【WJJC2017】フェザー級、杉江大輔は無念のスイープ献上──優勝は8年振りのコブリーニャ
【写真】37歳、2009年以来の優勝。ハファ不在とはいえ、勝負強さとインサイワークは当代一だ (C)MMAPLANET
1日(木・現地時間)から4日(日・同)にかけてカリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドで開催されたブラジリアン柔術世界選手権=ムンジアル。柔術世界一を決定する世界大会レビュー第5回は、日本から杉江アマゾン大輔が出場したフェザー級の模様をお届けしたい。
<フェザー級1回戦/10分1R>
イタロ・シウバ(ブラジル)
Def. by 2-2 アドバンテージ3-2
杉江アマゾン大輔(日本)
試合開始後座ってシッティングで仕掛けようとする杉江に対し、シウバは飛びついての三角狙い。杉江は相手の襟を掴んだ腕を張ってこれを跳ね返して上に。2点を先取した。
杉江は左膝でシウバのガードを割ってのパスを狙うが、シウバはハーフで抜かせず、やがてフルガードに戻してみせる。その後胸を合わせて膝を抜いてパスしたい杉江と、それを止めてガードから仕掛けたいシウバのせめぎ合いが続く。5分過ぎにはスパイダーガードからスイープを狙ったシウバが杉江のバランスを崩し、アドバンテージを一つ得た。
さらにシウバはスパイダーから左右に煽るが、杉江は重心を低くしてバランスを保つ。残り1分。ハーフからワキを指してのスイープを狙うシウバに対し、杉江は上半身の圧力をかけて潰しにかかる。シウバはハーフからシットアップしてタックルのような形で上を狙うが、杉江は脇を差して一回転して上を保つ。ここでシウバにもう一つアドバンテージが入り、アドバンテージでは杉江を一つ上回ることに。このままの体勢なら杉江の勝ちだが、一つスイープを決めればシウバが逆転勝ちという状態にもつれ込んだ。
残り20秒。杉江はハーフ上から脇をすくい胸を合わせて抑えにかかる。ここでシウバは体を捻り差された腕を抜き、足を絡めたまま亀になると、後方に倒れこみリバースハーフから後転するように最後のスイープ狙い。背中を向けた形で上になると、杉江のズボンの足首の部分を掴んでコントロールしたまま正対に成功してスイープは完成、と同時に試合は終了した。
結果、杉江は最後の局面で同点に追いつかれアドバン差で勝利を逃してしまった。ただし、スイープを完成するにはその状態を3秒間維持する必要があり、シウバが上になると同時にタイムアップとなった点を踏まえると、3秒間上になってはいないはず。
そこも踏まえてムンジアル──というのではあれば、余りにも杉江には気の毒なレフェリーの判断といえる。ただし、あえて厳しい見方をすれば強烈な上半身の圧力でほとんどの日本人のガードは制圧できるものの、世界の舞台となるとそうはいかない。このレベルの相手に対抗する力をどう練ってゆくか、杉江の創意工夫に期待したい。
<フェザー級決勝/10分1R>
フーベン・シャーレス(ブラジル)
Def. by 2-2 アドバンテージ3-2
レオナルド・サジオロ(ブラジル)
今回、ハファエル・メンデスが出場を見送ったことで、優勝候補筆頭となったコブリーニャことシャーレスは、準決勝で米国の新黒帯のシェーン・テイラーと対戦。テイラーに下から一瞬でループチョークに入られて、あわてて逃れたところをさらにアキレス腱固めに繋げられて上を奪われるなど、そのスピーディーな攻撃に大苦戦を強いられた。勝負を掛けた終盤のスクランブルの攻防でも投げで返されてしまい、最後はニアマウントを取られて終わるなど形成不利にも見えたコブリーニャだが、レフェリー判定を2-1でものにして薄氷の決勝進出を果たした。
もう片方のブラケットから決勝に上がってきたのは、パワフルな攻撃を身上とするBTTの伏兵レオナルド・サジオロ。去年の世界柔術では準々決勝でメンデスに0-6で完敗し、今年のパン大会準々決勝でもマーシオ・アンドレの弓矢絞めで一本負けを喫したサジオロだが、本大会では準々決勝でそのアンドレを、準決勝でジャンニ・グリッポをレフェリー判定で退けての決勝進出だった。
試合開始早々、コブリーニャが引き込んでクローズドガードを作ると、サジオロは得意の低い体勢から担いでのパス狙いに。コブリーニャは、サジオロの足首と肩口を掴んでから足で跳ね上げて立ち上がるスイープを幾度か狙うが、重心の低いサジオロはそれを凌いでは、またしても低くプレッシャーをかけてのパス狙いへ。コブリーニャがアドバンテージを一つ獲得した状況で、試合は終盤へともつれ込んでいった。
残り2分。同じ形でサジオロを浮かせたコブリーニャは、バランスを崩して横向きになったサジオロの上になりついに2点を獲得。
しかし、サジオロはそのままコブリーニャを上に乗せたままスクランブルし、飛行機投げのような形で落として上を取り返してすぐに2点を返してみせた。このキワの攻防におけるレスリングの強さがサジオロの長所だ。
残り1分半。さらに低い体勢から担ぎに行くサジオロ。コブリーニャの体を持ち上げて後転を余儀なくさせることで、アドバンテージで並びたいところ。
それを承知のコブリーニャは、サジオロのギの首元の部分や足首を掴んでそれを許さず。結局コブリーニャがスイープのアドバンテージを守りきり、09年以来実に8年ぶりの世界大会優勝を飾った。
今年の12月に38歳となるコブリーニャは、本年度はヨーロピアン、パン、ブラジレイロに続いて4大会連続制覇。ムンジアルは2009年以来、実に8年振りに頂点に立つこととなった。近年はハファエル・メンデスの後塵を拝していたものの、十数年にも渡って世界最高峰の実力を維持し続けているその姿は、超人としか言いようがない。息子のケネディも茶帯ライトフェザー級で3位獲得。来年は黒帯で親子揃い踏みという柔術界に新たな金字塔を打ち立てるかもしれない。
■リザルト
【フェザー級】
優勝 フーベン・シャーレス(ブラジル)
準優勝 レオナルド・サジオロ(ブラジル)
3位 シェーン・テイラー(米国)
3位 ジャンニ・グリッポ(米国)