【RFC41】イ・イェジと対戦――亡き父の後押しを受け前澤智「自分の価値が伝わる試合を」
【写真】自ら浴衣を着て、公開計量に臨んだ前澤。亡きお父さんだけでなく、お母さんの後押しがあった(C)KAORI SUGAWARA
12日(土・現地時間)、韓国ウォンジュのウォンジュ総合体育館でRoad FC 41が開催される。日本から初参戦する前澤智はウォンジュが地元の女子高生ファイター=イ・イェジと対戦する。
前澤は中学高校と6年間、柔道部に所属し、大学進学後は柔道と柔術を並行してキャリアを積んできた。DEEP JEWELSを主戦場としながら、2014年にはPXCに出場した経験もあり、今回は自身のキャリア2度目の海外遠征となる。
その彼女をオフィシャル計量後にキャッチし、女子MMAへの思いと今回の試合へ向けた意気込みを訊いた。
──今日の計量では浴衣を用意されているのですね。
「ハイ。そうなんですよ。日本っぽいものをと思って浴衣にしました。子供でも着られるように母が色々と細工をしてくれたので今日は自分で着付けをしました。普通のおはしょりとかは自分ではできないです(笑)。
私は顔も薄くてキャラクターもないし、本当に記憶に残らない選手代表なので今日はせめて、と思って浴衣を着ました。格闘技は本当に強いか、超キャラがあるかだから、今回はこういう中途半端な層の選手に凄いチャンスというか、良い機会をもらったと思います。
『自分がここにいるんだよ。戦っています。頑張っています!!』という価値が皆さんに伝わるような試合が出来たら良いな、頑張りたいなと思います」
──本計量を終えて、調子は如何でしょうか。
「体重も結構コントロールして今日まで来たし、調子は良いですね。昨日、48.5キロまで大丈夫だと聞いて『ああ、なんだ』と思ったんですが『まあ、関係ないな。48キロがリミット!』と思い、昨日はホテルのフィットネスのジムに行ってちょっと走ったり。お風呂に入って、少し体を動かしてリラックスできたんで、調子良いですね。日本ではこんなに自分のフラッグを街で見掛けたりすることがないので、やる気もでますし面白いなと思います」
──宿泊施設のお湯の温度が低かったようですが、体重調整中に気になりませんでしたか。
「私も熱い方が好きなのでちょっと『うーん?』と思うこともありましたが、蛇口から出るお湯は結構熱かったので『あ、よかった』と思いました。熱いのと冷たいのと交互に入るのが好きなので、熱いのと冷たいのを選べるところがあったし、良かったです」
──リバーサルジム立川アルファの金原正徳代表も韓国入りしていますね。
「ハイ。ソウルで今、遊んで、いや、下見をしていると思います(笑)。明日は会場に来てくれます」
──今回対戦するのは韓国で人気のある女子ファイターのイ・イェジ選手です。
「勢いがある選手だというのと、地元の選手で人気が高いと聞いています。ただ、自分も今までやって来た経験が助けてくれると思うし、なんて言ったら良いか分からないですけど、自分を信じてやるしかないと思っています」
──対策として映像などもチェックされたのでしょうか。
「検索したらしなし選手との試合が多く出て来て、2回くらい見ました。私は感覚で生きていて頭が使えないんで、いつも相手選手の試合はあんまり見ないんです」
──八戸の皆さんも試合をご覧になられるのでしょうか。
「そうですね。この間、地元に帰った時にも地元で何人かが『お前、韓国に行くんだって ?!』とか、今のジムの人達も『先生、頑張ってね!!』と言ってくれました。それも男女関係なく言ってくれて。柔道をやっていた時から10年間『女なのに格闘技?!』と言われてずっとやって来たので、凄く嬉しいですね。
ただ、RIZINのメインで女子が試合を組まれるとか女子にも流れが来ているんで、段々女子格闘技の枠が広がっていけば、強さとか、キャラクターとかだけじゃない普通の選手にもチャンスがもらえるようになるのではないかと」
──前澤選手が柔道を始められたのはいつ頃だったのでしょうか。
「柔道は中学校から大学までやっていました。小学校の時も習い事で経験もしましたけど、その時は根性がなくて先生が怖くて1年でやめてしまいました。中学になって『今度こそ頑張ってみようかな』と思って入部しました。面白くて、気持ちもついていけるようになったので高校までがっつりとやりました」
――さきほど、大学まで柔道をしていたと言われていましたが。
「ハイ。地元から電車で2時間くらいの弘前の大学に進学したのですが、入学した時には柔道部がなかったんですよ。だから同好会を作りました。ただ、同好会には名前だけで練習に人が集まらなかったので、隣の大学に出稽古に行っていました。
長期の休みには地元に帰るので、パラエストラ八戸へ行っていました。大学の途中からブラジリアン柔術をやって、そこからMMAを練習するようになったんです。チームの代表から『ボクシングは痩せるぞ』と言われて、最初はフィットネス感覚でやっていました。柔術が終わったらミット打ちする、みたいな感じでした。柔術の試合に出た時にとある方に、『東北に女子で柔術選手がいるのすら知らなかった。JEWELSという大会があるので、もし総合に興味があるなら出てみませんか』と声をかけてもらったんです。
試合に出ることになってから初めてフィットネスじゃなく、対人でのボクシングの練習を始めました。プロになってから試合に出るのではなく、試合に出てからプロになった感じですかね。だから当たり前ですけど、最初は負けっぱなしできつかったです」
──青森を拠点にキャリアを積んで来て、立川アルファに移籍を決めた理由は?
「試合に出るために東京に来る時には体を動かすためにジムを借りるんです。その時アルファにお世話になっていて知り合いが居たというのもあります。青森が悪いところだとは思わないですけど、やはり技術とか科学的なMMAのことに関していうと情報が不足しているかなとか、練習相手が不足していることも感じていました。
そんな時に父が交通事故で亡くなったんです。私は葬儀屋で働いていたので、自分で父を送りました。先日、三回忌が終わりました。元気だったのに、人は急に事故で亡くなることもある。父は本当は格闘技は危ないから辞めろと言いたかったのかもしれないけど、私は『1度しかない人生だから、好きなことをして生きろ』というメッセージだと受け取りました。生きるのに、後悔したくないと思ったんです。
それで『東京へ行こう』と思い、出て来ました。カッコよくいえば、その寿命が来るときまでは命を燃やしてみようかなと思い、仕事を辞めて東京に来て練習しています」
──東京に出てきた良かったですか。
「ハイ。金原代表は自分に厳しくて。代表に見られていると思うと、自分ももっとやらないといけないと思えます。青森でやっている時は『根性でどうにかする!!』という気持ちがあったんですけど、本当に科学的な戦い方を教わっているという実感がありますね。当たり前のことだと思うんですけど、ディフェンスをもっとする。本当に良い環境でやらせてもらえているという実感があります」
──明日はその成果が見られるわけですね。
「ハイ。出せれば勝てると思います!」
──それでは最後に、地元八戸や東京など、日本から応援してくださる方々へメッセージをお願いします。
「この通り、普通な選手の普通な私ですけど、リングの上で戦っている時は自分が主人公だと思って、皆さんに元気や明日への活力を与えられるように自分も精一杯やります。日本の皆さん、応援していてください。宜しくお願いします!!」
■Road FC41計量結果
<無差別級選手権試合/5分3R>
ミョン・ヒョンマン: 117.4キロ
クリス・バーネット: 135.3キロ
<女子アトム級/5分2R>
イ・イェジ: 48.5キロ
前澤智: 47.8キロ
<無差別級/5分3R>
チェ・ムベ: 115.1キロ
ジェイク・ヒュン: 110.1キロ
<ライト級/5分3R>
ブルーノ・ミランダ: 70.3キロ
キ・ウォンビン: 70.2キロ
<バンタム級/5分3R>
ジャン・デヨン: 62.0キロ
パク・ヒョングン: 61.9キロ
<ライトヘビー級/5分3R>
パク・ジョンギョ: 93.4キロ
キム・ジフン: 92.8キロ
<60キロ契約/5分2R>
ユ・ジェナム: 60.5キロ
薩摩竜人: 60.2キロ
<フェザー級/5分2R>
ミン・ギョンチョル: 65.9キロ
シン・スンミン: 65.8キロ
<50キロ級/5分2R>
シム・ユリ: 50.3キロ
ベク・ヒョンジュ: 50.0キロ
<フライ級/5分2R>
ソ・ドンス: 57.5キロ
ジョン・ウォンヒ: 57.4キロ
<ミドル級/5分2R>
イ・ジョンファン: 83.7キロ
ファン・インス: 84.0キロ
<フライ級/5分2R>
キム・ヒョリョン: 57.5キロ
キム・ジンヨン: 57.5キロ
<バンタム級/5分2R>
イ・ソンス: 61.8キロ
ホン・ジョンテ: 61.8キロ