この星の格闘技を追いかける

【on this day in】1月05日──2013年

01 05 13【写真】エジエネ・ゴメスの猛攻に晒されながら、マスター・ジャパンで培ったMMAを最後まで見せようとしたHIROKO (C)GONGKAKUTOGI

Invicta FC05
@カンザス州カンザスシティ、メモリアルホール
「今、手もとにある資料で試合結果だけを眺めると、ジャッジ2人が29-28をつけた(※残り1人は30-27)0-3の判定負けはごくごく普通の敗北だ。前述したように2人のジャッジが1つのラウンドはHIROKOにつけているのだから、フルマークの判定負けより健闘したという印象すら与えている。2年前、ライブストリーミングで視聴したHIROKO×エジエネ・ゴメスの一戦の記憶は、そんな生易しいモノではなかった。文字通り、肩回りの筋肉など男と見間違うかのような体格をしたゴメスが、テイクダウンを奪われ立ち上がろうとしたHIROKOのバックを制し、後方から打ち込んだパンチの連打、豪快な左右のフックは彼女の命を削っているような凶暴さに満ち溢れていた。いつまでも経ってもSMクラブで働いていたことが話題になっていたHIROKOの取材を、初めてこの試合前に行なった。私をアタシ、あるいはアッシと発音する彼女の瞳が、まるで僕の娘が幼稚園に上がる前に見せていたような真っ直ぐで曇りがないことに驚かされた。お母さんがHIROKOの米国での試合の世話をした人に宛てた感謝の手紙をサプライズで用意して読んでもらうと、その瞳が一気に涙で溢れた。彼女は常に真っ白で、周囲の人間の色に染まる。だから、色んな経験をしてきた。そして、マスター・ジャパンで汗を流してきたMMAを見せようとするたびに、ゴメスの猛攻に晒された。結果、試合後に2度に渡り吐血し、眼窩底、頬骨、鼻骨を骨折。現地で安静を強いられ――この試合を最後に彼女は現役を退いた。真っ白なHIROKO、彼女のMMAはこれ以上ないくらい真っ直ぐだった。年間、何百試合を目にするMMA。直後は深く脳裏に刻まれた試合内容も、すぐに忘却の彼方に葬られる。でも、この試合で彼女の頑張りが招いた凄惨さは決して忘れることはない」

on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。

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