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【Special】そして──また日常が始まる。久米鷹介<01>「現実として捉えていたのは、治すことだけ」

Takasuke Kume【写真】ケージのなかでの戦いも、ALIVEでのトレーニングも久米にとって日常だ (C)MMAPLANET

24日のPancrase277で石川英司と厳しいケージレスリング&スクランブルの攻防を制し、昨年4月以来となる1年振りの勝利を挙げた久米鷹介。

Kume vs Ishikawaこの石川戦は本来、昨年8月に戦われるはずだった。しかし5月某日、練習中に右目に違和感を覚えた久米は網膜剥離という診断を受けた。一昔前だと、格闘家にとって引退宣言を受けることと同じ意味だった網膜剥離も、今では完治してケージに戻ることができる症状だ。

それでも──目という負傷箇所には、誰もが恐れを感じる。久米はこの時、ただ治すことだけを考えていたという。格闘技云々、試合云々は完治すれば再び始めるのが当然。そんな網膜剥離から試合に向けて動き始めた日々を石川戦の前──敢えて試合結果が出る前──に、久米本人に尋ねたかった。久米がMMAを戦う日常に戻ってくるまでを訊いた。

──昨年5月、網膜剥離と診断された時は何を考えましたか。

「まずは治すことしか考えなかったです。格闘技のこと、試合が決まっていたことも考えなかったことはないですけど、目が見えなくなると何もできなくなるので、取り敢えずは治療──手術して治すことだけですね、頭にあったのは。決して格闘技を二の次にしたとか──そういうことではなく、ひょっとすると網膜剥離という現実の下に、他のことを考えず、そこだけを考えていたのかもしれないです。

だから順序とかでなく、治すこと。自分が現実として捉えることができるのは、目を治す……それだけだったんです」

──格闘技を続ける云々にも、思考が及ばなかった?

「う~ん、目が大丈夫なら格闘技を続けることが当たり前だし、今では網膜剥離になると即、引退という状況ではなくなっています。現に復帰している選手もいました。なので、とにかく目を治すことが先決というか、網膜剥離だから格闘技を辞めるということと結びつけていなかったです。

でも、もうかなり時間が経ってしまったので、その直後にどんな考えだったかは、実際のところはあまり覚えていないぐらいです(苦笑)。ただ、悲観したとか、凄く動揺したということはなかったです」

──現実問題として、手術をすれば問題なくMMAを続けることができるという状況だったのでしょうか。

「最終的に横浜の病院に行った時は、恐らくは視力も戻せるし、直る。スポーツ復帰もできるという風に先生から言われていました。

最初はボクシングとか昔の話で引退しているといことを知っているだけだったんですけど、こっちで行った病院でも復帰できるという話ではありました。

僕の場合はすぐに病院に行ったことが良かったようです。放っておくと、また違う話になってしまうようで。網膜が裂けているので、そのままにしておくと剥がれ続けてしまうようです。僕も診察を受けてから教えてもらった知識ですが、ある程度の視力、そこを下回るほど剥がれてしまうと、一気に視力も落ちて回復させるのは難しいということでした。

──久米選手は違和感を持ってから、どれくらいで診察を受けたのですか。

「それでも2、3週間してからですね。この状況で練習を続け、試合に出てしまっていた選手もいるようですから……。ただ、最終的に横浜に行って診てもらったことが幸いでした。最初の病院では、それほど剥がれていないから──ゆっくり考えて手術するかどうか決めるような感じで構わないということだったんです。

それが横浜の病院で診てもらうと、この段階なら視力は絶対に戻せるから、すぐに手術をしましょうということになりました。で、予約が詰まっている状況でも、緊急用に空けてある日時があり、診察を受けた5日後に手術をしてもらえたんです」

──それは不幸中の幸いでしたね。

「実際は先生に診てもらう前だと、看護婦さんの説明では予定が空いているのは2カ月ぐらい先ということだったんです。でも、先生が診察後にすぐにしようということで動いてくださって。『僕らも今すぐのほうが治しやすい。治せる』ってことで」

<この項、続く>

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