【UFN101】ヴォルカノフスキーと対戦する粕谷優介「勝つイメージがわかないことが逆に良いかな」
【写真】翌朝には豪州へ向かうという状況で、夜の遅い時間の取材にも「子供を寝かせつけてからなので、自分も助かりました」とザ・ファミリー&夫婦愛に満ちた溢れた粕谷は言ってくれた(C)MMAPLANET
27日(日・現地時間)、豪州ビクトリア州メルボルンのロッドレイバー・アリーナで開催されるUFC Fight Night 101「Whittaker vs Brunson」に日本から粕谷優介が出場する。
当初の予定では9月のUFC203に出場するはずだった粕谷だが、対戦相手ダミア・ハゾヴィッチがビザが取れず10月のフィリピン大会に延期。すると、今度はフィリピン大会自体が中止とあり、今大会でアレックス・ヴォルカノフスキーと戦うことが決まった。
2カ月連続で試合中止の憂き目にあった粕谷は、試合をすることの恐怖を告白した。
──SNSなどでもクラウンの練習は活気が出てきているのが伝わってきます。
「若い子、40代の生徒さんなんかが一生懸命練習してくれています。こういうと何ですが……張り合いも出てくるのですが、会社が終わってからで生徒さんも増えると、疲れもするので小林(正俊)さんと川那子(祐輔)さんが指導に来てくれて助かっています」
──そんな順調なジム運営とは違い、UFCでの2戦目は本当に色々ありました。試合まであと1週間、また何かあるかもとドキドキしたりすることはないですか。
「正直なところ、もう僕の方では何を信じてもしょうがないので(苦笑)。明日の飛行機(※取材は11月21日に行われた)が飛ぶのかなって気になりますし。相手が体重オーバーしたらどうしようとか、色んなことを考えてしまいますね」
──これまでにないストレスでしたか。
「フィリピン大会が無くなるって分かった3日後とかに、もう話はもらっていたので、息抜きをする間もなかったです。皆が慰めてくれて……『ご飯でも行こう』って言ってくれたのに、それも試合があるから無理になって……。
ホント、もうこんな経験はないだろうって思うぐらいしんどかったです。一番は……試合数が僕は少ない方だと思うんですけど、あまり試合がしたくないんですよ」
──エッ? それはどういうことですか。
「怖いから……怖いからあまり試合がしたくなくて(苦笑)。試合は決まればやるのですが、そこに向け怖さを克服するための練習なんです。もちろん、大きな意味でいえば強くなりたい、好きだから格闘技をやっているのですが──、試合をするのはいつも怖い。なのでケージに入る時に『これで負けたらしょうがない』という気持ちでいられるように、練習をして気持ちを作っているのが本当のところです」
──それが2カ月連続で試合がなくなったとなると……。
「もう嫌でした(笑)。肉体とか強さよりも、気持ちを作るのが大変で。プロじゃないと言われるとそれまでなのですが……試合がしたくてしょうがないという選手の気持ちが僕には分からなくて……。
そういう弱いところを克服したくて続けているのですが、試合に勝ってもそこはなかなか変わらない。勝てば気持ちが強くなれるのかなって思っていたのに、弱い自分は変らないまま次の試合が決まるという感じできました。
今もデビュー戦と同じだけ怖いです。平気で試合ができる人が羨ましい。ホント、会社で上司に怒られるのとかは全く別次元の怖さがずっとあります」
──そんな怖さに耐えて試合に臨む時、家でピリピリしてしまうようなことはないですか。
「アマチュアやデビュー戦までは試合前とか凄くピリピリしていたんですけど、結婚してからはピリピリしても良いことはないと思えるようにはなりました」
──では試合前、いつぐらいまで怖いのですか。
「ケージの中に入ると、自分でない自分になります。入ると覚悟が決まって、客観的になれるんです。ただ入場している時も『何かあって、試合がなくならないかな』なんて思ったりしています。あの段階でも怖いです。ワセリンを塗るまえにセコンドたちとハグをするじゃないですか? UFCって」
──ハイ。その時は気持ちが切り替わるような感じなのでしょうか。
「あの時はまだ助けてくれぇ……って思っています(苦笑)。ホントにタッチグローブぐらいです。やらないとやられるってスイッチが入ります。この感覚はデビュー戦の時から変わらないです」
──では今は3カ月連続で、3度目の怖さと戦っている最中なのですね。
「でも、この短期間でさすがに何度も気持ちを作ったことはこれまでになかったので、ここまでくると少し落ち着けているのかなって思えます」
──おぉ怪我の功名ですね。
「あとはもう違うぞって……、コナー・マクラガーとエディ・アルバレスの試合を見て思ったことも影響しているかと思います。格闘技として理解ができない。ファイターとして、何も理解ができなくて……あの試合を見てからは、そんなに考えないで良いのかって思えるようにもなって(笑)」
──同じライト級の頂点が遠すぎると?
「とにかく意味が分からなかったです。レベルの差は以前からあると理解はしていたのですが、彼らの足下にすら僕は立てていないんじゃいかって。もう、自分がどこにいるのかも分からなくなってしまいました。
だから、自分は自分で──自分の試合をやれば良いやって思えるようになった一面はあります」
──なるほど。ところでハゾヴィッチは実はフィリピン大会前にケガをしており、大会があっても試合に出られなかったという話も伝わってきました。だからヴォルカノフスキーになったと。
「ハイ。もう、あの選手のことは嫌いです。あれだけ怖い想いをしたのに、フィリピンに行っていても試合ができなかったんじゃなぇかよって。ヴォルカノフスキーに関しては、これはフランク・カマチョと戦った時と同じで、勝つイメージがわかないです。
矢地(祐介)君にあんな風に勝ってしまうなんて。でも、勝つイメージがわかないことが逆に良いかなって思ってもいます」
──逆に良いというのは?
「怖いんですけど、勝てなそうな試合を戦う方が好きで。ヴォルカノフスキーはハゾヴィッチより確実に強いでしょうし」
<この項、続く>
■UFN101対戦カード
<ミドル級/5分5R>
デレック・ブルンソン(米国/8位)
ロバート・ワイッタカー(豪州/7位)
<ミドル級/5分3R>
ダニエル・ケリー(豪州)
クリス・カモージ(米国)
<ライト級/5分3R>
ジェイク・マシューズ(豪州)
アンドリュー・ホルブルック(米国)
<ウェルター級/5分3R>
リチャード・ウォルシュ(豪州)
ジョナサン・メニエ(カナダ)
<フェザー級/5分3R>
ダン・フッカー(ニュージーランド)
ジェイソン・ナイト(米国)
<フライ級/5分3R>
ベン・ウェン(米国)
ジアン・ヘレラ(米国)
<ライト級/5分3R>
ダミアン・ブラウン(豪州)
ジョン・タック(米国)
<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
<女子ストロー級/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
ダニエル・テイラー(米国)
<フライ級/5分3R>
ジネル・ラウサ(フィリピン)
ヤオ・ジークイ(中国)
<ウェルター級/5分3R>
カイル・ノーク(豪州)
オマリ・アクメドフ(ロシア)
<ライトヘビー級/5分3R>
カリル・ラウントリー(米国)
タイソン・ペドロ(豪州)
<バンタム級/5分3R>
マルロン・ヴェラ(エクアドル)
ニン・グォンユ(中国)