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【UFC】PRツアーで来日、アリスター・オーフレイム<02>「コミッションが必要だと政治家と話した……」

overeem【写真】オランダ格闘技界の影の部分、そしてUFCという光を話してくれたアリスター (C)MMAPLANET

UFCのアジア・プロモーションツアーの一環として、東京を訪れていたアリスター・オーフレイム・インタビュー第2弾。

今回は過去5年、格闘技のビッグイベント開催が途絶えていたキックボクシング王国=オランダ──アリスターの母国の格闘技事情を話し、UFCロッテルダム大会の成功がどれだけ彼にとって大きな出来事だったかが明らかとなった。

<アリスター・オーフレイム インタビューPart.01はコチラから>


──キックボクシング王国オランダの格闘技界に一体、何が起こってしまったのですか。

「話せば長くなり、色々と込み合ったことが起こったんだけど、簡単に話せば2011年頃からオランダ政府はBIBOPという公の場所で500人以上が集まる法律を政府が中止できるという法律を格闘技イベントに施行する方針を打ち出したんだ。つまり、格闘技自体が目的ではなく、格闘技イベントに関係するマフィアや反社会的勢力を標的にしたんだ。

反社会勢力との関係が判明すれば、政府は大会を中止できる。結果的にほとんどのプロモーターは格闘技イベントを開くことができなくなってしまった。つまりは……そういうわけだよ。

イベントが開かれなくなると、選手も育たたない。大変な時期をオランダ格闘技界は迎えてしまった。それって政府や法という部分でなくPRIDEに起こったことと同じで、しかもオランダで格闘技が開かれなくなると同時に、日本でK-1も活動をストップした。本当にファイターは大変な時期を迎えることになったんだ」

──It’s Showtimeがアムステルダム・アレナで2万人を集めてキックのビッグショーを開いていた国にそんなことが起こるとは思いもしませんでした。

「格闘技界がそのような勢力とリンクしていたことは間違いないからね。It’s Showtimeのシモン・リッツはGloryにIt’s Showtimeを売却した。Glory──そう、僕が属していたGolden Gloryも格闘技イベントがオランダで開けなる要因だったことは、君も十分にしっているだろう?」

──ハイ、そうですね(苦笑)。

「Golden Gloryはその後、フランスのピエール・アンデュランたちの投資グループが買収し、バス・ブーンを始めとする旧Gloryのメンバーは徐々に去ることになり、彼らは反社会勢力との関係を断った。その結果、またオランダで大会を開けるようになった。それが去年の話だよ。3年もキックの大規模な大会はオランダで行われることはなかったんだ。

でも、K-1の頃のような規模の大会は開かれていないのが現状だ。ローカルショーは何とか存在したけど、UFCがロッテルダムで開催されたことで、オランダの格闘技自体が上向きになっていってほしい」

──その間、アリスターはどのような想いでいたのでしょうか。

「そんな状況を打破したかった。だから、政治家に面会を求めて実際に話し合いの場も設けた。そして、オランダの格闘技界から反社会勢力を一掃したいのであれば、米国のステート・アスレチック・コミッションのような組織を作る必要があるって提案したんだ。アスレチック・コミッションだと政府とも、プロモーションとも仕事ができる。

その間を取りなす組織が必要だと思っていたから。ファイターの安全性を高め、ファイトマネーを保証するためにも。もちろん、その結果犯罪者たちを排除することになる」

──オランダにはブドー・ボンドという組織が存在していましたよね。

「ブドー・ボンドの問題点はあらゆる武道、コンバットスポーツを管轄する立場にあったので、実際には影響力を持てなかったということなんだ。そのことも僕はアムステルダム市長とも話した。権力を一つに集中させる必要があるってね。

それがアスレチック・コミッションになるべきだと。怖いと思われるかもしれないけど、ある程度権力は一ヵ所に集中させないと、なかなか事態は進展しない。個々のパワーを纏めあげる必要があるんだ。小さなパワーがそれぞれ何かを動かそうとしても、現実はそうそう変化しない。

でも、僕も試合を戦う立場だし、そこに全精力を集中させることはできなかった。だから、解決策を政府に掛け合ったんだ。結果、政府は僕の提案は選択しなかった。凄くフレンドリーだったけど、まぁ政治家だよ(笑)。でも、少しでもファイトスポーツというものを分ってくれていたなら、嬉しいけどね……。

そんな状況をUFCが打破した。米国での成功が、ファイトスポーツへの期待値を高めたんだ。そして、しっかりと政府と話し合える環境をUFCは整えている。数々の問題をクリアし、新しいレギュレーションを施行させるに至った。そしてUFCはロッテルダム・アホイに超満員の観客を集めて開催されたんだ。

イベントがあると、オランダのファンは絶対に格闘技を見たいに決まっているからね。そして、最高のファイターがメインに登場するんだからって……いうのは冗談だけど」

──いや、冗談でなくそれこそ彼らが長く待ち望んでいたことでしょう。

「何よりも、一切問題がなかったことは嬉しかった。パーフェクトなイベントだったよ。オーガナイズもファイト内容も。メインイベントも素晴らしかった(笑)。3人しかオランダ人ファイターは出場していなかったのに、あれだけのファンが集まったんだ。本当に感極まったよ。全てUFCが正しいことをやってのけた結果だと思っている。

警察官がリングサイドの観客の姿を見て、そこから騒動が起きて大会の進行が滞る。それがオランダの格闘技イベントだったけど、全くUFCロッテルダム大会はそんなことは起こらなかった」

<この項、続く>

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