【Pancrase290】半蔵に勝利、UFC出場をアピールした中原由貴─01─「半分強がりで戦っていました」
【写真】激闘の後が伺える、試合後の中原の表情(C)KAORI SUGAWARA
8日(日)、東京都江東区のディファ有明で行われたPancrase290で中原由貴が田中半蔵に判定勝ちを収めた。
2015年11月からパンクラスでコンスタントに戦績を重ね、この田中戦の勝利で6連勝と記録を伸ばし、試合後のマイクで英語を駆使してUFCへの出場をアピールした中原に、半蔵戦、そして自身の格闘技感とUFCへの想いを尋ねた。
──実績で上回る半蔵選手との試合で判定勝ちを収めました。
「いやあ、勝てるとは思っていなかったので、まだ信じられないですね。見ていて面白いと思ってもらえる試合をする事に集中していたら、こういう結果になりました」
──試合前に勝てないと考える選手は珍しいのではないでしょうか。
「ランキングはあまり意識していないですけど、半蔵選手は巧くて僕にないものを持っているのではないかという印象がありました。僕は内村選手とも肌を合わせたことがあるんですけど、その内村選手にフルラウンドで競り勝っていますし、強い選手を秒殺しています。ただ、試合で向き合っていくなかでで自然とその考えも飛んでいました」
──強豪相手にどのように気持ちを作っていったのですか。
「(桜井)マッハ(速人)さんに喝を入れてもらいました。普段から『下がるな。前に行け!』と言われているので、『下がらないで前に行こう』と思っていました。スタミナが弱点だったので、1ラウドの試合タイムが3分から5分に変わっても3R戦い切れるよう、少し前からパーソナルトレーニングの『ORKA GYM』にサポートして頂いています。その成果が見られたのか、比較的楽に試合を進められるようになりましたね」
──試合中、中原選手のパンチが当たる度に会場が沸いていました。
「本当ですか? それは嬉しいですね。試合中はセコンドの指示は聞こえていても、お客さんの声まではなかなか聞こえません。僕はランキングが9位ですが、半蔵選手のおかげでお客さんがいっぱい入っている試合順の良い位置で試合ができました。良い大会になるために役に立てていたなら、自分に良い点をあげたいです」
──ジャブを当てて、左ストレート。そこからケージ際のクリンチというねちっこい展開でも半蔵選手に遅れをとっていなかったです。
「半蔵選手はもっと組みが強いのかなと思っていたんですけど、来週(※15日)、修斗で試合をする岡野(裕城)選手と週に1度練習をさせてもらっているので、組んだ感じで大丈夫だと思いました。岡野選手は力も強くフィジカルが凄いので。
好きだから打撃を使っているのですが、組みもしっかり練習しています。組まれても問題ないつもりで準備していますし。ただ、本番ではMMAに詳しくないお客さんに『何だ?! コイツの試合は?』と思われたくないんです。だから、敢えて打撃を使った展開にしています。
お客さんをハラハラさせるような盛り上がった試合を楽しんでもらい、また試合を見に来てくれるようになる事が格闘技が盛り上がる事に繋がると思っています」
──初回がまさにそのような流れでした。倒して、倒され。再び倒すという。
「最初にダウンを取ったパンチは力を入れていなかったんですよ。あれで倒れるんだったら熱くなる必要がないと思っていたら、ズルズルと行ってしまいました。自分が貰った時だけでなく、相手が倒れても頭に血が上ってしまいます。
で、半蔵選手にカウンターを当てられてしまいました。セコンドから『熱くなったらお前が倒される』とずっと言われていたのに、今日も1R目に熱くなりかけましたね。でも、セコンドの怒っている声が聞こえて、自分を制止する事ができました」
──セコンドの声で切り替えることができた?
「テンパったらセコンドを見る、これは自分で絶対に心掛けていることです。ダウンを取られた時は、フワッとなり結構焦ってしまったんですけど、ちょうど組みの展開だったので、セコンドの2人を見ました。
セコンドを信頼しているんで、『落ち着け』と言われ、1回落ち着いて、今自分がやるべき事を考えました。最初に自分が当てているので、身体的なダメージはイーブン。相手もキツイから俺もやるしかないと思ったら、2回目のダウンが取れました。僕自身ではあまり作戦を立てないのですが、自分の中でもシーソー感があったので、客席も『おおっ!!』となっているような感じは何となく伝わってきていました。『コレがやりたかった!!』と思いながら戦っていたんです」
──中原選手陣営にとっては、ハラハラしてしまうようなところも、理想的な展開だったわけですね。
「これまで試合でダメージを受けたり、足がふらつくことはなかったのですが、半蔵選手のパンチを軽くもらうだけでも、過去最高に頭がグラグラしました(苦笑)。でも、そこも想定内です。自分らしさを出していかないと相手に飲み込まれてしまうので、どれだけフラフラになっても負けん気だけの半分強がりで戦っていました」
──負けん気のファイトが、良い方向に繋がりまったと。
「そうですね。良い方向に向かってくれました。このままパンチをもらい続けると倒されるなと思ったので、行くしかないと思って戦っていたので。普通のファイターの理想的な試合というのは怪我もなく、勝つことだと思います。自分は見に来てくれた人が皆、盛り上がって試合を楽しんでくれたならOKですね。ファイターとしてもちろん勝ちたいですけど、つまらない試合をして勝つぐらいなら、派手な試合をして派手に負ける方が良いという変な考えをしているんです。
それで負けてしまったらしょうがないなという感じです(笑)でも、そこを頑張らないといつまで経っても日本人は海外で勝てません」
<この項、続く>