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【RIZIN46】井上雄策と対戦、ヌルマゴ精神注入のベイノア「押忍のMMAを楽しみにしてください!」

【写真】 ヌルマゴに教えられた強さの神髄を戦いのなかで魅せることができるか(C)TAKUMI NAKAMURA

29日(月・祝)、東京都江東区の有明アリーナで開催されるRIZIN46で、“ブラックパンサー”ベイノアが井上雄策と対戦する。
Text by Takmumi Nakamura

2022年大晦日の宇佐美正パトリック戦でKO負けを喫したベイノアは単身渡米し、約1年間AKAで武者修行を行った。AKAではカビブ・ヌルマゴメドフ、イスラム・マカチェフ、ウスマン・ヌルマゴメドフらとも練習を共にし、積極的に柔術の試合にもチャレンジした。RIZIN神戸大会でのカード発表時には、失笑に終わった「格闘技は押忍です」という言葉。そこには深い意味があることをこのインタビューを通して知っていただきたい。


――まずはベイノア選手、米国武者修行おつかれさまでした。今回のインタビューでは米国での練習について聞かせていただきたいと思います。改めてこのタイミングで長期的な米国武者修行を行った理由を聞かせてもらえますか。

「一昨年の大晦日に宇佐美(正パトリック)選手にKO負けして『このままやっていても変わらない』という感じがあって、一度しっかり自分のMMAを作りこみたいと思って、米国で練習しようと思いました。米国でも色々な選択肢もあったんですけど、同じ階級で一番強い選手たちがいるところに行こうと思ってAKAを選んで、どうせ行くなら1~2カ月とかじゃなくてどっぷり入り浸ってやろうと思いました」

――ここ数戦は外からベイノア選手の試合を見ていて、なかなか自分を作り込めないままリングに上がっていたように感じていました。試合をするうえで迷いもあったのですか。

「ありましたね。当時の発言を見てもそうなんですけど『寝技がいい感じになってきた』と言ったり『空手ばっかりやっています』と言ったり、自分自身がブレていました。結局僕のバックボーンは空手で、それが強みであることには変わりないですし、今の競技化されたMMAの中で生きていくためには、もっともっと知っておかなければいけないことがある。自分のMMAのスタイルを確立させるためにもAKAで武者修行しようと思いましたね」

――改めてMMAを一から学ばなければいけないということですか。

「そうですね。もちろん日本でもちゃんとMMAを指導してもらえるジムは沢山あると思いますが、僕の場合は練習だけに集中したくて。だったら日本を離れて米国までいっちゃえば、練習せざるをえないじゃないですか。そういう環境に自分の身を置きたいという考えもありました」

――AKAはレスリングベースの選手が多い印象ですが、あえてそういったジムを選んだのですか。

「あまりジムのスタイルは気にしていませんでしたが、やっぱりAKAの選手はレスリングや組みが強いですよね。で、レスリング上がりの選手でも打撃が強いんですよ。ケイン・ヴェラスケス、ダニエル・コーミエ、ダゲスタン勢もそうですけど…みんなレスリング上がりとは思えない打撃スキルを持っているし、全てにおいて(AKAが)いいなと思いました」

――現地での大まかなトレーニングスケジュールを教えてもらえますか。

「朝9時から11時までプロ練をやって、一度帰宅して、夕方から3~4時間練習して、1日2回ですね。プロ練は日によってメニューが違っていて、火がレスリング、水金が打撃、木がグラップリング、試合前の選手はケージがある場所に移動してスパーリングですね。夕方からの練習は選手それぞれ自由にやっていて、僕は一般会員もいるクラスに参加させてもらったりしていました。

道場あるあるだと思うんですけど、プロじゃないのにやたら組み技だけ強い一般のおじさんとかいるんですよ(笑)。そういう人と練習したり、コーチにミットを持ってもらったり、仲間と集まってドリルをやったり、試合前の選手がいたら息上げ系のメニューもやったりしていました」

――練習メニューについてはいかがでしょうか。

「やっぱりドリルが多いですね。日本ではスパー中心で勢いでやっちゃっていたところがあったのですが、ドリルで技術を教えてもらうと、こんなにMMAは幅広いものなんだなと思い知らされました。打撃の練習もMMAを意識したものなので純粋な打撃とは違いましたね」

――全てがMMAを意識したものになっているんですね。

「そうです。しかも色んな形のドリルをやるので『試合になったらこういうシチュエーションあるな』みたいなことがたくさんあるんです。AKAには10年近く在籍して、今でもMMAを学び続けている選手もいるので、MMAは永遠にやることがあるんだなと思います」

――AKAではどういうメンバーが中心で練習を行っていたのですか。

「ハビア・メンデスがいるときはハビアが中心で、ハビアの息子が柔術のコーチなんですよ。あとはケインがずっとジムにいて、たまにコーミエが来て…という感じですね」

――そうそうたる面々にMMAのイロハを教わったのですね。

「あとはトップ選手の練習姿勢ですよね。カビブ・ヌルマゴメドフ、イスラム・マカチェフ(UFC世界ライト級王者)、ウスマン・ヌルマゴメドフ(Bellator世界ライト級王者)…彼らと一緒に練習していると、練習への取り組み方が刺激になって勉強になりました」

――SNSでカビブが若い選手たちに「プロで成功したかったら練習を休むな」と説教する動画が話題になりましたが、実際にそういう雰囲気なのですか。

「思いっきりそうですね。ある意味日本的というか、けっこう押忍系なんですよ」

――自由に練習するイメージの米国人とは違いますね。

「まさにタゲスタン勢はアメリカン・スタイルと押忍スタイルを融合していて、両方の良いところを取り入れている感じです。本当にカビブがいるとジムの空気が変わるんですよ。しかもハビブ自身、周りを煽りながら自分も動いて追い込むんですよ」

――カビブがそれだけやっていたら選手たちは休めないですよね。

「強さの神髄はエネルギッシュにどん欲に格闘技のことだけを考える。カビブも『練習に来るときは試合と同じように体調を整えてこい。練習以外の時間は寝て休んでコンディションを整えろ。それが出来ないなら練習に来るな』って言うんです。だから格闘技ってこういうこと、押忍だよなというのを思い出しました。RIZIN神戸大会と『格闘技は押忍です』と挨拶して、会場は『何言ってんだ?こいつ』みたいになっていましたが、そういうことなんですよ」

――なるほど。「格闘技は押忍です」の深い意味があることが分かりました。でも……ここまで説明しないと伝わらないですよ(笑)!

「失礼しました(笑)」

――現地では柔術の大会にも出場して優勝していましたよね。

「はい。試合経験が大事だと思って、自分で大会にエントリーして、一般の人と同じように参加費を払って出ました。ハビア・メンデスも言っていましたけど『UFCと契約するような選手は別だけど、そうじゃない選手はどんどん試合に出ろ』と。カビブもUFCに出る前は自分で調べて、サンボとか組み技の大会にも散々出ていたそうなんです。組み技の試合に出ることは練習の一環ですよね。だからニュースになった大会以外にも結構出ていました」

――そうした米国修行を経て戻ってきたベイノア選手が、どう変わったのか楽しみです。

「やっと僕のMMAを見せられるかなと思います。AKAでも僕の空手を活かすような指導をしてもらったので」

――「これがベイノアのMMAだ!」というスタイルが出来てきましたか。

「出来上がってきています。だからもう迷うことはないです。押忍のMMAを楽しみにしてください!」

■視聴方法(予定)
4月29日(月・祝)
午後4時00分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE

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