【ADCC2019】66キロ級3位決定戦、低空テイクダウン&亀→引き込み戦法のパウロがルオトロに競り勝つ
【写真】若さ=強さと老練な強さの激突は、パウロに軍配が挙がった (C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー11回目は、66キロ級3位決定戦=パウロ・ミヤオ✖タイ・ルオトロの手に汗握る、スコアリングと極めの攻防を振り返りたい。
Text by Isamu Horiuchi
<66キロ以下級3位決定戦/10分1R+ExR>
パウロ・ミヤオ(ブラジル)
Def. by 本戦 2-0 マイナスポイント0-2 延長 2-0
タイ・ルオトロ(米国)
すぐに引き込んだミヤオは、ルオトロの手首を両手で掴んで足を絡めるラッソーの形を作るなど下から仕掛けるが、ルオトロは腰を引いて対処してミヤオの足を上から掴みながら左右へのパスを仕掛けていく。
ミヤオがインヴァーテッドから足を絡めてルオトロのバランスを崩すと、ルオトロは自らダイブして下になり上下が入れ替わった。
上からワキ差しパスを狙ったミヤオは、さらにルオトロの足をさばいて横に動いてパスを取りかける。
ルオトロがスクランブルをしたところでその背中に付いたミヤオは、体を動かして正対したルオトロの足を超えてマウントを奪取。しかしまだ4分過ぎということでノーポイントだ。
やがてヒザを入れてガードに戻したルオトロに対し、加点時間帯になるとパウロは改めて横へのパスを狙うが、腕を張って距離をとったルオトロはすかさず立ち上がることに成功した。
両者スタンドに戻ると、ここでパウロは迷わず座り込み、マイナスポイント1つと引き換えに下攻めを選択。
シッティングから前に出て足を絡めて崩そうと試みるミヤオと、腰を引いて防ぎながらダイナミックに飛んでのパスを狙うルオトロの攻防が続いた。
ミヤオはルオトロの右足首を両手で掴んで引き出すと、そこに自らの左足を内から絡めて固定し、そのまま立ち上がってシングルレッグへ。ルオトロは右足を抱えられながらもダースのグリップを作り、場外側で仰向けの形で締め上げるが、ミヤオは頭を抜いて見せ、上のポジションを取って2点を先制した。が、下になったルオトロはすぐにミヤオの両足首を掴んで腰を蹴るベーシックスイープ。ミヤオの体勢を崩して立ち上がってみせた。
残り2分半、両者スタンド状態から再開。ミヤオはテイクダウンを奪う気があるとは到底思えないような組みを見せ、両ヒザをつく。がぶったルオトロはすぐにダースチョークのグリップを作ると、ミヤオは頭を抜きながら引き込み。ミヤオのこの動きは、準決勝のタンキーニョ戦とは違って亀のポジションを確立したとはみなされず、ミヤオに2つ目のマイナスポイントが与えられた。ルール上、これでミヤオの取った2ポイントは相殺されることとなる。
残り1分。下からルオトロの右足に絡んだミヤオは、半回転して自らの右足をルオトロの足に絡めてヒザ固めの体勢で崩しにかかる。が、そのミヤオの右足の絡みを手で解除したルオトロは、その足を抱えてのヒザ十字へ。
ミヤオは上のポジションをとるが、足を離さないルオトロは、残り15秒の時点で完全にミヤオの右足を伸ばすと、さらにうつ伏せ状態から背中を反り上げる形で全力で極めにかかる。
並みの選手なら即タップとも思われる極まり方だったが、「足関節では決してタップをしない」ことで名高いミヤオは表情を変えずにポイントをずらして右足を曲げることに成功。そのままミヤオがバックを狙いにいったところで本戦が終了した。
両者スタンド状態から開始する延長戦。ミヤオはまたも非常に浅いタックルを仕掛けてヒザをつく。ルオトロが腰を引いて下がると接触がない以上、亀のポジションの成立は認められないと判断してかミヤオは再び立ち上がり、改めて浅いタックルに。今度はルオトロが正座するような形で対処すると、ミヤオはさらに亀のまま前に出て、数秒してからガードに戻った。これが亀のポジションがすでに成立した後の動きということで、マイナスポイントは付かず。ミヤオの計算通りの試合運びとなった。
ルオトロはミヤオの足を上から手で抑えつけながら横に動いてのパスを狙うが、ミヤオはそのたびにインヴァーテッドを作って対処して体勢を戻す。
残り3分を切ったところで、ミヤオはニースライスを狙ってきたルオトロの右足に絡んで50/50を作ると、そのまま後転してルオトロの体勢を崩して上になり、2点獲得。
下になったルオトロも、ミヤオの右足を掴んだまま上を取り返しにかかるが、ミヤオはうまくその足を引き抜いてルオトロを振りほどいて、無失点でスタンドに戻ってみせた。
残り1分で2点をリードしているミヤオは、ここでまたしても引き込み。3つ目のマイナスポイントを献上しながら下になる。
ルオトロは最後の望みを賭けてミヤオの足を取って内ヒールを仕掛けるが、当然ミヤオは表情を変えずやり過ごして試合終了。今大会、フラザトとマントヴァーニという世界レベルの業師二人を飲み込んだ16歳ルオトロの勢いを、ルールを熟知したミヤオが、卓越したポイントゲームの技術をもって見事に制してみせた一戦だった。