が弱いわけは、もうないです。
「だから今の韓国は無名でも強いっていう風にしないと。そういう意味で、もっとしっかりと焚いてやってから試合をさせてあげさせたいですよね」
――解説で佐藤ルミナさんが、『環太平洋王者だからしっかりと勝つ』という体育会系の話をしていましたが、『無名の韓国人は怖い』と勝てば評価が上がるよう話の持っていきかたをしてほしかった。
「それが修斗っぽい。無味無臭なルミナさんと、最初と最後でテンションが違うマッハさん。面白おじさんのマッハさんとルミナさんの解説も含めて、あの試合は良かったです」
――なるほど(笑)。この結果、3月の青木アワードの受賞者は川名選手に決定しました。
「そうですね。いや強いですよ、力は。川名さんは試合前はロータスにも来るので、スパーをすることもあるのですが、仕事をしていて忙しい。だから彼が店長のシャブシャブ屋でロケをしてあげたいですね。駐車場でも良いので。店長、ドンドンって感じ――ですね(笑)」
――そこはスタッフに動いてもらいましょう(笑)。