【Bloom FC05】「誰かのためでなく、自分のために戦います」漢・上田将年が原点回帰のイ・ギュヒョン戦
 【写真】ワクワクが伝わってくる上田将年、38歳 (C)MMAPLANET
【写真】ワクワクが伝わってくる上田将年、38歳 (C)MMAPLANET
11月2日(日)に福岡市中央区のアクロス福岡でBoom FC05が開催され、メインで上田将年が韓国のイ・ギュヒョンと対戦する。
Text by Manabu Takashima
熱血漢。九州男児、漢・上田将年は今年の1月にBreakthrough Combatで前Black Combatフライ級王者イ・ジョンヨンを相手に、その熱血漢らしからぬ手が出ない、前に出ないファイトに終始し判定で敗れた。
勝敗が絶対のMMAにあって、勝ち負けでなく上田らしさがまるで見えなかった試合。その絶対の要因は、戦術としてイ・ジョンヨンが一枚上だったことである一方で、敗因でなく自分らしい戦いができなかった理由は、上田の身の内に隠れていた。
あれから10カ月、自分のために戦うと言い切る上田将年がいた。
ドロドロの試合をします』といつも言っていて。でも、それって試合前から判定有りきで
――約1年振りに地元福岡で、Bloom FCのメインを戦う上田選手です。試合としては2月に今はなきBreakthrough Combatのイ・ジュンヨン戦以来、約8カ月振りのファイトとなります。そして、そのイ・ジュンヨン戦は本当に納得がいかないファイトだったのではないでしょうか。
「本当にその通りですね……。正直、あの試合はメチャクチャ自信をもって臨みました。それが全く作戦というかプランが外れてしまったこともあったのですが、試合後も1カ月間は練習ができなくて。その間に自分の何がいけなかったのか、ずっと考えていました」
――プランが外れたといことですが、元々の作戦というのは?
「圧を掛けて、打撃で削ること。それも喧嘩四つになるのでジャブを余り使わず、三日月や削って。それから右を使う」
――喧嘩四つ?
 「自分がチェックしていたイ・ジュンヨン選手の試合は、全てサウスポーだったんです。でも、試合が始まってプレスを掛けるとオーソで構えていて。セコンドの原田(惟紘)さんも、『サウスポーになるから』という風な指示で。
「自分がチェックしていたイ・ジュンヨン選手の試合は、全てサウスポーだったんです。でも、試合が始まってプレスを掛けるとオーソで構えていて。セコンドの原田(惟紘)さんも、『サウスポーになるから』という風な指示で。
僕も『アレ?』と思いつつ、右手が前になるのを待っていました。でも、全然サウスポーにならない。そしてカーフを蹴られる。まぁ、このカーフは大丈夫だと最初は思いました。それが3発目ぐらいで、一気に効かされてしまって。2Rも、いつサウスポーになるんだと待っていたけど、ならない。加えて彼も積極的に前に出てくることはなくて、待ちの姿勢でカーフを蹴ってくる。
 最終回になって、もう攻めないといけないと切り替えた時にはカーフのダメージが蓄積し、踏ん張りがきかなくなって前に出ることができなくなっていました」
最終回になって、もう攻めないといけないと切り替えた時にはカーフのダメージが蓄積し、踏ん張りがきかなくなって前に出ることができなくなっていました」
――う~ん……。
「試合後、イ・ジュンヨン選手と話をしたのですが、凄く自分のことを研究していたことが分かりました。パンクラスの自分の試合でカーフの受け方が悪かったのを見て、オーソドックスで構えてカーフを蹴る。そういう風に創ってきたそうです。彼は『こんな戦い方をしてゴメンなさい』と言っていましたけど、完全に向うの作戦勝ちでした。してやられました……と同時に何を試合でやるのか、決めすぎていましたね」
――ハイ、相手あり気だと居着いてしまいます。
「完全にソレにつきました。自分から行くということでなく、相手がサウスポーでこう来るから、ココを狙うというような。待ちの待ちになっていました。ここで自分は、どう思いよったのか。見たくない試合映像をチェックして、ずっと考えて書き出していました。このメンタルで、俺は次も戦えるのかって」
――う~ん……。にしても、ですよ。キャリア14年、これまでにいくらでもオーソと戦ってきたわけでないですか。それなのに、アジャストできないというのは正直、残念です。上田将年は、そんなファイターじゃないだろうと。
「そこなんですよ。実はこのままじゃダメだと思って、メンタルコーチングに興味があったので、自分を変えようと4月からメンタルコーチに就いてもらうことしました。
自分のなかで、どこかメンタル・コーチをつけるのはメンタルが弱い選手がすること――そんな風に思っていた時期もあったのですが、いざコーチングをしてもらうと第3者を通して、自分と対話できるようになりました。
ここ最近の自分は『ドロドロの試合をします』といつも言っていて。でも、それって試合前から判定有りきで、『俺はこういう戦い方しかできないから』と過去の試合結果や経験値で自分を勝手に作り上げてしまっていました。
何より格闘技の本質である倒す・倒されるというゴールに向かっていない。メンタル・コーチングを受けている時に、自分が何も背負っていなかった頃、デビュー直後、パンクラスで『東京で戦うぞ』と思っていた時は、格闘技の本質を理解して倒しに行っていた。倒せない時はドロドロの試合になったけど、勝つことができていました」
――ドロドロはプロセスなのに、それが目的になってしまっていたと。
「ハイ。ドロドロを格闘技の本質だと見立ててしまっていたと、気づきました。過去の試合を見るとパンクラスで戦い始めた時。リルデシ(リマ・ディアス)と戦った時。小川(徹)さんとの1戦目に2Rでガス欠を起こして、3Rにボコボコにされた時。杉山(廣平)選手と戦った時。あの頃って、ゴールを目指し勝ちに行っていました。
それをドロドロの試合をすると言うようになってからは、以前は攻めていたところで『3Rまで行くから、ここでスタミナをロスできない』という思考で待ってしまうようになりました。ただ相手が攻めてくれる試合が続くと、そこも分かっていなかったです。でもイ・ジュンヨンも待ちの姿勢だったから、自分が行っていないことが浮き彫りになって……」
――なるほどです。相手がモンゴルのツェルマー・オトゴンバヤルやフィリピンのアリエル・オリバースだと、対応していることで待ちの姿勢という風に見えなかったです。だからこそイ・ジュンヨン戦はワーストバウトだと思いました。
「僕も試合が終わってから、原田さんに『俺、やってしまって。終わりです』って落ち込みましたね。だから、自分を変えないといけないと思ったんです。あんな試合を応援してくれる人たちに見せちゃいけないし、37歳までやってきた自分にさせちゃいけないと」
――そこでメンタル・コーチングを採り入れた。良い機会になったかと。とろで先ほど試合後は1カ月練習ができなかったと言われていたのは、カーフのダメージがあったからですか。
「そうですね。ペチペチという感じの蹴りだったのですが、ずっと同じところを蹴られてしまって。そのダメージは相当でした。病院で診てもらうと1カ月は練習しないようにと。なので4月に練習を再開しました」
『上田さん、受けるつもりでしょ。でも、この状況でオトゴンバートルと戦っても、勝負論がない』と言われて……
――そこから7カ月空いたのは?
「実は8月の終わりにオトゴンバートル・ボルドバートル戦という話が長谷川(賢)さんからありました」
――開催が未発表で、幻のまま終わった8月の新宿イベントですね。
「あぁ、それだと思います。最初は相手は決まっていなくて、『探します』ということだったので8月に照準を合わせていました。それでオトゴンバートルという話が来て、『ちょっと考えさせてください』と。で、回りに相談させてもらったなかでずっと自分を見てくれていた高校の後輩から、『上田さん、受けるつもりでしょ。でも、この状況でオトゴンバートルと戦っても、勝負論がない』と言われて……。
その後輩が言うのは、前の試合でBlack Combatの前チャンピオンに勝っていれば、あの強いモンゴルの若い選手と戦うことに格闘技ファンは喜ぶカードになる。でも、しょっぱい試合で負けた上田さんとゴリゴリのオトゴンバートルの試合を見たいかと言われたら……、もうどうなるのか。分かっとうやんと。
『逃げる、逃げじゃないじゃない。今じゃない』と言われてしまったんですよね。もう『その通りなんよ』って、自分も返事して。どういう気持ちで今、オトゴンバートルと戦えるのかと。それをそのままハセケンさんに話させてもらいました。『そうですよね。2月に勝っていれば』とハセケンさんも、分かってくれましたね。
そこで他の対戦相手の話もありましたけど、自分はやりたかったけどまとまらなかったです。結果、大会自体もなくなって……。もう8月になっていたので、11月にBloom FCがあると(奥宮)ハントさんから聞いていて。ここでしっかりと創って11月に戦えば、年に2回戦ったことになる。そこで、このタイミングで戦うことを決めました」
――地元福岡での試合は仕切り直しの場として、相応しいような気もします。
「そうですね。そこは大きいです。ハントさんも色々なところに足を伸ばして海外とのコネクションを増やしてくれています。地方の大会ながら、これだけ海外の選手を招聘してくれる。これは本当に凄いことだと思っています。
そういう大会ですし、自分のなかで仕切り直しという部分では創りやすいというのはあります」
10日間ほどカザフスタンの方に練習に
――もう、ここまでの話で上田選手が次の試合で何を見せたいと思っているのか。それは分かってきますが、本人の口からお願いします。
「もう、ドロドロにはしません(笑)。1Rにアームロックで捻り上げて勝ちます。ドロドロになろうとも、攻める気持ちを持ち続けます。それが、僕のなかの正解であって。練習もフィニッシュを狙うようにして。失敗してもゴールを目指す。そういう練習を意識してというよりも、自然にできるようになってきました。
あと、自分のなかで刺激を受けて自信にもなったことがありまして」
――おお、それはどういったことでしょうか。
「実は先月、10日間ほどカザフスタンの方に練習に行っていたんです」
――えっ?
「11月9日にネオブラのフライ級決勝で戦う柴山鷹成という選手が同じチーム(=G-Force)にいまして。鷹成のお父さんが、昔から自分のサポートをしてくれていて。そのお父さんがカザフスタンでビジネスをしているんことで、鷹成は年に1度ほどカザフスタンで練習をしてきたんですよ。
で、9月に行くと聞いて。海外での練習って、僕がやり残したことの一つだったので。そのお父さんに相談させてもらって、アルマトイのダル・チームに行ってきました」
――ダル・チームといえばアス・アルバマエフやシャクハト・ラクモノフが母国にいるときは練習をしているジムではないですか!!
「ハイ。アルマバエフは一緒に練習はしていないですけど、ジムにいました」
――にしても、思い切った行動です。
「あと2年で40歳、このタイミングじゃないと中央アジアで練習なんて行けなくなるかもしれないと思って。行くなら、今しかないと」
――素晴らしいですね。
「そこでNAIZA FCの元チャンピオンだとか、連勝中だっていうバリバリの連中と到着翌日から選手練で一緒にやらせてもらいました。ダル・チームでフライ級の選手と練習をしていて、通用する部分と通用しない部分が明確になって。
本当に地力はあります。でも、技の精度は自分らの方がある。崩してからの仕掛けというベクトルが、凄い力でやってきます。でもスイッチやアームロックで返すことができました。それも20代の選手達を相手に。『俺、やれるやん』って。『鷹成、俺らやれるやん!!』って(笑)」
――精神的なステロイドを投入してしまいましたね(笑)。
「いやぁ、もう凄い高揚感でした(笑)でも、通用しないところがある。まるでバックをはがすことができなくて。バックコントロール中心で、殴って削るという戦い方に封じ込まれるとか。そうやってコントロールされても、通じた部分があることで自信になりました。『まだ俺やれるね。頑張れるね』と。何より向うからスパーリングの相手をしてくれって言われて。
それが嬉しかったです。カザフスタンの連中とやりやって、仲間になって。凄く充実した練習があって、試合がもう決まっていることでメンタル的も良い状態でした。本当に、カザフスタンに行って良かったです。格闘技をやっていて良かったと思いました。あの経験をしてきたことで、本当に次の試合に楽しみでならないんです」
ゴールを目指す、一本を取りに行く。倒しに行きます
――充実しまくりの上田選手ですが、改めてイ・ギュヒョン戦への意気込みをお願いします。
「今回は誰かのためでなく、自分のために戦います。ここ数年、応援してくれる人のため。若い選手ために手本になるよう戦うとか。いつの間にか、自分自身のために戦ってあげていないと思いました。
そう思うようになった……刺激を貰ったのが、春日井たけしの復活インタビューでした。『この男、熱いな』って。アレを読み、メンタル・コーチから指導を受けて……誰かのためでなく、自分のために戦おうと。こんなに長い間、格闘技を続けているのはやっぱり楽しいから。自分が楽しいから。自分がコレしかないと思っているから。コレが生きがいだと自分が思っているから。
だからこそ今回は自分のため……相手も関係ないです。強い弱いでもない。自分がやると決めたことを徹底してやる。それが今回の自分のテーマです。ゴールを目指す、一本を取りに行く。倒しに行きます」
■Bloom FC05対戦カード
<フライ級/5分3R>
上田将年(日本)
イ・ギュヒョン(韓国)
<58キロ契約/5分3R>
岡本瞬(日本)
ハ・テグン(韓国)
<バンタム級/5分3R>
中尾あづき(日本)
キム・ヨンジ(韓国)
<フェザー級/5分2R>
柿原”PR”昇汰(日本)
パク・ジョンジュン(韓国)
<バンタム級/5分2R>
永留惇平(日本)
パク・ソンヒョン(韓国)
<フライ級/5分2R>
堺龍平(日本)
荒木凌(日本)
<ストロー級/5分2R>
佐野光輝(日本)
竹下里弘(日本)
<フェザー級/5分2R>
がんばるマン林(日本)
深町拓海(日本)
<キック 59キロ契約/3分2R>
田上健太(日本)
まこと(日本)
<ストロー級/5分2R>
Takumi(日本)
下田博龍(日本)
<フライ級/5分2R>
岡田臣祐(日本)
三坂崇禮(日本)
<バンタム級/5分2R>
久保智大(日本)
桑原伶(日本)
<フライ級/5分2R>
大塚翔太(日本)
南優人(日本)
<フェザー級/5分2R>
古賀輝哉(日本)
野口士雄(日本)
<キック70.8キロ契約/3分2R>
戸高尚輝(日本)
小田宏樹(日本)
<キック63キロ契約/3分2R>
高尾海音(日本)
山本涼也(日本)
<グラップリング58キロ契約/5分1R>
脇元凛音(日本)
川口奏(日本)
 






















 
								 
								 
								 
								 
								
