【Shooto】石橋佳大を倒し、世界バンタム級王者となった佐藤将光─01─「嬉しいけど、ゴールじゃない」
【写真】傷はあるが、あの戦いの後としては綺麗な顔の新チャンピオン(C)MMAPLANET
10月15日(日)、千葉県浦安市の舞浜アンフィシアターで開催されたプロ修斗公式戦で、佐藤将光が石橋佳大との激闘を制し修斗世界バンタム級王座を獲得した。
今年の3月に石橋の持つ環太平洋王座に挑戦した佐藤、この時は1-0のドローでベルトを巻くことはならなかった。そんな石橋を相手に序盤から優位に立ち、反撃にも逃げ切った新チャンピオン。嬉しい王座奪取にも、なぜか佐藤は厳しい表情を浮かべたままだ。
その後は多くの応援団の輪のなかで笑顔を取り戻した佐藤に、その厳しい表情を浮かべた理由を訊いた。
──王座奪取おめでとうございます。
「ありがとうございます」
──セコンドの皆さんと話している時にダウンをしたことを覚えていないと言っていましたが、今はどのような気分ですか。
「前回、取れなくて皆がガッカリして、泣いている人もいて。なんで出来ないんだろうって、自分が嫌いになりかけたこともありました。『もう、俺はベルトを獲れないのかな』ともちょっと思ったりしましたし。
でも練習している時は絶対に獲れると思っていて……獲れて良かったです(笑)」
──ここまでタフな試合になることは想定内でしたか。
「う~ん、ああいう展開にはなるだろうとは思っていました。僕自身は距離を取って、右を当てながら焦らすことができればと……そうすることが僕のプランニングでした。でも、テイクダウンを許してしまいました」
──ダウンも複数回奪い、パウンドで追い打ちも掛けるなど決まるかというシーンもありました。
「それを凌がれました。気持ち、気迫だったと思います。3Rかな、これで終わると思って叩いていたのに石橋選手が動き続けて来て。ただ動くだけでなく、一本を取りに来ていたんです。
あの気持ちの強さは見習わないといけないです。攻めているのに、こっちが弱気になってしまう……引いてしまうような気迫だったので凄く勉強になりました」
──最終回はこのまま逃げ切れば判定勝ちになるという戦い方だったのでしょうか。
「ガードを取っている時は何とかしないといけないと思っていたのですが、あの状態を続けたのは僕のなかで怖さが出たからです。その結果だと思います。立ち際でバックに回られたらということが頭を過ぎりました。
僕はそういう状況になると、敢えてそこに向かっていかないと勝てない人間なんです。それが分かっているのに、5Rは立てなかった。そこを乗り越えないと……あそこからしっかり立つなり、極めるなり、スイープするなりしていかないと、ここから一段階上には行けないですね」
──それが佐藤選手のファイトスタイルというか、生き方というのか。以前の打ち合いから、なるべくパンチを被弾してないでパンチを当ててダメージを相手に与えることができるスタイルになってなお、このような激闘が多いです。
「気迫で詰めてこられたことで、僕の距離で戦うことができませんでした。石橋選手が貰う覚悟で入って来ていたので、あそこで引くと負けてしまいます。多少は打ち合わないと勝てないと思いました。
ああいう風に前に出てくることは分かっていたんで、練習ではそこでテイクダウンを取るということをやってきたのですが、今日はテイクダウンを仕掛けていないですね……。あそこでスコーンとテイクを取って、叩いて立って戦おうと練っていたのですが、それがハマらなかった。
石橋選手がこっちの動きを見ながら前に出てきた。それが想定外でした。もっと雑に入ってくると思っていたのに、想像していた以上に丁寧な攻めでした」
──それを踏まえても、初回からパンチが当たっていたので、その調子をキープして戦おうという風になりますよね。
「手応えはありました。それでも前に出て来るのが石橋選手の強さです。勉強になりましたね」
──念願のタイトル奪取なのですが、試合後はあまり満足した表情ではなかったように見えました。
「仕留められる時に仕留めたかった。それと最後はガードポジションを取ったままで終わってしまったので。前回もあの形で終わり、ドローでした。あの時の課題を克服できなかったというのが、勝っても頭にありました」
──自分に厳しいですね。
「こうやって勝ってベルトを巻くと皆が喜んでくれることは嬉しい。その結果を出せたことには関しては、自分でも胸を張りたいですけど、修斗のバンタム級チャンピオンになることがゴールではない。今日、ベルトを獲れていなくても格闘技を続けていただろうし、前と同じことをしてしまったのは反省でしかないです」
<この項、続く>