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【2014-2015】安藤晃司「とにかく今は用意された相手に勝つ」

Koji Ando【写真】日本のファンの前で4年以上試合をしていないが、海外で最も結果を残しているファイターの1人が安藤だ (C)MMAPLANET

2014年が終わり、2015年が始まった。2014年を振り返り、2015年に臨む──MMAPLANET縁のファイター達の声を年末年始特集としてお送りしたい。

第7弾は7月にONE FC初戦を戦い、11月にソロバベル・モレイラという強敵を下した安藤晃司にスポットを当てたい。日本のマットを離れて4年、アジアのプロモーションを主戦場にするようになり、紆余曲折を経験しながら6勝1敗という戦績を残し、日本ライト級のトップの一人に浮上した。最も日本で知られていない強豪の想いにメスを入れたい。

――11月、ONE FCでゾロという強敵を倒しました。その強敵を相手に終わってみると、それほど追い込まれることなく倒すことができました。

「1Rはしっかりと相手を見て、そこからどうやって戦うのかが見えたというのがあったのですが、でもあのまま判定になっても怖かった試合ではありました。とりあえずフィニッシュにできたことは良かったです」

――ゾロのローなど、打撃の圧力はどれほど強かったですか。

「僕の右手を潰しに来て、距離を取って蹴りにつなげる。前に出るとヒザを狙う。そういう作戦だったと思います。だから、最初はプレッシャーの掛け合いになって。これまで大抵のケースで僕が圧力を掛けると、相手は下ってくれていたのが、ゾロはガンガン前に出てきました。ただし、プレッシャーのなかで前に出てきたので、疲れてしまったんだと思います。

決して体力がなかったということでなく、プレッシャーの掛け合いで疲弊していきました。正直、練習でも攻めていなくても、プレッシャーで相手が疲れることがままあるんです。そういう状況でも2Rにもヒザとかガンガン来たので、3R目も動いて使い切ってしまったんじゃないでしょうか。そこを冷静に見ることができたのは良かったと思います」

――2Rにボディへのパンチを効かせました。

「ボディは何回かストレートが入りましたね」

――ゾロは受けに回ると、気持ち的に追い込まれるような部分があったように見えましたが、実際に戦ってみてどうでしたか。

「ロジャー・フエルタ戦とか、他の試合を見ていても、自分が攻めている時は凄く強いんですよ。相手が嫌がってくるとガンガン攻めて。ただ、上手く行かない時は脆いかなという気はしていました」

――3Rは試合を決めるつもりで戦っていましたか。

【写真】2年振りの復帰戦とはいえ、ゾロのホームであるシンガポールでしっかりと勝てたことは大きい(C)ONE FC

【写真】2年振りの復帰戦とはいえ、ゾロのホームであるシンガポールでしっかりと勝てたことは大きい(C)ONE FC

「1Rは様子を見ていたので、あのままでは勝てない。だから2Rからは攻めようと思っていたのですが、向こうも出てきました。2Rが終わった時に、ゾロが嫌がっているのは分かったので、倒しに行こうと思いました。ゾロも3Rに賭けていたと思うので、最初はガンガン来ていましたが、残り2分ぐらいで一気に失速したのが分かりました。あの時、『ここだっ!』って攻めたんです」

――これまでRoad FCでソウル、Legend FCではマカオやクアラルンプール、そしてONE FCでは台北とアジア各国の大都市で試合をしてきました。戦う上で、シンガポールと他の都市で違いは感じましたか。

「熱は一番高かったと思います。満員で盛り上がりもあった今回、初めてパブリック計量を経験したのですが、サラッと終わってしんどくはなかったです。移動も10分、15分で楽でしたし」

――Legendが活動を停止した状態で2014年が明け、ONE FCと契約しラファエル・ヌネス、ゾロを破って1年の終わりを迎えます。

「まぁ一応は良かったかとは思います。僕は常に切羽詰まっているというか、負けたら終わりと思ってやっているので。そこは覚悟を持ってやるしかないので」

――状況は好転したとポジディブに捉えることはできますか。

「いやぁ、気持ち的には何も変わっていないですね。正直な話、僕がOFCでチャンピンになっても、その感覚は変わらないでしょうし。それで大金が貰えるわけじゃない。今、プロの格闘家として生きていくとして、最低限のところにいると思います。もっともっとお金も稼ぎたいですし。稼がないと、もう30歳の1人の大人としてダメですし。その辺りは切羽詰まっています」

――あのKO勝ちでアドレナリンが出まくっているはずなのに、タイトル挑戦に関しては随分と遠慮がちにアピールしていました。

「ハハハハ。特にチャンピオンに対して拘りはないんですけど、今はOFCと契約していて他の場所で戦う状況ではない。ここでやっているんだったら、チャンピオンになろうと。そうなれば契約内容も変わってくるようなので。そういう意味でのコメントでしかないです」

――青木選手の反応は気にならなかったですか。

「そこは別に気にしていなかったです。OFCだと誰と戦っても厳しいので。そういう意味でも対戦相手はそれほど気にしていないです」

――さきほどOFCのチャンピオンになっても変わらないという風に言われていましたが、青木選手に勝つとそこは変わってくるのではないでしょうか。

「あんまり僕は名前を出したくなくて、言及はしないのですが、僕を応援、サポートしてくれている人達もソレを願っている部分、やって欲しいという部分もあると思うので。一番の恩返しになるとは思っています」

――名前を出したくないのは?

「う~ん、何て言うのか……。別にそこが全ての目標ではないからです。最初に格闘技を始めた時に、UFCに出たいという目標がありました。でも、今UFCに出ている日本人が強いかといえば、僕はそうとも思わない。ただ、タイミングが合って契約できたとしか正直、思っていないんです。それでもUFCに出ていないと……OFCで強い選手に勝っても、それほど取り上げてもらえない。

OFCで僕が戦ってきた選手は、UFCの下位の選手とレベルの差なんて全然ない。逆に強いかもしれない。でも、そんなことを僕が言ってもしょうがない。だからOFCに出ていて、チャンピオンになるとか僕にとって全てじゃない。とにかく今は用意された相手に勝つ。そのことしか、考えていないです」

――OFCのマッチメイクも一筋縄にいかないので……。11月にイヴォルブのゾロに勝ったのだから、春には世界戦で青木選手に挑戦という流れになっても良いのですが、青木選手はビビアーノ・フェルナンデス戦が持ち上がっています。

「それもチラッと見ました。そこはOFCに任せるしかないですよね」

――OFCのライト級はヴィシール・コロッサやロジャー・フエルタ、ゾロ、ヌネスと強豪が揃っています。そのなかで12月にフィリピンでエドゥアルド・フォラヤンに勝ったティモフィ・ナシューヒンのようなロシア人もルースターに加わりました。

「ハハハ。ナラントガラグの若いバージョンみたいな。凄く勢いがあるし、正直、怖いですね」

――フォラヤンに打ち勝てるファイターは、アジア圏にはそうはいない。あの試合を見て、あぁ、安藤選手は当てられるなぁと思った次第です(苦笑)。

「ハイ。やるだろうなぁというのは……。やりたくないですけど(苦笑)」

――そのつもりでいますか。

「そのつもりでいないと、いきなり1カ月前にやれって言われても困るんで、そのつもりではいます」

<この項、続く>

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