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【European Open】テハ&ミヤオ兄弟、他を寄せ付けず圧勝

Miyao Bros【写真】苦も無く決勝をシェアし欧州オープンを制したミヤオ兄弟 (C)IBJJF

1月21日(水・現地時間)から25日(日・同)にかけて、ポルトガルの首都リスボンはパピリャオン・ド・コンプレッソ・デスポルチーボ・ムニシパル・ド・サカウ・ヴィストソで、IBJJF主催のヨーロピアン・オープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパ全土を中心に、各国から強豪が参戦する国際色豊かな本大会。まずは日本人選手の活躍が期待されていた男子アダルト黒帯の軽量2階級の模様を伝えたい。

【ルースター級】

日本人3名が出場した最軽量級。12年のこの大会で優勝、昨年も準優勝の実績を持ち、期待度ももっとも高かった芝本幸司(トライフォース)は、1回戦で去年三位入賞の吉岡崇人(徳島柔術)と対戦。引き込んだ芝本はシッティングやハーフガードからの仕掛けで吉岡を揺さぶり、インヴァーテッド・ガードから吉岡のズボンの膝の部分を引きながら後ろに倒して2点先制。吉岡もスパイダーガードからの仕掛けやオモプラッタの仕掛けで揺さぶるが、芝本は崩れず。終盤の足関節狙いも不発に終わって2-0で芝本の勝利となった。

先日のアジアオープンに続き、このヨーロッパでも芝本に敗れた吉岡がマットを叩いて悔しがると、その背中に両手を置いた芝本の姿が印象的だった。

芝本は続く準決勝でフランスのニコラ・ギャラール(トゥーロンJJB ※)と対戦。ギャラールは、一昨年のヨーロピアンの茶帯ライトフェザー級でジョアオ・ミヤオと決勝を争っている新黒帯。芝本は、ギャラールの長い手足を利した強烈な下からの仕掛けに手こずり、最後は三角絞めで一本負け。3位という結果に終わった。(※ JJBは “Jiu-jitsu Bresilienの略”)

この階級もう一人の日本人選手、戸所誠哲(パレストラ岐阜)は1回戦で世界王者カイオ・テハと対戦。引き込んだテハは、得意のハーフガードから自分の体を横転して戸所を崩し、すかさずバックに回る動きなどを見せて大量点を獲得。その後は点差を考えて、スクランブルでも失点を意に介さず下になる戦い振りで10-4で勝利した。

Caio Terra

次戦も順当に一本勝ちしたテハは、決勝で芝本を倒したギャラールと対決。引き込むギャラール対してあえて上攻めを選択すると、強力な引きつけを凌ぎつつパスのプレッシャーをかけてゆく。やがてギャラールの尻とマットの間に体を滑り込ませる、いわゆる「上からのベリンボロ」の形でバックを奪取したテハが、最後は片羽絞めで貫禄勝ち。全3試合において、まったく危なげのない横綱相撲を見せた。

テハ、ブルーノ・マルファシーニ、そして(今回は一階級上に出場した)ジョアオ・ミヤオの三強が他を大きく引き離している感のあるこの最軽量級。米国、日本勢がそれに次ぐという従来の構図に、今回はギャラールというグレイシー・バルセロナな学び、母国に戻ったヨーロッパ勢が強力なライバル加わったことになった。日本人が世界の頂点を獲るための道は、今後ますます険しいものとなりそうだ。

【ライトフェザー級】

期待の吉岡大(東京イエローマンズ)と山田秀之(デラヒーバジャパン)の両者は、ともに初戦において僅差で敗退。残念ながらミヤオ兄弟との対決は実現せずに終わってしまった同階級。ちなみに、吉岡に勝ったイタリアの若手のシモーネ・フランチェスキーニは準決勝で弟ジョアオに、山田に勝ったルイス・ロペスは準々決勝で兄パウロに一本負けを喫している。ミヤオ兄弟の壁は、かくも厚い。

結局この階級は、大方の予想通りミヤオ兄弟がクローズアウト。代名詞であるベリンボロからのバックチョークがまたしても猛威を振るったのはもちろんのこと、ジョアオが下から相手の頭上を超えてファーサイドに足をこじ入れて腕十字の形を作って上を奪取すれば、パウロは亀になった相手に足を絡めて膝固めを極めるなど、さらに攻撃の引き出しを増やしていた。

特筆すべきは、両者とも試合時間のほとんどにおいて、ひたすら一方的に攻撃を繰り出しており、相手の方はディフェンス一辺倒に追いやられていることだ。世界一流の黒帯が集まる国際大会において、ただ自分のやりたいことのみを行って勝ってしまうのは、恐るべしとしか表現方法が見つからない。とかく退屈だと批判されがちなミヤオ兄弟の「モダン柔術」だが、膠着戦に持ち込めるごく一部の超一流選手との対戦でない限りは、彼らの試合ほど超攻撃的でダイナミックなものはないともいえる。

■ヨーロピアン・オープン2014 結果

【ルースター級】
優勝 カイオ・テハ(ブラザCTA)
準優勝 ニコラ・ギャラール(トゥーロンJJB)
3位 アンドレア・ベルデマーレ(サイクロン) 芝本幸司(トライフォース)

【ライトフェザー級】
優勝 ジョアオ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
準優勝 パウロ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
3位 シモーネ・フランチェスキーニ(サイクロン) トーマス・リスボア(アリアンシ)

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