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【DEEP TOKYO Impact2025#03】窪田との再戦にKO勝利。雅駿介「DEEPのベルトが欲しい。ただ……」

【写真】サッカーをこよなく愛する雅。取材日は95-96シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのユニフォームを着用していた(C)TAKUMI NAKAMURA

5月25日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されたDEEP JEWELS49とDEEP TOKYO IMPACT2025#03。そのメインイベントで雅駿介が窪田泰斗に2RKO勝ちを収めた。
text by Takumi Nakamura

雅と窪田は2023年11月に対戦し、雅が判定勝利。今回は約1年半ぶりのリマッチとなったが、結果は雅がKOで窪田のリベンジを退けた。福田龍彌戦のKO負けとノーコンテストに終わった谷岡祐樹戦を経て、コンディショニングや練習への取り組み方を見直し、2連続KO勝利となった雅。窪田戦を振り返りつつ、今後の目標を語ってくれた。


自分の首相撲をMMA用にアップデートしている

――前回の窪田泰斗戦では序盤から雅選手が打撃と首相撲でペースを掴み、最後は右ストレートでのKO勝ちという結果でした。首相撲で攻めるというのは作戦として考えていたのですか。

「今回は約1年半ぶりの再戦で、前回対戦した時は僕が投げて寝かして制圧したという内容だったんです。それで今回自分が四つ組みに行ったら、向こうは頭を下げて胸を合わせないようにしたのが分かったんです。僕にテイクダウンされないようにめっちゃ対策してきたんだなと。それで僕は首相撲で攻めようという感じで切り替えました。あとは首相撲の展開になった時、相手のリアクションが良くなかったんで、そこを起点に作ろうかなと思いました」

――最初から首相撲で削る作戦というより、試合中に窪田選手とコンタクトして戦い方を選択したわけですね。

「今回石渡(伸太郎)さんから『組みで制圧して勝つんだよ』、八隅(孝平)さんから『相手はサウスポーで蹴りのリアクションが良くないから、ムエタイの蹴りの距離でコントロールしよう。ケージレスリングでも首相撲を混ぜて削った方がテイクダウンも取りやすいと思う』と言われていたんですね。それで2人の意見をミックスさせつつ、自分でファイトキャンプの中のスパーリングの感覚で作戦を組みました」

――では色々なシチュエーションに対応できるようにしていたのですか。

「そうですね。前回勝っていることは忘れて油断しないように、相手が徹底的にこちらの対策を練ってきている想定で先入観をなくして戦おうと思っていました。そのうえで相手の出方次第で戦い方を変えるというか、自分の戦いを押し付ける試合をすれば、自分のゲームになると思っていました」

――首相撲に関しては最初からかなりいい形で組めていましたよね。ここの攻防では差があると感じましたか。

「まず首相撲そのものの技術に差があると思ったのと、やっぱりMMAは組みになったら脇を差すゲームじゃないですか。首相撲になっても脇を差した方が強いし、首相撲は相手の頭をロックするので脇が空きがちなんですよね。そうなると首相撲に持ち込んで脇を差されてサバ折りで倒されて…となることが多いんです。僕も首相撲をやる時は脇を差されないように意識しているし、そういう組み方・ロックをしているんですよ。そういう部分で自分の首相撲もMMA用にアップデートしています。他の選手はそこまで意識しないで首をロックしにいくから、脇を差されてテイクダウンされる→首相撲を使わない、ということが多いんだと思います」

――なるほど。雅選手のなかではMMA仕様の首相撲があるわけですね。

「そうですね。MMAはグローブ的に相手の手首を掴むコントロールも出来るし、M小手を巻いて組むこともできるので、かなり首相撲の幅が広がります。そこは八隅さんが詳しくて、八隅さんはランバー(・ソムデートM16)さんからムエタイを教わって、レスリング的な組みと首相撲をミックスさせた組み手をたくさん知ってるんですよ。それを参考にしています」

――この試合を見ていて思ったのですが、相手にケージを背負わせると首相撲はやりやすいですよね。

「めっちゃやりやすいです。相手は腰が引けなくなって、逆にこちらは腰を引けるので動きの幅が大分広がります。また自分の頭で相手の顎の下を差しちゃえば、相手はもう何もできなくなる状態になるんで。今回の試合でいうと、最初に自分の打撃が当たって、首相撲でもすぐに相手をコントロール出来て、最初から上手くいきすぎたんですよね。それが想定外というか、ヒザ蹴りも雑に打っちゃったんですよ。八隅さんからはもっと冷静にコントロールして焦らずヒザを蹴れば楽に勝てたと思うと言われたし、石渡さんからも首相撲からテイクダウンまで繋げていたらパウンドで終わっていたんじゃない?と言われて、まだまだ改善の余地はありますね」

――また序盤から雅選手はかなりハイペースで、いつもより攻撃のテンポが速いと思ったのですが、あれは意図してそうしていたのですか。

「いや、そういうわけではないです。ただ僕も試合を見返した時に、最初からすごい攻めてるなと思いました。自分の調子が良かったのもあると思うし、最初からパンチが当たって、それで行き過ぎた感じですね。自分が最初に考えていた距離設定よりもどんどんパンチが当たるから、距離が近くなっちゃったんです。それで逆に左ストレートを被弾して効かされてしまいました(苦笑)。そういう部分はもっとクレバーに戦って、自分の距離を保って攻めた方がよかったです」

――2Rからは少し距離を遠く設定して蹴りを多用しましたが、そこはインターバル中に修正したのですか。

「はい。1Rが終わってインターバルに入った時に、石渡さんから『攻撃が当たっているけど、お前ももらっていて危ないからタックル入ってみろ。簡単にテイクダウン取れるだろ』と言われたんです。ただ最初に話したように相手は僕の組みをかなり対策している感じがあって、向かい合っているとテイクダウンに入りづらい感覚だったんです。それを伝えたら『だったら蹴りが当たるから蹴っていこう』という指示でした。それで2Rは意識して蹴りを使って、蹴りの距離を保ったとこから踏み込んでパンチを打ちにいこうと思って戦いました」

――1Rから雅選手のペースに見えていましたが、窪田選手もしっかり対策を練ってきていたんですね。

「本人に聞いてみないと分かりませんが、僕はそう感じました。タックルに入りにくかったのも、今回窪田選手はすごく立ち位置がよかったんです。おそらく僕が福田(龍彌)選手に左ストレートで倒されているのを見て、窪田選手も左ストレートを当てやすいところに位置取りしていたんですよ。それもあって組みにくい感覚だったんだと思います。ただ僕も前回の対戦から武器を増やしてきましたし、相手がそう来るなら自分はこう戦うよということが出たのかなと思います」

RIZINで強い選手と戦いたいし、DEEPに来る選手とやってやってもいい

――そしてフィニッシュまでの流れですが、最初に雅選手がヒザ蹴りからの右フックでダウンを取ったあと、追撃のサッカーボールキックがヒザ蹴りと判断されて試合が一時中断となりました。あの場面を振り返ってもらえますか。

「まずあのダウンに関してはヒザ蹴りですね。相手が僕の右フックを警戒していたんで、右フックのフェイントを入れて首をロックしてヒザ蹴りを入れたら、それが奇麗に顎に当たってよろけたのが分かりました。右フックで倒れた感じでしたが、その前のヒザ蹴りがかなり効いていたと思います。そのあとのサッカーボールキックは膝から下が当たっていて、その感触がモロに残っていたんです。だからブレイクになった瞬間から『サッカーボールキックですよ。映像でチェックしてください』とビジョンを指差してアピールしていました。最終的にレフェリングのミスを認めてもらったんですけど、メンタル的にはめちゃくちゃ落ちましたね(苦笑)。本来ならあのままKO勝ちだったんで」

――ストップ前と同じ態勢からの再開ではなく、ブレイク→スタンドでの再開となりましたが、あの時は率直にどう思いましたか。

「思わず『マジ?ええーー!!!』と言っちゃいました(苦笑)。ただ石渡さんから『お前が決める事じゃないから切り替えろ!』、八隅さんから『何も悪くないよ。気にしない!』と、セコンドからの声があって。あの攻撃がサッカーボールキックかどうか、このあとの裁定がどうなるかは自分が考えることじゃないし、相手を仕留めることだけに集中しようと、完全に切り替えることが出来ました。それで相手のことを集中して観察したら、ケージによりかかって、すぐ立てていなかったんですよ。だから試合再開になって、あと何回かパンチを当てれば絶対に倒せると思いました。本来だったらあそこで終わらせられていたので、ショックはショックでしたけど、相手の様子を見て気持ちを切り替えることはできました」

――再開後は冷静に戦うことが出来ましたか。

「はい。2Rになって完全に距離感を修正できていたので、まず1回ジャブを当てて距離を測ってから、右ストレート、左フック、右ストレートで倒したって感じですね」

――福田戦でのKO負けとノーコンテストに終わった谷岡祐樹戦以降、2連続KO勝ちという結果になりました。試合前のインタビューでは「練習以外の20時間、22時間の使い方で差が出る。そこにこだわるようになった」とコンディション面について話していましたが、練習面ではどんなことを意識して取り組んできたのですか。

「自分は練習をやり込んじゃうところがあって、ファイトキャンプに入ると疲れて動けなくなってから寝たい、みたいなタイプだったんです。そこまでしないとやり残している感じがあるというか。でもファイトキャンプを8週間として、最終日=試合当日にピークを持っていくことを考えたら、1日1日を切り詰めてやるより、最終日に最高のパフォーマンスを出すために1週間のスケジュールを考えて、そこから1日のスケジュールを考えて…という感じで、バランスを意識するようになったんです。あとは自分の体にちょっと素直になったというか。体が出すサインに耳を傾けて、疲れているんだったら休みを入れたり、練習内容を変えたり…そういうことをやるようになりました。一つ一つの練習でしっかり動けるようにするためには何が必要か。それを考えたら自然と1日単位、1時間単位で自分の生活を管理するようになって、それですごく動きが良くなった感じです」

――ここからはどんな目標を持って戦っていこうと思っていますか。

「とにかくDEEPのベルトが欲しいです。ただチャンピオンは福田選手で、自分は一度負けている立場ですし、福田選手もRIZINのタイトルマッチで忙しいと思うので、自分にはすぐチャンスが回ってこないと思っています。それでも次の挑戦者は自分だという自負があるし、DEEPのバンタム級の選手とは一通りやっているので、福田選手に挑戦するまでの間はRIZINに出て強い相手とやりたい気持ちもありますね」

――DEEPの場合はRIZINの選手がDEEPに出ることもあるので、雅選手がそういった相手と戦う姿も見たいです。

「窪田戦後のマイクでも言いましたけど、正直牛久(絢太郎)選手のようにDEEPに戻ってきていきなりタイトルに挑戦するのはどうなの?と思います。僕は挑戦者の列の一番前にいるから、DEEPのベルトに挑みたかったら後ろに並べよと。それこそ選手にもよりますけど、RIZINからDEEPに来る選手がいるんだったら、自分がやってやってもいいかなと思います。とにかくDEEPのベルトを獲るために戦っていきたいです」

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