【Special】そして──また日常が始まる。久米鷹介<03>「後輩の頑張りが刺激になる」
【写真】戦うこともそうだが、ALIVEというジムでトレーニングすることが久米の日常を形成しているのだろう(C)MARTIAL WORLD
24日のPancrase277で石川英司と厳しいケージレスリング&スクランブルの攻防を制し、昨年4月以来となる1年振りの勝利を挙げた久米鷹介が、その戦いを前に語っていた網膜剥離以後の日々……。
網膜剥離の発覚、手術、本格的なトレーニング開始までを語ってもらったが、今回はそもそも久米が、戦いのフィールドに疑問なく戻り、殴り・殴られという世界に躊躇なく戻って来たのかと話してもらった。
<久米鷹介インタビューPart.01はコチラから>
<久米鷹介インタビューPart.02はコチラから>
──カンチョル先生さまさまですね(笑)。31歳になる年、この間のブランクも取り戻さないといけないです。
「ハイ、目の前にヒジもやっていたので、今回の試合でもちょうど1年振り、その前も8カ月空いているので20カ月で3試合目にしかならないので。前の試合の勝利で次につながるかと思っていたのに……。
ただ、体力が落ちたとかそういうことを実感するよりも、より動ける体を作ろうというポジティブな考えで、体重を落とすようになったので。ヒジや目の手術もあり、無意識のうちにより真剣に考えるようになっていたのかもしれないです」
──なるほど。本来は昨年8月に戦う予定だった石川選手とのオファーが復帰戦で届きました。
「最初は時期も相手も違っていたんです。もう少し準備したいということもあり迷い、4月まで待ってほしいとお願いしたら石川選手が対戦相手になりました。石川選手には一度、迷惑を掛けているので断るという選択はなかったです。逆に石川選手が受けてくれたことに感謝しています」
──考えてみると、殴られる場所に戻りたいということですよね。
「ハハハ、やっぱり試合はしたいです。戻りたいです」
──それだけ温厚な性格の持ち主なのに、ですね。
「別に相手を殴りたい、踏みつけたい、絞めたいっていうことで格闘技をやっているわけではないですが、試合になるとそうしたいです(笑)。面白いですね、勝ちたいから殴りたい、絞めたい──となるわけで」
──でも逆に殴られ、絞められ、折られる可能性があるわけです。なぜ、そういう場所に苦労してもどりたいのでしょうか。
「なぜでしょうね? やっぱり仲間がいて、一緒に練習していますしね。あと、まず目のことにしても練習中に重久コーチが、すぐに病院に行けと気遣ってくれました。で、最初は大丈夫だと診断されたんですが、発さんや米国でお世話になっている方からも、ちゃんと調べた方が良いと言ってもらえました。
そこで川尻選手の記事を読み、病院を調べて……。手術後にうつ伏せの状態のときに、川尻選手がデニス・シヴァーに勝って……本当に運命かと感じました。川尻選手に勇気を貰えたんです。
今ではジムは別れてしまいましたが、杉江さんや新美さんも、それぞれの場所で頑張っておられていて──仕事の都合で格闘技を続けられなくなった人も見てきました。それでも格闘技を続けている先輩がいます。
ジムでも選手を目指すのではなく、楽しくやりたいと入門してきた人が、ずっと練習を続けていると僕らとライトスパーとか、シュートボックスができるまで強くなっている。そういう人たちの姿を見ていると励みになります」
──後輩たちも徐々に頭角を表してきました。
「ハイ。僕が先輩に引っ張ってもらったように、彼らを僕が引っ張らないといけないですし、彼らの頑張りが刺激になっています」
──目への恐怖は?
「ないです。練習していても問題ないですし。普通の状態に戻っているので、また運が悪ければ前回と同じようにケガをするということだけです。
ブランクも経験しましたし、これから先はこれまで以上に1試合、1試合が勝負になります。皆のおかげで、こうやして戦うことができるので、絶対に落とせないです。しっかりと戦います」