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【RFC44】3日前、バス移動中に受けたオファー――桑原清 「こんな僕を試合に使ってくれるのなら」

Kiyoshi Kuwabara【写真】即決の裏の背景が伝わってくる桑原の熱い口調だった(C)MMAPLANET

11日(土・現地時間)に中国・河北(ホーベイ)省の石家庄(シーチャーチュワン)のホーベイ体育館で開催されるROAD FC44に桑原清が出場することが、試合の3日前に決まった。

マ・アンディンとの無差別級戦を岩田啓輔のセコンドとして開催地入りを目指していたバスのなかで受けたオファーを二つ返事で了承した桑原。その背景には、一時は引退に気持ちが揺らいだ時期があったことが関係していた。


――マ・アンディンとの一戦が北京から石家庄に向かうバスの中で決まりました。実際、あの5時間強の移動中にどのあたりでその話があったのですか。

「途中、半分ぐらいのところでトイレ休憩があったじゃないですか、あの後ぐらいですかね。寝ている時にCMAの諸岡会長に起こされた瞬間に『試合じゃなぇかな』って思いました(笑)。普段、寝ていて起こされることなんてないのでよっぽどのことが起こったなと。

そうしたら案の定、『試合になるかもしれんけど、どうだ?』ということでした。気になったのは体重のことで、僕が今は多いから尋ねると、無差別だったので『良いですよ』って返事しました」

――ほぼ2つ返事だったと。相手の体重は気にならなかったですか。

「う~ん、相手の体重ですか……実は自分、数カ月ほど前にもう格闘技を辞めようかと悩んでいた時期があったんです」

――えっ、そのようなことがあったのですか。

「以前からお世話になっているハワイのHMCにハル・シマニシさんの下でフィジカルや栄養学、メンタルを見てくれているコーイチさん、タンゲ・コーイチさんという方がいます。

負けが続いていたし、コーイチさんにちょっと相談していたんですね。すると、僕のテストステロンが下がり過ぎている。そういう症状が出ていて、指導を受けてサプリなんかを摂取するようにしていまいた。

でも、なかなか改善されず、ジム運営、指導、仕事ともう忙しすぎて精神的にも追い込まれてしまい、3、4カ月ほどジムの指導は人に任せて、顔を出さなくなっていました。

その時ですね、もう辞めようかと思ったのは。でも我慢していた酒とかを飲むようになったら、このままじゃ終われないっていう気持ちになったんです。その時にもコーイチさんから『そういう気持ちになったんなら、やろう』と言ってもらえて。

で、2、3カ月ぐらい前から動き始めていました。10月29日に名古屋国際会議場で行われたカイザーの試合に出て、また体重を戦える状態に戻していこうというところだったんです」

――その時点でどれぐらい動きが戻ったという感覚だったのでしょうか。

「実は昼間の仕事、解体の仕事をまた始めたんです。夜の飲食の方は人に任せて。で、朝起きて力仕事をして、夜はジムで練習するという生活のリズムに戻したら、体の調子は良くなってきて。時間がない分、集中してできていますし。

ピークの頃より練習時間は減っていますが、2、3時間の集中度合いは上がっていると思います。そんな状況だから、すぐに迷うことなく『やろう』と思ったんじゃないでしょうか」

――逆に即決でないと、受けられなかった?

「考えたら出来んと思います。何も考えていないからやると思えた。相手の体重も100キロ、110キロだって言われたり、もう言う人によって違いますしね(笑)。顔も分からない、構えも分からないです。計量になって、初めて誰と戦うか確認が取れる感じです。まぁ凄い状況ですね(笑)」

――怖さはないですか。

「ないと言ったら嘘になります。でも、普通の人よりは少ないかもしれないです。感覚がおかしいのかもしれないですが、怖いという感情よりチャンスだという気持ちの方が強いです」

――その決断を称賛する声もあれば、そんな状況で試合をするなんて、MMAを舐めているのかという意見も出てくる場合もあるでしょう。

「だと思います。本来は2カ月、3カ月という準備期間があって相手のことを研究するのが普通です。それだけの期間があるということは、その間も恐怖を持ち続け、厳しい練習でそんな気持ちを追い払う努力を続けているわけですから。

相手の強弱に関わらず、試合は試合です。ずっと準備をするのは当然です。

その一方で僕に求められているプロ格闘家としての仕事は、ここで戦うということだと思っています。金を稼ぐのも仕事だし、清というプロ格闘家の色はコレですね。ミノワマン選手が重たい選手と戦っていたように、僕は急なオファーでも戦う。勝ち負けではなく、内容で結果を求めて戦います。

言い方は悪いですけど、長生きするよりも後悔のない人生を送りたいので。でもバスのなかでずっと寝ていて、思考回路も何も頭が回っていない時に返答したんですけど(笑)」

――試合を戦うことを決め、残りの2時間半ほどのバスでの移動中に何か気持ちの変化とかありましたか。

「う~ん、どうなんでしょうね。あんまり変わらなかったかと思います(笑)」

(同室の)岩田啓輔 あの後も寝ていたじゃないですか(笑)。

――アハハハ、それは凄い。

「何なんでしょうかね(苦笑)。でも、今の僕はロードで負けが続き、計量も失敗をした。もう使ってもらえる立場にない。格闘技の世界では、胸を張って歩ける場所はどこにもない人間です。

だから、ここで試合を受けないともう潮時。これを続けるなら、何も選択肢はないです。だから、断る理由もなかった。こんな僕を試合に使ってくれるのなら」

――その気持がこもった試合を期待しています。

「ハイ。ありがとうございます。自分の戦い方は一つなので、生き様を見せるしかないです。僕と岡見(勇信)選手を同列に並べることはできないのですが、僕にとってこの試合は、岡見さんのUFCなんです。

それと今回、一緒に石家庄入りした藤田(和之)さんのようなレジェンドがロードに出て、次にHEATで戦うんですから、僕みたいな若造が試合を選んでいる場合ではないです

僕を使ってくれるのはありがたい。このチャンスを生かせたら、ここからさらに自分の気持ちを上げることができる。そして、次は急なオファーじゃない試合をもらえるよう戦います」

■ROAD FC44対戦カード

<無差別級/5分3R>
アオルコロ(中国)
藤田和之(日本)

<ライト級T準々決勝/5分3R>
シャミール・ザフロフ(日本)
アマチュシン・フーヘンフウ(モンゴル)

<ライト級T準々決勝/5分3R>
下石康太(日本)
バオ・インカン(中国)

<ライト級T準々決勝/5分3R>
ホニ・トーレス(ブラジル)
トム・サントス(ブラジル)

<ライト級T準々決勝/5分3R>
マンスール・ベルナウイ(フランス)
ムングントスズ・ナンディンエルデン(モンゴル)

<72キロ契約/5分3R>
シャ・イーラン(中国)
SHUNYA(日本)

<無差別級/5分2R>
ウー・ラーハン(中国)
ワン・イーチャン(中国)

<無差別級/5分2R>
桑原清(日本)
マ・アンディン(中国)

<女子ストロー級/5分2R>
藤野恵実(日本)
アリーニ・サテルメイヤー(ブラジル)

<バンタム級/5分2R>
ウー・ジェ(中国)
ウー・シャオロン(中国)

<バンタム級/5分2R>
根津優太(日本)
バーサンクフー・ダムランプレウ(モンゴル)

<ライト級/5分2R>
岩田啓輔(日本)
ホアン・ツェンユー(中国)

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