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【RIZIN WS01】韓国でソン・ヨンジェと11カ月振りのMMA、中原由貴「キツいところにトライする練習」

【写真】11カ月振りのMMA。タイトルに通じる相手と戦うチャンスを得るために、しっかりと勝ちたい(C)MMAPLANET

31日(土・現地時間)、韓国はインチョンのパラダイスシティにおいてRIZIN WORLD SERIES in KOREAが開催され、中原由貴がソン・ヨンジェと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

RIZINフェザー級はラジャブアリ・シェイドゥラエフが新王者となり、6月のRIZIN LANDMARK11からはコレスニックを筆頭にヴガール・ケラモフやイルホム・ノジモフが参戦するなど激化の一途をたどっている。中原は今回のヨンジェ戦を番外編と位置づけ、タイトル戦線への浮上を見据えている。


――大会まで一週間となりました。現時点での仕上がりはいかがですか。(※取材日は24日(土)、合同公開練習前に行われた)

「今回は結構仕上がりがいいと思います。ちょっと練習の出だしでつまずいたこともあったんですけど、最後の最後で全部良くなってきましたね」

――MMAの試合は昨年4月のビクター・コレスニック戦以来となります。この間はどう過ごされていたのですか。

「試合で言うと10月にBreakthrough CombatでProgress(グラップリング)ルールの試合をやっただけですね(※中川晧貴にポイント2-1で勝利)。実はちょいちょいオファーはあって、こっちは試合をやるつもりで準備していたんですけど、対戦相手に断られてしまったり、なかなか試合に恵まれずでした。ただONEでゲイリー・トノンに負けた時(2019年5月)も1年9カ月くらい試合感覚が空いたこともあるので大丈夫だと思います」

――大きな怪我などがあったわけではなかったんですね。

「はい。むしろいつでも行けるように準備を続けていました」

――試合がなかった期間にはどのような練習を続けていたのですか。

「ものすごく充実していた…という言い方も変なんですけど、早く今の自分を見せる場がほしいと思うくらい、自分の中で強くなっているし、着実にできることも増えている手応えがありましたね」

――現在の主な練習場所はどこになるのでしょうか。

「月曜日は剛毅會で空手、火曜日は昼にロータス世田谷さんでグラップリングをやって、体調次第では夜にT-Grip Tokyoさんでグラップリング。水曜日は自分のジム(マッハ道場)でミット打ちをやって、木曜日は昼間にロータスさんでMMAスパーと夜にフィジカル。金曜は昼にフィジカルをやって、夕方は自分のジムに選手に来てもらってMMAスパーリングという感じですね」

――かなり密度の濃い練習が出来ていて、試合に関係なくグッドコンディションが保てているようですね。

「そうですね。ただ試合に向けてという部分では、本来対戦相手に似たスパーリングパートナーを探して、自分のプランをぶつける練習をすると思うんですけど、今回は対戦相手のソン・ヨンジェに似たタイプ、あそこまで打撃を振り回すボクサーのようなスパーリングパートナーがなかなかいなかったんですよ。今回はMMAグラップラーに対して組みに行ったり、ストライカーに対して打撃で行ったり、あえてキツい局面をキツい相手にやる練習もやってきて、自分でキツいところにトライする練習は出来たと思います」

――対戦相手のヨンジェにはどんな印象を持っていますか。

「彼がMMAを始めたばかりの頃の試合を見ると、すごく綺麗に組んでいる試合もあるんですよ。ただ相手が1、2戦しかやってない選手なんで、ちょっとそれは参考にしない方がいいかなと。実際に成績を追うごとに打撃メインの試合をしていて、ザ・コリアンストライカーというイメージです」

――今までヨンジェのようなタイプの選手として対戦したことはありますか。

「デビュー3戦目で韓国のイ・グァンヒとやったんですけど、グァンヒはヨンジェほど綺麗なボクシングじゃなかったし、自分もキャリアが浅かったので、そこも少し感覚が違うかもしれないと思っています」

――仮想ヨンジェがなかなかいなかったということでしたが、そこはどういうイメージを作って練習してきたのですか。

(C)昨年のRoad to UFCに出場しているソン・ヨンジェ、初戦で河名マストに敗れている(Z)Zuffa/UFC

「ヨンジェくらい打撃は出来るけどレスリング力はそこまでないとか。なかなか仮想ヨンジェになる選手がいなかったんですけど、剛毅會では周りが若い選手のケツを叩いてどんどん前に行かせてくれたりして、僕の中でのイメージは大分できています。コレスニックとやった時もコレスニックに酷似した選手と練習したわけでもないし、過去に1週間前に対戦相手が変わったこともあったので、そういう状況でも試合のイメージはだいぶ固められています」

――逆にコレスニック戦で得た経験や反省点は?

「あの時は結構打撃のスタミナでロスしちゃいましたね。岩﨑(達也)先生に言われたのが、MMAをトータルでやるスタミナや組み技のスタミナと、打撃のスタミナは全く別物だから、と。キックボクサーは1R3分で打撃をやるけど、MMAは1R5分で組みのある中で打撃をやるし、根本的なペースが違うんです。400m走と200走は走るスピードが違って、同じ5分間でもどちらのスピードで走るかによって疲れ方が違うじゃないですか。だから常々どういうペースで走るかを考えろと言われ続けていて、そこは自分でも作ってきたつもりではいたんですけど、コレスニック戦は結果として僕が先にガスアウトしてしまいましたね。

これからはそこを一番の取り組みとして考えつつ、もっと(打撃と組みを)混ぜていかないといけないと、試合直後から大塚(隆史)さんに言われました。あの時は試合中にセコンドにも『自分から組みに行ったら逆にやられるかもしれません』と言ったんですけど、とにかくコレスニックの組みの圧力が今までに感じたがことないぐらい強かったんです」

――コレスニックは打撃が鋭い印象でしたが、肌を合わせてみて組みの圧力を感じたんですね。

「打撃はなんて言うんですけかね。組み技よりも頭で考えずにやることが多いじゃないですか。逆に組み技は組んでいる状態で、呼吸をするタイミングだったり少し考える時間があるんですよ。RIZINでもコーナーに押し込まれた時、一瞬息を整えて、そこから入れ替えたり、自分から攻撃するか離れるかを考える時間があったんです。でもコレスニックとやった時は、組んでいる状態で一瞬でも気を抜いたらやられると思ったんです。要は呼吸を落ち着けようと思っても、常にコレスニックのプレッシャーがかかっていて、ちょっとでも力を抜いたら(テイクダウンまで)持っていかれると。で、終了間際に組んだ時も『は?』と思うくらい組みのプレッシャーを感じました」

――終了間際でも感じましたか。

「はい。3R終盤に僕がバン!とダブルレッグに入ってテイクダウンして、逆転を狙って一度寝かせてから足を持ってサッカーボールキックを蹴ろうと思ったんです。そうしたらコレスニックにすっと立ち上がられて、四つ組み(コーナーに)押し込んだ時にコレスニックに小手を巻かれたときのプレッシャーが半端なかったんです。自分が得意にしている四つ組みから相手を引き出しての柔道技を狙ってもダメだったし、逆にコレスニックに入れ替えられて、最終的にダブルレッグで持ち上げられましたからね(苦笑)」

――試合序盤はまだしも終盤にそれは驚きますよね…。コレスニックは組みでプレッシャーをかけられるからこそ、効果的な打撃を出しているのかもしれないですね。

「そう思います。正直、白川(陸斗)選手とやった時にある程度、打撃に対する組みや組んでからの攻防は出来ている実感があって、これで(海外勢が相手でも)いけるだろうなと思ったんです。でもその考えが全然甘かったですね(苦笑)。僕も20戦以上やってきましたが、あそこまで組みの強さを感じたのはコレスニックが一番で、自分の組みの技術もまだまだ足りないと思いました。対世界で考えると、コレスニックの組みが標準装備だと思うし、先ほどの練習メニューを見てもらっても分かる通り、より一層組みを頑張ろうと思ってやってきました」

――中原選手の組みのレベルはかなり高いと思っていましたが、そこで満足していてはいけないと。こうして中原選手の話を聞いていると、今回のヨンジェ戦は改めて対世界の戦いに打って出るための切符を手に入れるための試合です。

「まさにそうです。だからこそ今回ここでやらなきゃいけないというか、当日変なスイッチが入っちゃったらよくないんですけど、いかに自分がやってきたことを出せるか。本当はもう1試合くらい挟んで、ある程度やってきたことができるようになってから海外勢とやる方が安心できたんでしょうけど、今の自分はそんなことを言っていられなので。とにかく今回はやってきたことを全部出す。

言っても試合はフルでやっても15分しかないので、やれることは次から次に全部やりたいし、勝たなきゃいけないという気持ちはファイターとしてありますけど、自分が作ってきたものを全部出せば勝てるし、それで勝てなかったら試合までの過程が間違っているわけじゃないですか。勝たなきゃいけないなんて意識していなくても思っていることだから、自分のパフォーマンスを100パーセント出すことにフォーカスして、しっかり勝ちにいきたいなと思います」

――RIZINフェザー級は強い選手がどんどん出てくるし、ワンマッチでありながら生き残りをかけたトーナメントが繰り広げられているような状況です。

「なんでフェザー級だけこんなことになるんだろう(苦笑)。しかも6月の北海道大会からみんな(ヴガール・ケラモフ、コレスニック、イルホム・ノジモフ)帰ってくるじゃないですか。自分は今回のヨンジェ戦は番外編だと思っていて、ここで勝ってしっかり自分の実力をアピールしたい。もう一度フェザー級のトップ戦線に食い込んでいくことが今回のテーマなので、みなさんにもそこに注目してもらいたいです」

■RIZIN WS KORE視聴方法(予定)
5月31日(日)
午後2時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN WS01対戦カード

<ライト/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
キム・スーチョル(韓国)
佐藤将光(日本)

<ライト級/5分3R>
大原樹理(日本)
ジョニー・ケース(米国)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
シン・ユリ(韓国)
ケイト・ロータス(日本)

<ライト級/5分3R>
キム・シウォン(韓国)
宇佐美正パトリック(日本)

<バンタム級/5分3R>
ヤン・ジヨン(韓国)
金太郎(日本)

<フェザー級/5分3R>
ジ・ヒョクミン(韓国)
武田光司(日本)

<フェザー級/5分3R>
ソン・ヨンジェ(韓国)
中原由貴(日本)

<63キロ契約/5分3R>
クォン・ヨンチョル(韓国)
三浦孝太(日本)

<キック67.5キロ契約/3分3R>
ジョ・サンへ(韓国)
宇佐美秀メイソン(日本)

<キック62キロ契約/3分3R>
カン・ボムジュン(韓国)
井上聖矢(日本)

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