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【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その弐─アオルコロ×藤田和之の前に桑原清

Kiyoshi Kuwahara【写真】青木は藤田和之を語る前に、桑原清に関して話した(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ11月の一戦=その弐は11月11日、ROAD FC44から藤田和之×アオルコロ戦の前に桑原清×マ・アンティン戦を語らおう。


──では青木選手が選ぶ11月のこの一番、2試合目は?

「藤田(和之)さんとアオルコロですね。あのロードの中国大会にパッケージができていた。そのなかで桑原(清)選手って出ていたじゃないですか」

――現地入りするバスのなかで無差別級でマ・アンティンと戦うことを了承した試合です。

「アレ、良い話ですよね」

――良い話ですか(笑)。

「いやビックリしましたよ。セコンドで中国に行っていて、バスのなかで『やるか?』、『やります』の世界でしょ? 諸岡(秀克)さんワールドだなって(笑)。僕は桑原選手のことは知らないのですが、キャラで見る限りそういうキャラなんだろうなって。で、諸岡さんの『いくぞ、コラァ』に対して、『押ッ忍』みたいな感じで、合っているんだろうと」

――北京から石家庄へ移動するバスのなかで、前の方に諸岡会長が座っていて。真ん中にいた桑原選手。その周囲に座っていた選手から、後方にいた選手へ『なんか桑原選手が試合に出ることになったみたい』とヒソヒソ話で伝わってきたんです。

「桑原選手からすると、諸岡さんへの義理を通すというところもあるわけですよね」

――それもあるかと思います。常に恩人だと言っていますし。桑原選手の性格、生き方、そしてロードで減量失敗があったので逃げることは許せなかったのではないでしょうか。

「そこで受けないと逃げになるのか……」

――地方から地下格からやってきた選手と、アマ修斗からやってきた選手では選択肢は違うだろうし、私は今後は必要ないのですが、今回は有りかと思いました。

「しっかり、格闘技をやりたいと桑原選手は思っているのですか」

――今回の事態とは別に、そういう気持ちもある選手だと思います。

「まぁ体重でミスるとノーは言えないというのも、分かります。桑原選手は自分でも思っているだろうし、業界をリードするファイターじゃない。そういう選手が自己責任において、こういうチャンスの掴み方もあることを示したのは悪いことじゃない。

良いんじゃないですか。有り……まぁ、良いか悪いかで言えば無し寄りの有りだと思います。桑原選手って、下の子たちも慕っているというか、それこそ親分肌みたいだし。上下関係は厳しそうですよね。

でも、下の子が彼を立てている。なんか、格闘があって良かったという人生を生きてきた感じが伝わってきて。その流れって上下関係は厳しいと思います」

――直接会った時も、メールなどで連絡をもらった時もとにかく礼儀正しいです。

「いや、それはそうですよ――年長者に対しては。それが体育会系と、ちょっと悪いところで育った人間の特徴。やんちゃの人は上下関係が、一般人より厳しいですから。ちゃんとやっていたやんちゃの人は大学の体育会系を出ているのと同じだと思います。

あのロードは藤田大会、そのなかで桑原選手はちょっと話したくなる感じでした。

で、藤田さんなんですけど――ちょっと狂気を感じる。試合は1Rで終わり、格闘技として技術的に語ることは何もないです。でも、あのテーマ曲で入場してきて、やはり藤田さんの舞台になっていて」

――いやMMA会場では過去に耳にしたことがないほど、日本人選手へのブーイングが大きかったです。そこで日の丸を振り回して煽りまくる。その藤田選手の佇まいで、ガチガチの勝負論で同じ大会に出ていた下石康太選手の気持ちが楽になった。これが良い感じでした。

「あぁ、僕とすればもうそういう考え自体に違和感があります。軽くカルチャーショックです。もう僕はかなり前からその辺りのカルチャーに触れているので、驚かないです。藤田さんが何をしようが驚かない。

ある種、藤田さんを皆が舐めていたところがあったんです。でも、振り切っている人ですからね。修羅場の数が違うので。技術論はないと言ったのですが、それでも右フックの一発は常に狙っているんです」

<この項、続く>

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