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【DEEP125】佐藤洋一郎に挑戦、日本拳法出身の角野晃平「ゾンビ系でも僕のパンチが当たれば倒れる」

【写真】髪の結び方がちょっとカワイイ、挑戦者の角野(C)SHOJIRO KAMEIKE

5日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP125で、佐藤洋一郎が持つDEEPウェルター級王座に角野晃平が挑む。
Text by Shojiro Kameike

昨年12月の東西若手対決=阿部光太戦で見せたKO劇は、角野のベルト挑戦をアピールするでは絶好の内容であった。プロ戦績は5勝1敗で、現在は4連勝中。MMAを戦う今でも、日本拳法洪游會本部道場での練習は欠かしていないという角野に、日本拳法時代のエピソードと連勝の秘訣を訊いた。


木村柊也君とは対戦したかったです

――今日は大阪市阿倍野区にある日本拳法洪游會本部道場で、MMAではなく日本拳法の練習を見させてもらいました。関西では、こうした日本拳法の町道場は多いのでしょうか。

文化遺産レベルの洪游會本部道場で、まずはミット打ちからスタート

「決して多くはないと思います。日本拳法は特に大学の部活が多いですね。近畿だと関西大学と龍谷大学とか――創始者(※開祖の澤山宗海)が関西大学の方でした。関東では木村柊也君が明治大学、芳賀ビラル海さんは中央大学で」

――木村選手とビラル選手は大学時代、日本拳法で対戦経験がありますよね。

「そうなんですよね。僕もビラルさんとは一度試合したことがあるけど、木村君とは対戦経験がなくて。自分が一度、明治大学へ行った時におったんで、一緒に練習させてもらったことがあるぐらいです」

――ビラル選手との対戦結果は……。

「僕が大学の2回生、ビラルさんが3回生の時で。その時は、まぁ……勝ったんですけど」

――それは選手としての実績なのですから、小声にならず堂々と言いましょう(笑)。

「アハハハ。まぁ、そうなんですよ」

――角野選手は大阪体育大学に在学中、洪游會所属としても日本拳法の大会に出場していました。大学時代の実績を教えてください。

「大学3回生の時に、大学選手権で優勝しています。次の年に木村君が大学選手権に出場しているんですよ。僕が4回生の時に、木村君が1回生で。その大会で僕は2連覇を賭けて木村君と対戦するのかと思っていました。でも僕が足を負傷して手術することになり、大会に出場することができなかったんです。結局そのまま木村君とは対戦できずに終わって――メチャクチャ対戦したかったですね」

――なるほど。角野選手が最初に始めた格闘技は日本拳法だったのですか。

「僕が最初に始めたのは空手で、正道会館だったんですよ。始めたキッカケは道着無料キャンペーンで……(苦笑)。小学2年から中学3年まで空手をやっていました。フルコンタクト空手は学校の部活にないじゃないですか。でも拳法やったら高校の推薦があると言われて、進学した高校で日本拳法を始めました」

――えっ、空手をやっていたのに日本拳法の推薦を獲得したということですか。

「はい、そうです(笑)。これも不思議な話なんですよ。実は僕、中学時代には柔道も3年間やっていて。柔道部の練習が終わってから空手道場に行く、という毎日を送っていました。

最初は柔道部の先生から言われて、高校へ柔道部の体験に行ったんです。そうしたら柔道場の隣にあった体育館で日本拳法部が練習していて。『あの競技、面白そうやなぁ』と思って日本拳法部の先生に話をしたら、『推薦出すからウチの部においでや』と言ってくれたので、柔道ではなく日本拳法部へ進むことになりました」

――日本拳法を選んだ理由として、やはり打撃のある競技という点は大きかったですか。

この日はMMAではなく完全に日本拳法の稽古。距離感と一撃で倒す打撃を養うとのこと

「柔道が嫌だったわけじゃなくて、やっぱり昔から打撃競技をやっていましたからね。特に日本拳法部は中学まで武道をやったことがない人も多かったんです。だから僕は最初からできていたほうで、『これはやれるぞ』と思って」

――では洪游會本部道場には、いつ頃から通い始めたのでしょうか。

「ここは20歳の時からですね。洪游會が主催するジャパンオープンという大会がありまして、それは自分たちでチームを組んで出場することができる大会なんです。そのジャパンオープンに『洪游會として出えへんか?』と声をかけてくださり、初めて洪游會本部で練習させていただきました。

ここは拳法で一番強い人たちが集まって練習している場所です。中村優作さんも洪游會の出身ですし。『洪游會で練習させてもらったら絶対に強くなれる!』と思って、来させてもらうようになってから洪游會の所属になりました」

――結果、MMAでは中村選手が代表を務めるTEAM FAUST所属になったのですね。

「優作さんがRIZINに出始めた頃です。僕もプロの世界に憧れがあったので『優作さん、かっこえぇなぁ』と思っていました。自分もプロになりたいとは思っていたけど、仕事もしていかないといけない。最初はプロを断念というか、大学を卒業してから就職して、拳法を続けていたんです。

でもやっぱりプロで試合をしたいという熱が抑えきれんようになってきて。ちょうどその時に優作さんがTEAM FAUSTを立ち上げると聞いて、僕も連絡したんですよ。そうしたら優作さんも『おいで、おいで!』と言ってくれて」

プロ2戦目の敗戦が僕を刺激してくれました

――ファイターとしては憧れの中村選手ですが、あのトークついてはどのように感じていますか。

「あれは優作さんの持ち味です(笑)。優作さんのように前に出て喋るのは、僕たちにはできないことで。だけど段々と僕も、試合後のインタビューが優作さんに似てきているみたいで……」

――昨年3月の鈴木琢仁戦ではKO勝ちで大興奮しながら『マイクください!』とアピールするにも関わらず、マイクを持たせてもらえなかった姿は印象的でした。

鈴木戦ではトップからのヒジ連打でTKO勝ち。試合後にバキバキの目でマイクを求めるが叶わず、ラウンドガールも苦笑い

「アハハハ! あの試合は下馬評で『鈴木は勝つやろ』と言われていた試合でした。自分としては『負けるはずないやろ』とメラメラ燃え上がっていたんです。そんな試合でKO勝ちしたので、自分もテンションが上がりすぎていました。そこに優作さんから『マイク! マイク!!』と言われて、僕も『良いんですか!?』と思っていたら――」

――良くはなかった、と(笑)。

「はい(苦笑)。でも次の試合から、DEEP大阪大会では僕が勝ったらマイクで喋らせてくれるようになりました」

――鈴木戦の次に中門虎鉄選手を判定で下し、さらに東西対決シリーズで阿部光太選手をKOするなど、2024年はまさに快進撃というべき結果を残しました。

「僕、アマチュアは2戦ぐらいしか経験していなくて、MMAのことがよく分からないままプロデビューしたんですよ。初戦は勝ちましたけど、2戦目は山田聖真という今JTTに入っている方にスプリットで負けています。その時、自分の中で何がアカンかったんやと見直してみました。あの敗戦が僕を刺激してくれたんです。次の試合で小林裕さんを一撃でKOして『自分にはこういう力があるんや』と感じて、次の試合では鈴木さんにKO勝ちすることができました」

――おそらくアマチュアからデビュー戦は空手や日本拳法の貯金で勝つことができていたのでしょう。2戦目の敗北で、MMAのために何をやらないといけないと思いましたか。

「やっぱり寝技と壁の攻防ですね。あと拳法やったら突きと蹴り、それと組みが分かれていて。優作さんはそこを巧く繋げてはるんですよ。だから優作さんの指導を受けて、しっかりと拳法とMMAを繋げることができるように」

――鈴木選手をKOしたあたりから、ベルト挑戦まで辿り着ける手応えがありましたか。

TEAM FAUSTの面々。角野と同じく空手出身の延命そらは、4月6日のDEEP大阪大会で三村亘をKOし、現在5連勝中だ。中村優作は「10連勝したらインタビューお願いします!」とアピールしてきたが、それだと再来年に……

「はい。すぐは無理だとしても、絶対に獲りに行くと思いました。DEEPさんにも『ベルトに近い選手と対戦させてほしい』と伝えていたら、阿部戦の話が来たんです。4戦4KOの選手と東西の若手対決――『ここで勝ったら大きいぞ』と、優作さんとも話していました。その試合で勝つことができ、今回のチャンスを頂くことができています」

――ここまでの流れの整理と説明が素晴らしいです。では王者、佐藤洋一郎選手の印象を教えてください。

「ベテランのオールラウンダーですよね。打撃も寝技もできはるし、壁際の攻防も強い。昔の試合と比べても、絶対に今のほうが強いと思います。それと序盤にド突かれても巻き返してくるゾンビ系の力は侮れんというか凄い、怖いですよね。自分としてはまず自分のペースで戦うこと。さすがにゾンビ系でも僕のパンチが当たれば倒れると思うので、いつもどおり戦いたいと思います」

――今回DEEPのベルトを獲った場合、その後のキャリアについては考えていますか。

「DEEPのベルトを巻いて海外で戦ったり、RIZINに出たいという気持ちはあります。でも先のことを考えても仕方ないので、今は目の前に迫った試合に集中しています」

■DEEP125 視聴方法(予定)
5月5日(月・祝)
午後5時50分~ YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、U-NEXT、サムライTV

■DEEP125 対戦カード

<DEEPバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者]福田龍彌(日本)
[挑戦者]牛久絢太郎(日本)

<DEEPフェザー級GP準決勝/5分3R>
海飛(日本)
水野新太(日本)

<DEEPフェザー級GP準決勝/5分3R>
五明宏人(日本)
高橋遼伍(日本)

<DEEPウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]佐藤洋一郎(日本)
[挑戦者]角野晃平(日本)

<フライ級/5分3R>
村元友太郎(日本)
関原翔(日本)

<女子アトム級/5分3R>
大島沙緒里(日本)
イ・イェジ(韓国)

<フェザー級/5分3R>
奥山貴大(日本)
直樹(日本)

<アマチュア フライ級/3分2R>
琥(日本)
小祝歩夢(日本)

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