【Gladiator031】パク・ソンジュンとバンタム級王座決定戦、南友之輔「Road to UFCがゴールじゃない」
【写真】11カ月ぶりの実戦復帰。真価が問われる一戦で、どれだけの進化を見せることができるか(C)MMAPLANET
8日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGladiator031のメインで南友之輔が、パク・ソンジュンとGladiatorバンタム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima
今年の1月に吉田開威と暫定バンタム級王座決定戦を戦う予定だった南だが、ヒザの負傷で欠場に。結果、11カ月振りの実戦復帰で正規王座が掛かった戦いを迎える。
昨年7月のテムーレン・アルギルマーで衝撃的な逆転KO勝ちを収めたものの頬骨を骨折。さらに上記のようにヒザを負傷したことでブランクを経験した南だが、その期間でより成長できたと言い切った。
あくまでも目標はUFCの頂点で、Road to UFCではない。空手の世界で日本一を目指し続けてきたベテラン競技者は、その競技者としての路が鮮明にビジョンとして見えている。
UFCで活躍してチャンピオンになりたいっていう目標を持っているので、もう1年力をつける方が重要
──パク・ソンジュンと戦うGladiatorバンタム級王座決定戦まで約1週間(※取材は5月30日に行われた)。今年1月の暫定王座決定戦をヒザの内側側副靭帯の負傷で欠場しました。ヒザの具合は、現状はどのような感じなのでしょうか。
「12月にケガをして……完全に断絶したわけでなくて、それでも半分ぐらい切れたんですかね。手術はせずに、1カ月半後にサポーターとかいらなくなるぐらいまで回復はしました。でも、思い切り動けるようになったのは3月になってからですね」
──負傷前と動きが変わったということは?
「それはないです。組み技の時に少し気にするとか、足関節を掛けられると早めにタップするようにしているぐらいで。動いているなかで違和感があるとかは、もうないです」
──この間、ジムの皆がRIZIN、Road to UFCや各プロモーションで活躍しているのを傍で眺めていて焦りはなかったですか。
「それは全然ないです。ジムの皆がどうだからっていうのは、全然。(木村)柊也の倒し方は凄いなぁとは思いましたけど」
──では1月にGladiatorバンタム級暫定王座決定戦で戦う予定だった吉田開威選手のRoad to UFCフライ級T出場と1回戦負けについては、どのように眺めていましたか。
「予想通りでした」
──……。
「だって僕と戦っていたら、出られていないじゃないですか。シンバートル(バットエルデネ)の体重オーバーで一本負けしてもノーコンテストで結果、無敗だから出られただけで」
──あの試合の正式結果は変則暫定王座決定戦で、一本負けですね。ノーコンテストではなくて。
「へぇ、そうだったんですか。ノーコンテストだから出られたんやと思っていました。まぁ日本人として、枠が勿体ないなぁとは思いますけどね」
──……。南選手としては1月の暫定王座決定戦にケガをすることなく出場してベルトを巻いていたら、Road to UFCに出場するつもりでいたのですか。
「今年はRoad to UFCは考えていなかったです。あの時は竹中(大地)選手が返上するって知らなかったので、暫定を取って竹中選手と戦いたいと思っていました。やっぱり『そこ、越えやんと』っていうのがあったんで。竹中選手に勝って、自分の力を証明したかったです」
──Road to UFCを考えておらず、リスクの高い竹中選手との対戦を希望していたとは意外です。
「今年は、ですよ。Road to UFCがゴールじゃない。正直、あのバンタム級のメンバーを見たら、今年でも僕は優勝する可能性はあると思います。ただ、Road to UFCで勝つことが目標じゃないんで。UFCと契約することがゴールじゃない。そこじゃないわけじゃないですか。UFCで活躍してチャンピオンになりたいっていう目標を持っているので、もう1年力をつける方が重要です」
──そういう考えを持つ南選手からして、1人しか初戦を突破できなかった現状に危機感を持たないですか。
「う~ん、それって日本が弱いって見られるっていうことですよね。それは関係なくないですか? 自分がどうあるべきか、それが大切であって。僕はそう思います」
まぁ自信しかないですよ。てか、勝って当たり前かなって
──なるほどです。そして1月は暫定王座決定戦だったのが、今回は正規王座を賭けて戦うことになりました。
「全てが自分にとっては、好都合ですよね。僕はタイトル戦ができれば、相手は誰でも良かったです。まぁ、それでもシンバートルですよね、普通は。シンバートルが相手なら、よけいに気合も入りますからね。未知数な部分もあるけど、強いのは絶対で。だからシンバートルに照準を合わせて、練習をしていました」
──しかし、シンバートルは母国モンゴルのMGL-1FCで戦う予定で、このタイミングでは来日は無理だと。
「ハイ、1カ月前ぐらいですかね……それを聞いたのは。そこから相手が全然決まらなくて。試合まで3週間を切るかっていう時に、パク・ソンジュンが相手だと知らされました」
──Black Combatの2位、どのような印象を持っていますか。
「サウスポーでスラっとした……打撃の人ですかね」
──ベルト獲得への自信のほどは?
「自信って……まぁ自信しかないですよ。てか、勝って当たり前かなって。いや勝って当たり前というか、いつも通り戦おうってぐらいですね」
──正直、何も起こらず一発で勝つ。それも本当に凄いことかと思うのですが、昨年7月のテムーレン・アルギルマー戦はあのピンチがあっての逆転勝ちで、より期待度が高まりました。あのまま順調にいけば1年後はどうなっているのかと。勝利の代償に加え12月にもヒザのケガがあり、不安要素が生まれたのも事実です。
「あぁ多分、ケガをしたことで僕はより成長できたと思います。テムーレン戦で頬骨が折れて、復帰したからヒザをケガした。普通は成長度合いが鈍るって思われますよね。でも、ケガがあって体を使えないから、頭をよく使いました。ケガをしても……ケガをしたからこそ、どこをどうすれば良いかをめっちゃ考えて。
テムーレン戦を乗り越えた部分、そのメンタル面がまず大きいです。どういう風な考えで挑むのか。試合に向けての考え方もそうですけど、今までの経験を振り返ることも含めて精神的に充実した時間を過ごせましたね」
──今までの経験を振り返ることで、どのような良い影響があったのですか。
「僕、小学5年生の時に空手で日本一になって。大学を卒業するまで10年以上、日本一になることだけ考えて試行錯誤を繰り返しながら競技を続けてきたんです。そういうところは、他の人よりも長けていると思っています。
今の日本のMMA界で、日本一をずっと目指してきた人間ってどれだけおるんやって思うんです。空手時代から日本一以外は、日本2位でも負け。そういう状況で戦い続けてきた人が何人いるのかって考えた時、そこで戦ってきた俺の方が圧倒的にアドバンテージがあるなって思えました。
MMAではまだ5戦やけど、修羅場をくぐった数はベテランのMMA選手と肩を並べることができる。それぐらい経験してきているんで。そこも空手の時は空手の時、MMAはMMAって別に考えてきたのが、今回ケガをしている時に良い意味で混ざって考えることができたんです。
あぁ、あとUFCファイターになるのとは違うMMAファイター人生もあるなって、考えたんですよ」
──えっ、それは?
「そこそこの相手とやって、キレイなレコードでいて。ファイトマネーを稼ぐ。あとは注目されるために戦うというか、そういうMMAファイターが存在するんやなって、初めて考えることができて。ただお金を稼ぎたいんやったら、別にどんな相手でも弱いヤツと戦っている方が勝てるやんとか。
強いヤツと戦うって戦績面だけでなく、体にもリスクで。弱いヤツとやってもケガはするかもしれんけど、リスクは下がるので」
──つまりそういう選択をすることもあったと?
「いや、それはないですよ(笑)。ただ、これまでは何も考えずに『UFCのチャンピオンになりたい』って言っていたのが、そういう道があることも理解したうえで『UFCのチャンピンになる』しか選択がなかった。これまでは一択でそう思ってきたのが、他に選択肢があるなかでそれしかないって。だから、その気持ちもより強くなっています」
ボクシングでもなく、空手でもない。ただ打撃
──う~ん、今の話もうそうですが、精神的な部分をしっかりと考える選手が増えてきたように感じます。
「気持ちは大切ですよ。やっぱり技とか動きって、外側で。中がないと。個人の対人競技って、特にそうやと思います。僕のイメージでは団体競技って戦術の方が大事で、個人の対人競技はメンタルが8割ぐらい占めている。
それに精神状態が良いと、凄くクリエイティブに色々なことも考えることができて。自信がありつつ、謙虚になれる。そういうバランスが取れるようになりました。きっと去年の7月の僕と今の僕、比較できないぐらい強くなっていますよ」
──その精神面での充実が技術面でも生きる?
「去年の7月から一番伸びたのは、ボクシングですかね。足をケガした後ってステップを使えなくなって。どうすればステップを踏まずにパンチを当てることができるのか。強いパンチを打てるのか。相手の攻撃を避けることができるのか。そこを考えるようになったことが、本当に大きいですね」
──つまりは、そこも『考える』がキーワードで。
「さっき言った空手とMMAを別々にしないで、一緒に考えるようになったのも大きいです。ボクシングでもなく、空手でもない。ただ打撃なだけで。遠いところも近い距離でも戦えるし、苦手とかない。打撃といわれる部分は、全部がレベルアップしています。結果、他の誰にも負けないという自信があります」
強いヤツと戦いとかないですよ(笑)。ただ戦わなアカンだけで
──試合を見て、ビックリするようなことが起こりそうです。
「ビックリすること……それは分からないですけど、左手の使い方が上手くなりましたね。そうすると体全体の動きが良くなって、右もさらにバリエーションが増えました。宮田(和幸)先生の紹介でパワーオブドリームで練習するようになって、僕のなかでエッセンスが一つ加わりました。ボクシングやキックボクシングを見る解像度が上がったんです」
──つまりは理解度が上がっていると?
「そうです。こういう風に体を使って、こう打つんだとか。これまでは見様見真似で落とし込むことで理解はしていましたが、それがより鮮明になったんです。よりクリアに見えて、色々な発想が生まれることで動きも色々とできるようになりました」
──いやぁ、11カ月振りの実戦が楽しみでしょうがなくなります。先ほど『勝って当たり前』という発言もありましたが、つまりは勝った後のことも考えているのかと。
「ここでチャンピオンになって、来年のRoad to UFCに出たいので……もう1人、2人、強い外国人と戦っておきたいです。何も外国人でなくても構わなくて、強いヤツと試合をしておきたい。そうでないと、今回のRoad to UFCに出ていた人の二の舞になるので。
だからそれがシンバートルになるのか。そういえばRoad to UFCのフライ級で山内(渉)選手に勝ったモンゴル人(ナムスライ・バットバヤル)も強かったですよね。やっぱりモンゴル人は、強いですよね。だからこそシンバートルを越える必要があって」
──とにかく強い選手と戦いたい?
「いや、強いヤツと戦いとかないですよ(笑)。ただ戦わなアカンだけで。やらなアカン。やらんと意味なくないですか? 上に行くなら。だから、こないだ(熊崎)夏暉と戦ったヤツ(ジョン・オルニド)でもエェですよ。そういう、強い相手と戦わんとアカンと思っています」
──では、王座決定戦ではどのようなファイトを自らに課していますか。
「暫定が正規王座決定戦になり、Road to UFCでアジア勢に皆が負けている時にレコードが良い韓国人選手と戦う。流れが滅茶苦茶エェんで。
実はちゃんと打撃ができる相手と戦うのが、初めてで。それやからこそ僕の進化を見てもらうことができる。そういう意味でも僕自身が、楽しみな相手です。そういう選手と戦った時、僕はどうなるのか。期待してください」
■視聴方法(予定)
6月8日(日)
午後4時00分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■GLADIATOR031対戦カード
<Gladiatorバンタム級王座決定戦/5分3R>
南友之輔(日本)
パク・ソンジュン(韓国)
<Gladiatorフライ級挑戦者決定戦/5分3R>
久保健太(日本)
今井健斗(日本)
<バンタム級/5分3R>
宮川日向(日本)
ルキヤ(日本)
<ライト級/5分3R>
小森真誉(日本)
望月貴史(日本)
<ヘビー級/5分3R>
大番高明(日本)
アルブリー・ンジャイ(カメルーン)
<Progressウェルター級/5分2R>
田中有(日本)
徳野”一心”和馬(日本)
<Progressウェルター級/5分2R>
石田拓穂(日本)
岸田海輝(日本)
<キック70キロ契約/3分3R>
荒尾裕太(日本)
イ・スンウク(韓国)
<フェザー級/5分2R>
國頭武(日本)
ヤン・ジファン(韓国)
<バンタム級/5分2R>
野口蒼太(日本)
小林佳純(日本)
<ウェルター級/5分2R>
後藤丈季(日本)
大道翔貴(日本)
<バンタム級/5分2R>
しゅんすけ(日本)
原田康平(日本)
<ストロー級/5分2R>
塩川玲斗(日本)
諸井裕祐(日本)
<フライ級/5分2R>
岩崎圭吾(日本)
千葉琉偉(日本)
<フライ級/5分2R>
藤原浩太(日本)
蒔田伸吾(日本)
<ライト級/5分2R>
LUCKYBOY慶輔(日本)
友實達也(日本)
<フライ級/5分2R>
澤田政輝(日本)
福島祐貴(日本)
<フェザー級/5分2R>
コウ(日本)
山下魁(日本)
<ライト級/5分2R>
拳椰(日本)
フラビオ・ディオゴ(ブラジル)