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【RIZIN LANDMARK11】元王者ケラモフと激突。木村柊也「相手の構えを見れば、だいたい分かる」

【写真】まさかのRIZIN2戦目でケラモフと。しかし木村は動じていない(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(土)に札幌市南区の真駒内セキスイハイムアイスアリーナでRIZIN LANDMARK11 in Sapporoが開催され、木村柊也がヴガール・ケラモフと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

「日本拳法史上最強の選手」と評される木村は、2023年12月にプロMMAデビュー。以来、4戦4KO勝ち――グラジエイターで韓国Angel’s FC王者も仕留めて今年3月、RIZIN初参戦に至った。その舞台でもNexus王者の横山武司をマットに沈め、ここまで平均試合タイムが61.2秒と、驚異的な戦績を誇る。

そんな木村にRIZIN2戦目のオファーは、なんと元RIZIN王者のケラモフとの一戦だった。ここで勝てば、いきなり現王者ラジャブアリ・シェイドゥラエフへの挑戦も夢ではない。強豪ケラモフを相手に、これまでと同様のKO勝ちを見せることができるか。木村にこれまでの1R KO勝ちと日本拳法の関連性を訊いた。


日本拳法は3分1Rの間に2本取らなきゃいけない

――ケラモフ戦に関するお話の前に……先日、日本拳法出身の角野晃平選手がDEEPウェルター級王者となっています。試合前の取材で、日本拳法洪游會本部道場に行かせてもらいました。

「おぉーっ! そうなんですね。角野選手、学生の頃から強かったですよ」

――その洪游會で日本拳法の練習を拝見しました。まず突きはボクシングのストレートのように、腰と肩を入れて真っ直ぐ打ち抜く。

「はい、基本的には真っ直ぐの練習しかしていないですね。日本拳法の基本がストレートで、自分もMMAを始めてからパンチの打ち方は特に変えていません。打ち方を変えると、たぶん当たらないと思うので」

――そう考えると日本拳法からMMAに転向した頃、やりやすい面はありましたか。

「いや、やりにくかったですよ。ルールが違うので。ただ、距離感はそこまで変わらないですね」

――洪游會の練習でも、フライ級の中村優作選手がウェルター級の角野選手を、スピードとステップで翻弄する場面もありました。やはり日本拳法出身者としては、その距離感とステップ、スピードが一番の強みになるのでしょうか。

「そうですね。その出入りは、他の競技ではあまり見られないと思います。自分の場合、MMAを始めてから練習したのは、まずテイクダウンへの対処でした」

――それは相手に触らせないための練習ですか。

「触られないための練習ではなく、触られてからの練習が多いと思います。試合が決まったらスパーリングでも触られないようにはしますけど、試合がない時期は基本的に組んでからスタートすることのほうが多いですね。

触らせずに倒すーーこれほど分かりやすい試合はない(C)RIZIN FF

今までやってきた競技の中で、距離感は身についています。だから相手に触らせないのは、結構簡単かもしれないです。やろうと思えば誰でもできることで。ただ、触らせずに自分が当てることは誰にでもできるわけじゃなくて。そこも感覚的な部分はありますけど」

――その感覚は実際に相手と向かい合ってみなければ分からない部分も多いと思います。では試合が始まってから、どの段階で自分の打撃を当てる距離感を掴めるのでしょうか。

「向き合って、相手の構えを見ればだいたい分かりますね。構えを見ると、だいたい相手の癖や好き、特徴とかも分かるんです。

前回の試合も最初にグローブタッチした時、『こんな感じかなぁ。この距離にいれば大丈夫かな』というイメージは掴んでいました。次は、どうやって安全な距離から崩していくかと考えて」

――相手の癖や隙、特徴をイメージし、安全な距離が分かった。その次に考えることは?

「自分の打撃を当てるためには、どうすれば良いのか。どう一発を当てるのかを考えます」

――横山戦の試合タイムは1R56秒。つまり始まって相手のことを確認してから仕留めるまでに、50秒も掛かっていない計算になります。角野選手の取材時、スパーリングではスピードと距離感、そして一撃で倒すことを意識するのが日本拳法の練習だと言っていました。

「自分もその動きが染みついていますよね。日本拳法って、3分1Rの間に2本取らなきゃいけないので」

――なるほど! 3分の間に2本ということは、単純計算で1本取るためには1分30秒しか時間を掛けることができない。相手に一本取られていたら、1本に1分の割合になります。

「だから3分の間に2本獲るスタイルが染みついていますよね。最初の1分で相手を見ながら一本取りに行く。それが今の試合内容に繋がっているとは思います」

――そうなると相手の動きを見ながら、じっくり照準を定めていく時間もありません。木村選手の場合は、どの段階で照準が定まるのですか。

「今までの試合は自分が『ここだ!』と思った瞬間、倒しに行っていました。だから倒す直前、ということになりますね。自分の場合、エサを撒いて相手が入ってくるのを待つという感じじゃなくて。エサは撒きます。でも、そのエサで騙して自分から入っていく。『今だ!』と思った時に踏み込む。そのパンチが当たっている、という感じだと思いますね」

当たったらヤバいパンチ力を持っているけど、テクニックとしては全然――

――たとえば横山戦の場合、試合前から『こう倒す』とイメージしていたのでしょうか。

「倒すならあの形かな、というイメージは持っていました。それと、やっぱり1Rで倒したいという気持ちはありましたね。でも『1分以内で倒そう』とは考えていなかったです」

――プロデビュー以降の平均試合タイムは61.2秒。ケラモフ戦発表の会見では「1ミリも負ける気がしない」と言っていましたが、ケラモフも1分で倒せますか。

「アハハハ、どうですかね。それはケラモフの出方次第じゃないですか。突っ込んできたら、パンチを合わせます。どちらかといえば自分は距離感を考えながら、その場面その場面に合わせていくほうなので」

――BRAVEには多くの打撃系競技出身ファイターが集まっています。たとえば野村駿太選手と南友之輔選手はいわゆる伝統派空手出身ですが、「空手かよ。俺は日本拳法だぞ」といたようなライバル心はありませんか。

「アハハハ、それはないです(笑)。その中で自分の打撃が一番だと思ったこともないですね。みんな打撃のスタイルが違っていて、すごく勉強になります。たぶんBRAVEの選手は皆、そういうことは考えたことがないと思います。もし考えるとしたら、試合の魅せ方じゃないですか」

――試合の魅せ方、とは?

「豪快なKOか、それともTKOか――という部分でライバル心はあります。自分は早く倒して、早く帰りたいですね(笑)」

――アハハハ。そんななかRIZIN2試合目でケラモフ戦というオファーに驚きはなかったですか。ケラモフは元王者で、現在も間違いなくRIZINフェザー級トップ3にいる選手です。

「自分はRIZINでも段階を踏んでいきたいと伝えていて、ケラモフ選手のようなクラスと対戦するまで、まだ2~3戦は段階を踏むのかなと考えていました。最初にオファーを聞いた時も『自分しか相手いないのかな? 他にいるだろう』と思って(苦笑)。

自分は前回の試合で、ようやくRIZINフェザー級の入り口を通ることができただけですからね。でもケラモフ選手は相手に断られることが多いという噂も聞くし、そこで自分にオファーが来たのは『RIZINから評価されているのかな』と思って、単純に嬉しかったです」

――ケラモフは昨年大晦日、ライト級王者のサトシ選手に敗れています。しかしその1カ月前にはフェザー級で、摩嶋一整選手を右の一撃で沈めました

打つか、組むか。ケラモフの出方も気になる。まさにファーストコンタクトから注目だ(C)RIZIN FF

「あの試合を視て、単純に『強いな』って思いました。やっぱり力が凄いですよね。朝倉未来選手も堀江圭功選手も、ケラモフ選手と対戦したあとに『とにかく力がヤバかった』と言っていて。力というのは注意するというか、やってみないと分からない部分だし、自分としてはまず触らせないのが一番です」

――摩嶋選手を倒した打撃力については?

「打撃力については、そこまで高いとは思っていないです。もちろん当たったらヤバいパンチ力を持っているけど、テクニックとしては全然――なのかな、って」

――あのリーチの長さも大きな武器だとは思います。

「日本拳法は無差別なので、自分はケラモフ選手よりもデカい相手と対戦したことがあります。そう考えると、体格については怖くないです。

次の試合も、自分の中ではこれまでの5戦と気持ちは変わりません。ただ、今回は相手が元チャンピオンで、自分が狙っていた選手でもあります。今までケラモフ選手をパンチで倒した選手はいないし、その点は自分のモチベーションになっています。あとはしっかりとコンディションを整えて、ケージの中でやるだけですね」


■視聴方法(予定)
6月14日(土)
午後2時~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE

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