【WJJC2017】ライトフェザー級、嶋田裕太、加古拓渡、山田秀之──かく戦えり
【写真】ボストン在住のタカシマを含め1階級に4人の日本人が出場したライトフェザー級だ。日本はブラジル、米国に続きムンジアル制覇への気持ちの強い柔術家が存在する (C)MMAPLANET
1日(木・現地時間)から4日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。今年度における各階級、そして無差別級における競技柔術世界一を決定するこの大会。レビュー第3回は、ライトフェザー級に日本から出場した3選手のワールドクラスの奮闘をお伝えしたい。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
山田秀之(日本)
Def. 6分00秒 by 腕十字
タダシ・タカシマ(米国)
引き込んだタカシマは柔軟な体を生かしたオープンガードを取るが、山田は落ち着いて対処。やがてタカシマの足をレッグドラッグで捌いてサイドに付いて先制点を奪うと、さらにニーオンザベリーで加点する。その後タカシマが山田の道着の背中を掴み、足で蹴ってスペースを作ろうとしたところで、山田はその伸ばした右腕を捕らえてファーサイドに回っての腕十字。快勝で一回戦を突破し、04年と13年の世界王者、ガブリエル・モラエス戦に駒を進めた。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
Def. by アドバンテージ 2-1
フェルナンド・サントス(ブラジル)
開始早々スタンドから、ヒザを付きながらのスピーディーなシングレッグを仕掛けた嶋田は、そのまま相手を場外に押してゆき先制のアドバンテージを奪取。さらに果敢にシングルを狙うが、サントスは自ら座って下に。
自らガードの中に入っていった嶋田に対し、サントスは内回り等の仕掛けを作る。しかし嶋田は低く噛み付いてバランスをキープして崩れず。さらにサントスは嶋田のラペルを引き出しての攻撃を仕掛けるが、嶋田は低い体勢で捌いては、噛みつきながら左右に動いてのパス狙いを見せる。結局上からのプレッシャーをかけ続けた嶋田が、僅差ながら危なげない戦いで一回戦を突破。今年のパン大会で敗れたジョアオ・ミヤオとの再戦に駒を進めた。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
イアゴ・ジョルジ・シウバ(ブラジル)
Def. by 10-2
加古拓渡(日本)
試合前に、昨年優勝のパウロ・ミヤオの禁止薬物使用による失格により、繰り上がって銅メダルを授与された加古。本人は「棚ボタ」と言うが、限られた者しか出場できない世界の舞台で、勝利を挙げての堂々のメダル獲得だ。
こうして昨年世界3位の実績を得た加古の一回戦の相手は、ミヤオ兄弟の同門にして世界的強豪のシウバだ。
試合開始後、両者引き込んでダブルガードの状態となるが、シウバはすぐに上を選択。すぐさま加古の右足をレッグドラッグの状態で流して体重をかけて潰したシウバが、サイドを奪取して速攻で先制点を奪った。
さらに加古の上体を引き上げてバックも狙ったシウバは、またいでマウントを奪取。有無を言わさぬ連続攻撃で7-0としてみせた。加古は一度ハーフに戻すものの、シウバは足を抜いて再びパスに成功してリードを10点に広げる。
加古がまた足を戻すと、シウバはもう点は十分に取ったとばかりに簡単に下になる。上になった加古に2点が入った。いったんはそこからパスを狙った加古だが、やがて自ら倒れこんで50/50の状態に。さらにベリンボロの仕掛けや足狙いを試み、持てる力を全てつぎ込む加古だったが、シウバの足のロックが強固で思うように動けないまま時間が過ぎてゆく。終盤には腹ばいになってのアキレス腱を狙った加古だが、ここもシウバはやり過ごして試合終了。
試合開始早々、シウバの有無を言わさぬ速攻で得意のガードを潰された加古。結果としては一挙に点差を付けられた後は、攻防らしい攻防をさせてもらえず。超一流を相手に持ち味を封じられての敗戦となってしまったが、最後のアキレス腱に代表されるように全てをぶつけていった加古だった。
<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
ガブリエル・モラエス(ブラジル)
Def by 4-0
山田秀之(日本)
引き込んで山田の右足に下から絡んだモラエスは、山田のラペルを引き出してヒザ裏から回して取ると、両足で山田の体を高く跳ね上げてのスイープで先制点を奪う。下になった山田はラッソーを作り、さらにシッティングからモラエスの道着を引いてそのバランスを崩すが、場外ブレイクとなってしまった。
スタンドで再開後、再び引き込んで、先ほどと同じラペルを膝裏から回したガードを作るモラエス。対する山田はステップオーバーしてリバースハーフの上の体勢となり、そこから足を抜きにゆくが、ここでモラエスが後転するように上に。リードを4点に伸ばしてみせた。
下になった山田はクローズドガードを取る。重心を低くしたモラエスにガードを割られると、山田はハーフからシッティングガードを作り直す。そこから山田はズボンを掴むと、モラエスを跳ね上げて立ち上がってのテイクダウン狙いを見せるが、モラエスは強固なバランスで防御。やがて自分から座ったモラエスは、失点することなく下のポジションに戻ったのだった。
山田は果敢にパスを仕掛けるが、モラエスはスクランブルで体勢を戻し、またしてもラペルをヒザ裏から通す同じガードを作る。対する山田も再びリバースハーフの上を取り、足を抜きに。これをモラエスは許さない。時間のない山田は最後アキレスを狙うが、モラエスは道着を掴んで、試合終了まで極めさせなかった。
初めて世界の舞台で大健闘した山田だが、ラペルを用いた相手のモラエスの得意パターンを攻略しきれず。今年ジョアオ・ミヤオのガードを低いプレッシャーパスで攻略し世界を驚かせたモラエスは、下になっても難攻不落。改めて世界一流の壁の高さが垣間見えた一戦だった。
<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 4-0
嶋田裕太(日本)
試合開始から、闘志が体全体から溢れんばかり様子の嶋田。スタンドで小刻みに動いてはテイクダウンの機会伺うが、ミヤオは冷静に引き込み。嶋田は躍動感溢れる動きで横に回ってパスを狙う。ミヤオは柔軟な体を利したインヴァーテッドガードで対処して戻す。この攻撃で、嶋田が先制のアドバンテージを獲得した。
今度はミヤオが下からベリンボロの仕掛けを見せる。そして、嶋田の右足を抱えて立ち上がってのスイープ狙い。一度崩された嶋田は持ち直して上をキープしたものの、ミヤオにアドバンテージが与えられて同点となった。
その後も俊敏に左右に回っては果敢にパスを仕掛ける嶋田と、足を効かせてそれに対処しては下から崩そうとするミヤオの見応えのある攻防が続く。やがて再び嶋田の右足を抱えて崩してアドバンテージを追加したミヤオは、ラッソーガードから嶋田のラペルを引き寄せてワームガードを作り、そのまま立ち上がって上に。スイープを完遂して2点を先取した。
下になった嶋田も、じきにミヤオの右足を引き出して肩に抱えることに成功。そこから煽るが、柔軟な股関節を持つミヤオは足を大きく開いてバランスを保ち、場外へ。前回に続き、嶋田は下から点を取れないままスタンド再開に持ち込まれてしまった。
ここで、ミヤオがコンタクトレンズに不具合が生じしばし試合は中断される。リズムが狂いかけたときにミヤオがよく見せる仕種からも、試合巧者ぶりが伺えた。その間も嶋田は闘志満々。今にもミヤオに襲いかからんばかりの様子で小刻みにステップを踏み続けて、臨戦体勢を崩さない。
再開後再びミヤオが引き込むと、嶋田は果敢にパスを狙ってゆく。対するミヤオも足を効かせては下から煽る。やがてミヤオは再びワームガードを作って嶋田を崩し、4点目を獲得した。
終盤、下になった嶋田はシッティングからテイクダウンへの移行を狙うが、ミヤオは腰を引いて止める。ならばと嶋田はミヤオの腕をキムラグリップで捕らえてのアームロック狙い。ヒップバンプスイープ(ヒップスロー)とのコンビネーションを交え、渾身の力でミヤオの腕を引き離しにかかるが、ミヤオは試合終了までがっちりと守った。
俊敏な動きと豊富な運動量で、ミヤオと一進一退の攻防を繰り広げた嶋田。先制のアドバンテージを奪うなど、0-6で敗れたパン大会よりも拮抗した試合をしてみせた。しかしワームからのスイープで上を取りきられたり、下から崩しても場外ブレイクで逃げられる等、前回と同様ミヤオのモダン柔術にポイントゲームの要所をことごとく抑えられてしまったことも事実だ。
その嶋田は、今後米国に残りリコ・チャッパレリのフォークスタイル・レスリング、エディ・ブラボーのサブ・オンリースタイルの柔術、そして神童マルセリーニョの技術を学ぶ予定という。その独自に創り上げた柔術で、モダン柔術の世界最高峰を制する日が来ることを期待したい。