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【POUNDOUT02】プロ3戦目=武田勇輝戦へ、松井涼「結局僕がやるべきことはテイクダウンすること」

【写真】最短ルートを突っ走るMMAファイター人生になりそうだ (C)MMAPLANET

22日(日)、千葉市中央区のTKOガーデンシティホール千葉で開催されるPOUNDOUT02にて、松井涼が武田勇輝と対戦する。
text by Takumi Nakamura

専修大学レスリング部出身、2017年天皇杯全日本選手権グレコ63キロ級準優勝という実績を残す松井は、アマチュア時代の中村倫也の試合を見てMMAに興味を持ち格闘DREAMERSを経て、2024年8月にパンクラスでプロデビューを果たした。今年3月Pancrase352での千種純平戦では、当時5連勝中だった千種からテイクダウンを奪い続けて判定勝利を掴んだ。

MMAのキャリアを重ねることで、MMAとレスリングをより紐づけることができるようになったという松井。プロ3戦目となる武田戦に向けて、より洗練された松井流のレスリングMMAを見せたいと語った。


スタミナもそうなんですけど、結局考え方や気持ちのところが大きい

――試合直前のインタビューありがとうございます(※取材は17日に行われた)。試合に向けた仕上がりはいかがですか。

「バッチリです。いい感じに調整できていて、あとは体重を落とすだけなので問題ないかなと思っています」

――松井選手は今回がプロ3戦目となります。過去2戦でどのようなことを経験できましたか。

「自分のレスリング力をより信頼できるようになってきたというか、MMAをやっていく上で自分の軸になっていくものはやっぱりレスリングだということを改めて実感しました。今回の試合もそうですし、レスリングを軸に試合を組み立てて、どんどん自分が理想にしているMMAに近づけていけたらいいなと思っています」

――松井選手はレスリングのバックボーンがあり、結果的にレスリングを活かすスタイルになったのは自然の流れですか。

「自然に、ですね。自分はもともとMMA自体を見てきたわけではなくて、3年前に(中村)倫也先輩の試合を見てパッとMMAに興味を持ったので、ほとんどMMAの知識がないままMMAを始めたんですよ。だからどうしても打撃に対してはネガティブなイメージというか、難しいイメージがあったので、打撃でやってやろうみたいな考えは最初からなかったです。あくまで自分が持っているレスリング力、レスリングベースのフィジカル、身体操作と身体能力を生かして戦っていきたいというのは、MMAを始めた時から決めていました」

――前回3月の千種純平戦では何度もテイクダウンに成功しましたが、MMAにおける自分のレスリング力に自信を持つことが出来ましたか。

「はい。相手は強い選手だと思っていたし、不安も正直あったんですけど、あれだけできたのは、相当自分の中で自信になりましたね」

――レスリングの技術はMMAで通用すると思いますが、試合時間は全く違いますし、レスリングの実績がある選手から見てもMMAはハードな競技ですよね。

「MMAはめちゃくちゃしんどいですよ(苦笑)。レスリングで15分間も戦うことはないので」

――松井選手の場合はもともと持っているレスリングの技術を如何にMMA用に微調整していったのですか。

「どちらかというと僕はスタミナに不安がある方で、レスリングの配分も考えてはいたんですけど、なんか最近はもうそんなことを考えてやっていられないなというところがありますね。先日ショーン・オマリーに勝ったマラブ(・デヴァリシビリ)もそうですけど、自分からどんどん前に出てテイクダウンに入って、切られても同じことをずっと続けていて。それはスタミナもそうなんですけど、結局考え方や気持ちのところが大きいのかなって。

常に試合の時に気持ちを切らさず、自分がやるべきことを淡々とやりきろうとすることの方が大事なんじゃないかなと感じるようになってきました。例えば昔の僕はスタミナがないなら、たくさん走って練習量を増やした方がいいと思うタイプで、それでよく怪我をしていたんですよ。で、怪我をしちゃうと余計に練習できなくなって焦る…でも練習するみたいな。レスリング時代からそんな感じで、試合でいいパフォーマンスを出せないどころか、怪我で欠場することもあったんです」

――まさに悪循環ですね。

「はい。怪我をして練習するから、今度は別の部位を痛めて、怪我の箇所だけ増えていくみたいな。レスリング時代はその悪循環に気づかなかったんですけど、この1年で練習のやり方や考え方を見つめ直したら、コンスタントに試合にも出られるようになってきたし、ちゃんと継続して練習できる分、動きがいいんですよね。それが前回の試合のパフォーマンスにつながったと思います」

――てっきり僕は練習量を増やしたと思っていたのですが、練習そのものを見つめ直したんですね。

「はい。むしろ今の方が練習量は減っていて、1回1回の練習をしっかりこなす・やりきるところを重視するようになったことで、自分のMMAそのものの流れが良くなっていると感じています」

――先ほどはマラブの話も出ましたが、マラブは常に自分が攻めているというメンタルで戦っているように思います。そこも松井選手は見習っている部分ですか。

「テイクダウンを切られる? 関係ねえよ! みたいな、あの感じですよね(笑)。だから本当に今回は自分の試合直前にマラブの試合を見られたことがすごく自信になったというか。マラブを見ていると、レスラーはあの戦い方に自信を持っていいんだなと思いました」

――純粋な打撃スキルでいったら間違いなくオマリーの方がマラブより上だと思いますが、それでもマラブは積極的に打撃を出していくところもいいと思います。上手い下手ではなくて攻撃を出すことが根本的に大事というか。

「僕は絶対にそこが大事だと思います。マラブは自分の中に『俺のやるべきことはこれだ!』という強い信念があるじゃないですか。本当に自分で自分を信頼しているし、こういうことなんだなと思いました」

――MMAを始めてからは他の試合も見て勉強するようになったのですか。

「できる限り頑張って見るようにしています。僕も知らないことだらけで、周りの方が色々と教えてくれて『こういう選手を見た方がいいよ』とかアドバイスしてくれるし、それこそ身近にいる仲間たちが結果を出しているので、その仲間の試合を見る機会は増えました」

――身近に中村倫也選手や中村京一郎選手のように海外にチャレンジしている選手がいることも刺激になっていますか。

「すごくいい刺激ですね。そして自信になります。僕も2人についていくじゃないけど、同じように波に乗って強くなっていきたいなと日々思っています」

――さて今回の対戦相手の武田選手にはどんな印象を持っていますか。

「基本的には打撃が強い選手だと思うんですけど、マスタージャパン所属ということで打撃も組み技も両方できるイメージです。これが強いというよりも、トータル的にMMAをやってくるんじゃないかなと思っています。僕が打撃のアドバンテージをとることはないと思うので、結局僕がやるべきことはテイクダウンすることだし、相手に対してどうこうではなく、どんな相手が来ても自分のやるべきことをやり続けるイメージです」

――格闘DREAMERSに出ていた時は格闘家とサラリーマンの二足の草鞋を履いていましたが、今もサラリーマンは続けられているのですか。

「もうサラリーマンは辞めて、格闘技に集中しています。さすがにサラリーマンと格闘家の両立は難しいと思ったし、もっと練習して格闘家として結果を出したいという気持ちが強くなりました」

――仕事を辞めるというのは一大決心ではなかったですか。

「僕としてはそこまで大きい決断でもないのかなって思っていました(笑)。もともとレスリング時代にサポートしていただいた会社に就職する形で、本当に会社自体は本当にいい会社だったのですが、僕自身がレスリング以上に打ち込めるものを見つけちゃったので(退職は)仕方ないかなと。あとは今の奥さんも僕が格闘技をやることを応戦してくれていて、背中を押してくれたんですよね。そういう色んな人たちがいて、格闘技が出来ている感じです」

時間があるとは思っていない

――松井選手はMMAという競技が純粋に好きで、MMAという競技を追求することが好きなようですね。

「そうですね。言い方は難しいんですけど、初めて倫也先輩のアマチュアのMMAの試合を見て『なんだ!? これは!』と思ったんですよ。あの試合は倫也先輩が勝ったんですけど、一回テイクダウンに入られたんです。普通に考えたら倫也先輩がテイクダウンに入られるなんてありえないじゃないですか。でもそういうありえないことが起きてしまうのがMMAで、自分はそこにMMAの面白さを感じました。それで倫也先輩の試合を見た次の日にはジムに入会していたので、そのくらい衝撃的でしたね」

――例えば松井選手クラスのレスリングのバックボーンがある選手がMMAに転向することで、もっとMMAで使えるレスリング技術が出てくるのではないかという期待もあります。

「自分も頭の中でMMAとレスリングを別で考えていたんですけど、ちょっとずつMMAだったらこうなる、レスリングだったらこうなる…というところを少しずつ紐づけている感じですね。当たり前ですけどレスリングとMMAは距離も立ち位置も違うので、MMAではレスリングで無意識にやっていたことを意識してやらなければいけない。ある意味、MMAをやることでレスリングのことを思い出して『こういう場合はこうだ』というのをつなげています。その作業を毎日繰り返していると、色んなところでレスリングの技術がリンクしていくんですよ。それこそ組み技だけじゃなく、レスリングと打撃がつながることもあるし……だからMMAってめちゃくちゃ面白いんですよ(笑)」

――こうして話を聞いていても松井選手がMMAを楽しんでいることが伝わってきます(笑)。

「あと京一郎や倫也先輩も結構考えるタイプで言語化するのも上手いから、それがものすごく助かりますね。僕が練習している時に『こうしたらいいんじゃない?』や『レスリングだったらどうする?』とヒントをくれるんで、そこからどんどん広がっていきますね」

――ここからの松井選手のMMAファイターとしての目標を聞かせてもらえますか。

「僕もMMAをやる以上は世界を目指して戦いたいので、来年のRoad to UFCに繋がるような試合をやっていきたいですね今回はPOUNDOUTに出ますが、次からはまたパンクラスで試合をして、パンクラスのベルトを巻いて、RTUにつなげたいと思っています。僕は今年30歳で、時間があるとは思っていないので、この1~2年が勝負だと思っています。怪我がなければ今年はどんどん試合をしていきたいです」

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